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主人公の野望

「なんでっ!なんでなんでなんでッ!!!」


意味が分からない。怒りのあまり理性が吹き飛びそうになる。


「旅の間は我慢してたのに!そんなのってないよッ!!」


ヴァルハラ学園の生徒として招待された者には良質な個室部屋が与えられ、従者として来たものには二人部屋が与えられる。


「ジークくんもブリュンと一緒がいいよね!今から直談判して二人部屋に変えて貰うから!!」

「.....学園のルールですので」しくしく


従者のような口調でわざとらしくよよよと嘘泣きを見せるジーク。可愛い。だが今はそんな感傷に浸っている場合ではない。


「い、いやだいやだいやだいやだぁ!!一緒じゃないとイヤダァ!!!!」


ヴァルハラ学園の敷地内、それも多くの生徒達が集まる美しい庭園のど真ん中で幼児のように駄々をこねてみる。ジークは何してんだ、こいつ?みたいな冷たい視線を向けてくるが構いやしない。


「そうだ!ブリュンの部屋に来ればいいじゃん!個室だし誰も来ないよ!」

「校則ですのでダメです。」にっこり


物凄くいい笑顔で拒絶された。


『野蛮な......』『なんで平民なんかが学園にいるんだ....』『あれが聖女なんだろ?世も末だな......』『貴族でもないものが七英雄に選ばれるとはな.......』


ひそひそと周りで話し声がする。騒ぎすぎたせいで注目を浴びてしまったらしい。そのせいかジークが自分を落ち着かせる為に宥めてくれている。



「___________困り事かい?」



みっともないことをしてしまったと後悔を感じていると、自分たちの元に綺麗な金色髪を靡かせた美しい青年が近付いて来た。


「そうなの!従者と部屋が別々って聞いてないよ!どうにかする方法ってないかな?」

「この学園の決まりでね、申し訳ないけれど諦めてくれるかい。賢者ウォーデン曰く、勇士たるもの弱音を吐くべからず。他に頼らず、己の信念と覚悟を示せ。人の成長とは個であると校訓にも書かれているからね。」

「う.....それは、そっか、うん、わかったよぉ。」


そんな軽々しい口調で言葉を返すと周囲が再びざわめきを見せる。


『王太子様に対して何て口のききかただッ』『教養がない平民め』『見るに耐えんな』


金髪の青年は周囲を睨み付け、黙らせる。


「挨拶が遅れてしまったね。僕はフロールフ・クラキ。君と同じ七英雄に選ばれた人間の一人だ。」


七英雄の職業に選定された人間の一人。だがそれよりも家名の方に目が行く。


「クラキ.......」


隣にて控えるジークは熟考する様に何やら考え込んでいた。そして何かを思い出したようで、直ぐに顔が真っ青になる。


「っ、し、失礼しました、フロールフ王太子殿下!」

「ジークくん!?」

「膝を着いて頭を下げるんだ、ブリュンヒルデ。この方はクラキ国の次期国王となるお方だ。」ボソッ


ブリュンヒルデはジークの言われた通り、直ぐに膝を曲げ、頭を垂れる。


(バルドル領を含めた広大な領土を治めるクラキ王の長子..........王子だ。)


フロールフの腕に巻かれた青の腕章から、彼が一学年上の先輩で在ることも理解する。


「ご、ごめんなさい......立場を弁えず生意気な態度を「構わない。頭を上げて欲しい。僕はここではただの生徒だ。それに他国の王族や大貴族もこの学園には通っている。畏まる必要はないよ。寧ろ、力が全てであるこの学園では君こそが敬意を払われるべき相手なんだ。」


七英雄とはそれ程までに世界に祝福された職業適正なのである。


「そっかー!おっけー♪」

「お、おい、ブリュンヒルデ!!」


敬意を払わずとも良いと言われたので直ぐに砕けた様子で重苦しい空気を払拭する。ジークは慌てた様子でブリュンヒルデを咎めるが、興味がない相手に何故敬意を払う必要がある。


(フロールフ王太子も言ってた。この学園では力があるものが敬われるって。なら、ブリュンヒルデが最強で在ることをちゃんと学園で示して上げるから安心してよ。)


ジークとブリュンヒルデの間に障害が現れるというなら、そのことごとくを打ち砕いてやる。そして、いずれは学園最強の名を手にして周囲を黙らせて見せる。


「そろそろ行こっかジークくん♪」


二人の空間にこの人はいらない。王子だろうと七英雄の誰で在ろうとね。


「またねーフロールフ王子!」










(___________明日から、カリキュラムが始まる。)


ジークと別れた後、部屋で一人寛ぐブリュンヒルデ。しかし、どうしても落ち着かない。


「大丈夫.........ジークくん成分はここ一週間で大分補給した。」


明日になればまた会える。ならば禁断症状も出ることはないだろう。


「..........ただ不安を言うなら、クラス分けが気に喰わないなぁ。」


「α」「β」「ζ」の三つにクラスは存在する。聖女の職業適正を冠するブリュンヒルデは言わずもがな「α」クラスに決定されていた。だが、付き人としてして連れてきた(強制)筈のジークは「α」ではなく「ζ」クラスに配列されてしまったのだ。


(理由は分かるよ。強い職業適正ほどアルファベットが若いクラスに振り分けられるんだ。ジークくんは職業適正【冒険家】だから「ζ」のクラスになっちゃったけど........あまり気分のいい話じゃない。)


言い方は悪いが、冒険家はあまり珍しくも突飛して強力な職業適正という訳でもない。故に「α」クラスに選ばれなかったのである。


「..........だけど、希望はある。」


クラス対抗戦。学期末に開催される模擬試合。


「それに勝ち上がれば、ジークくんはαへと上がって来れる。」


職業適正がすべてではない。技術、経験、装備、全ての面に置いて実力がなければ一流とはなり得ないのである。

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