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悪役令嬢は王子様を愛し過ぎている

クリームヒルト・グンテルは異常である。

倫理観が欠如しているのだ。クリームヒルトの生き方はまさに唯我独尊。全てが彼女を中心として物語は進んでいると疑っていないのである。


「そら、食べよ。美味しそうだろ。私が作ったサンドイッチだ。」


他者をゴミとしか思えない『人格破綻者』である彼女にも嘗ては唯一心を許した相手が存在した。


「美味くないわけがない。食べさせてやろうか。食べさせよう。口を開けろ。」


幼少の頃より繋がりがあり、彼女の婚約者であったクラキ国の王太子フロールフ・クラキである。


「あぁ、可愛いよ。私の舌をサンドイッチの代わりに入れてしまおうか。」


無論、婚約はクリームヒルトの暴走により破談となった。フロールフ王太子本人は気にしていないと笑ってはいたが、王宮はグンテル公爵を大きく非難した事は言うまでもない。


「___________なんだ。今日はもう帰るのか。ならば私も侯爵領へ付いていこう。遠慮はするな。夫婦とは常に一緒にいるものだろう。」


クリームヒルトの束縛は強くなっていく。公爵家と侯爵家の領地はかなり離れた場所に位置する筈なのだが、二人はほぼ毎日共にいた。


「何処にいく?くく、用足しか。良い。私も行こう。片時も離れぬのが夫婦というもの。逃がさんぞ。ジークフリート、お前は私に帰属する。愛せ。私を愛おしいと感じろ。それだけでいい。私がお前に求めるのものはそれだけだ。」


何処に行こうとしてもクリームヒルトは犬のようにジークフリートをついて回った。


「____________先ほどお前が話していたメイドは殺したよ。色目を使いおって。汚らわしい平民だ。ジークフリート.........私以外と話をするな。お前が他者と話をしているだけで私は落胆と憤懣、慚愧を感じる。私を後悔させてくれるな。刻限を待たずにお前を陵辱したくなる。」


男であれ女であれジークフリートと会話や世間話をした者を殺し始めたのだ。グンテル公爵はこれを危惧し、クリームヒルトへと忠告した。


「貴族には絶対に手を出すな。破った場合、ネーデルラント侯爵家との婚約を無効にし、公爵家からお前を勘当する。」


ジークフリートとの縁談の為にグンテル公爵を脅迫した内容が世間に暴露しようともこの禁を破った場合は娘との縁を完全に切ると公爵は断言したのである。クリームヒルトはその圧に推され、渋々と承諾した。


「レディクリームヒルト...........平民を殺すことは良くない。」


だが、クリームヒルトは公爵への当て付けのようにジークフリートと会話をする平民出自のものたちを殺害し続けた。


「私のことを愛しての行動だと、貴方は言ってくれた...........だが、彼らは大切な私たちの領民だ。殺していい理由にはならない。」


ジークフリートはクリームヒルトの頭へと手を置き、優しく子を諭すように説教をする。


(ジークフリートが私を叱ってくれている..........)


頭に置かれたジークフリートの手を嬉しそう頬へと持っていき頬擦りをする。クリームヒルトはジークフリートに夢中であった。


「そうだ。もっと私を叱れ。私は悪い子だ。お前の怒りをぶつけろ。首を絞めるか。それとも臀部をこの手で叩くか。好きに罰を与えろ。お前にはその権利と資格がある。」

「レディクリームヒルト............」


ジークフリートの前では反省をした様子を見せるクリームヒルト。彼女は人を殺した事実については何も感じないのだろう。蟻をたまたま踏み潰してしまった、その程度の認識なのだ。


「..........人としての成長を期待しております。」


このままクリームヒルトと居続ければ、周囲に不幸を撒き散らす事になる。そう考えたジークフリートはクリームヒルトの元から、貴族社会から失踪した。

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