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悪役令嬢は王子様を愛している

「_________私の夫に近づくな。」


ジークフリートに近づこうとする貴族の女たちはもれなく公爵家の力を使い振り払ってきた。抵抗する者もいたが権力を翳せば恐れをなし、去っていく。


(私は公爵家令嬢であり、【覇王】に選定された選ばれし人間だ。其処らの有象無象とは違う。)


かつて世界は『九つの世界』に別たれていたと言う。しかし『神々の黄昏』により世界は一度滅びてしまった。そして唯一生き延びたオーディンの息子ヴィーザル、そして雷神トールの息子マグニが最後の力を使い再構築したのが今あるこの世界。


(_________【最後の楽園(ヴァルハラ)】だ。)


私たちが住まう世界の名。だが、悪神ロキは世界が滅びる前にある呪いを残した。


【アングルボザの呪い】


世界に蔓延る化物たちの総称。例を出すなら邪悪竜ファーヴニルや月喰い狼ハティなどの強大な化物が上げられる。そしてそれらに対抗する手段として大神オーディンもまた世界に加護を残して逝った。


【職業適正】


齢が十に達した際、その者に最も適した職業が天より通達される。強力な職業適正であればある程、この世界では優遇される。


「私は大貴族の令嬢であり、次期公爵。そして七英雄に数えられる【覇王】の職業適正を得た選ばれし人間だ。」


出自、職種、そして美しい容姿。世界は私に全てを与えた。だが、一つだけ手にしていないものがある。


「___________ジークフリート、なんで分かってくれない?」


この男の心だ。唯一、私が心の底から欲しいと願うもの。


(私を愛せ.......ただそれだけでいい。お前の婚約者はもう私だろう。あの伯爵家の令嬢ではない。この私、クリームヒルトだ。)


口付けをしようと顔を近づける。だが、人差し指を自分の唇へと当てられ首を横に振るうジークフリート。


「__________駄目です。まだ、婚約者と言う立場ですよ。」


優しく笑うジークフリート。その動作、微笑を向けられ動悸が速くなるのを感じる。


(あぁ........やはりお前は美しいよ。)


この男の全てを支配したい。支配されたい。私だけの色に染まって欲しい。誰にも渡したくはない。


「何故、私の接吻を否定する。お前に近づく女たちは全て排除した。お前との婚約権も正式な手順を踏んで勝ち得たものだ。後は私とお前が愛し合うだけだろう?」


私に触れろ。私に優しい言葉を掛けろ。私という女に対する欲望を抑制する必要はない。お前の全てを受け入れる準備は出来ているのだ。


(___________私にお前を感じさせろ。)


ジークフリートをじっと見ていると優しく手を握られる。顔が赤くなるのを感じる。


「私たちは婚約して間もないのです、レディクリームヒルト。」


手を強く握り返す。


「私たちは十三になったばかりでまだ若い。焦らずゆっくりと親睦を深め仲を深めていきましょう。」


私を引っ張るように立ち上がらせる。そして顔を私に近付け、ジークフリートは言うのだ。


「_________私はもっとあなたについて知りたい。」


狡い男だ。その目で、その声で、その顔で言われたら私は逆らえない。それを知った上で、ジークフリートは私という単純な女を手玉にする。


「..............そうだな。二人の時間はたっぷりとある。私のことをもっと教える。そして知って欲しい。どれ程、お前の事を愛し、恋をしているか。だから、私にもお前のことを教えて欲しい。」


ジークフリートという男の全てを。

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