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主人公は悶える

旅路は本当に最高の思い出と言ってもいい。

一週間と短い間ではあったが、ジークという人間を大いに知ることが出来たのだ。


「むぅ.............むぅ.......」

(もぉ.......開放して.........)


水浴びや排出時以外は聖光を応用した拘束術でジークを縛り、逃げられないようにしている。


「大人しくしていようねぇー、ジークくん。もうすぐウルズの検問所つくから♪」


あのままバルドル領に置いて置く訳にはいかない。銀鉄の鎧で全身を隠してはいるが、ブリュンヒルデを助けた時の様に素顔を見られる可能性も高いのだ。


(そんな事させない。助けたのが女の子だったら、絶対に惚れちゃうもん。)


このままブリュンヒルデの付き人として学園に通わせる。そうすれば、ずっと一緒にいられる。


(他の誰にも渡してなんかやらないんだから。)


ジークは自分の命の恩人。そして運命の王子様であり、聖女ブリュンヒルデと結ばれるべき男であると信じている。


「もうすぐ検問所だから、そっちに入って貰うね!あまり大きく声を出すようなら、聖光の縛りを強くするから.........静かに、ね?」


荷台には人一人が隠れられる隠し収納庫がある。主に貴重品の盗難を防ぐために設けられたものだが、全財産を叩いて買った甲斐があった。


『ヴァルハラ学園の新入生か。招待状は......本物だな。よし、通っていい。勉学に励むように。』


検問を何とか通り、ウルズの都市へと入ることが出来た。後はウルズの泉を越えるだけだ。


「ジークくんの言った通り、綺麗な泉だねー」


ウルズの泉の中央の聳え立つのは世界樹(ユグドラシル)。その真下にはヴァルハラ学園が存在する。今、馬車を走らせているのは泉の外側を囲むように形成されたウルズの都市だ。


「検問のおじさんが言うにはウルズは観光地としても有名なんだって♪」


ジークを隠し収納庫から引っ張りだし、自分の隣へと座らせる。拘束は他者から見えない様に器用に施してある。


「ねぇ、どうやったらあっちに行けるの?」


学園に行くには泉を渡らなければならないのだが、橋も何も見当たらない。荷台や馬を置いて泳いで行くわけにも行かないし、どうすればいいのだろうとジークに尋ねる。勿論、話せるように縄もほどいてあげた。なんて優しいのだろう。


「か、解放してくれたら教える...........」


ブリュンヒルデはジト目でジークを見ながら口角を上げる。


「へぇ......そんなこと言うんだぁ♪教えてくれないならこのままジークくんの貞操を奪ってもい「そのまま進めば世界樹の力で勝手に橋ができる!」


そう。そうやって従順であればいい。ブリュンヒルデが全部全部お世話をして上げるのだから、ブリュンヒルデの言うことを聞いていればいいんだ。


「うん、偉い偉い♡ジークくんは本当に物知りなんだね♪」


ジークの腕へと抱きつく。幸せだ。この一言に尽きる。


「あは♡本当に橋が出たよージークくん♪」


泉へ近付けば、橋は魔力により構成され出現した。どうやら招待状に反応して現れる仕掛けのようだ。



「____________楽しみだねぇ、学園生活!」




世界樹が聳え立つ眼下の元、ヴァルハラ学園が見えてきた。古い建築物ではあるが幾重にも強力なルーン魔術が施され、城塞の様な出で立ちだ。あれを攻め落とすには国の特記戦力である騎士団長並びに副団長クラスの戦士が少なくとも三人以上は必要だろう。


「ブリュンヒルデ...........旅の途中で約束したことは覚えているね。」


学園の門を通り過ぎると、ジークくんが口を開いた。


「もちろん約束は覚えてるよ。」


ヴァルハラ学園で自分の付き人として従者をしてくれる代わりに自室以外では銀鉄鎧を解除しないこと。


(願ったり叶ったりだ。ジークくんの事情もあるんだろうけれど、ブリュンヒルデにとってもそっちの方が都合がいい。)


下手にジークの素顔を公開して、生徒の関心を彼に向けたくない。聖女ブリュンヒルデだけが彼の素顔を知っていればいい。


「そうか.........覚えてるならいい。学園長への挨拶を済ませてしまおう。」


入学のための手続きは済ませた。後は最後に学園長である【賢者】ウォーデンとの挨拶のみだ。早急に終わらせて、宿舎で淫靡な事をしよう。


「__________失礼します。」


学長室の扉を開け中に入室する。そして自分の一歩後ろに控え、従者らしく待機をするジーク。かっこいい。


「ほぉ..........平民生まれと聞いおったが従者がおるのか。国の采配か、それとも七英雄の脛を齧ろうと着いてきたか。」


学園長ウォーデンもまた七英雄に選定された選ばれし職業適正者である。その容姿は片目がなく、長く白い髭につばの広い帽子を被った老人。されど、物凄い圧と質の魔力を感じられる。


「銀狼フェンリルを模した鉄兜......面白いものを装備しておるな。それを何処で見つけた?」


なんという威圧感なのだろう。身動きが出来ない程に身体が硬直してしまう。本能からこの人には"まだ"勝てないと畏怖してしまう。


(くっ.......ジークくんには死んでも指一本触れさせないんだから。)


聖光を展開しようと魔力を高めるが、ジークによりそれを制止される。


「疑っているのですか、ヴァルファズル(戦死者の父)。それともフィムブチュール(偉大で崇高な神)とお呼びしたほうが宜しいでしょうか賢者ウォーデン?」


ジークは冷や汗を流しながらも口角を上げ、試すように学園長へと言葉を紡ぐ。すると学園長は一度驚いた表情を見せると、高笑いを見せた。


「_________________うぉほっほっほ」

そして、落ち着いた様子で親指を上げる。


「合格じゃ。【聖女】の従者に相応しい切れ者よ。そなた達を歓迎しよう。」

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