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主人公は拉致する

「ジークくん..............」


ブリュンヒルデは自宅にて旅立ちの身支度をする。ヴァルハラ学園がある『ウルズの泉』へと明日にでも旅立たねばならないのだ。


(はぁ、行きたくない。だけど、そろそろ学園に向かわないとダメだし........どうしよう、学園に行っている間にジークくんが他の女の子に誑かされたら。)


平常でいられるだろうか。


「..................だめだ、耐えられない。」


命の恩人であり、初恋。ブリュンヒルデの全てを掛けるに値する人。 そんな人が自分以外の女性と関係を持つなんて事があれば自分は狂気に呑まれてしまうことだろう。



「あぁぁああああああ!!考えただけで頭が可笑しくなりそう!!!」



会ってから一週間も経ってはいないけれど愛している。目が離せない程に貴方の事を愛している。


「好き......好きぃ......ジークくんの事が大好き。」


ここ数日間、ジークの宿屋に通いつめた。


(相手にはされなかったけど......冷たいジークくんもしゅき)


挫けないで根気強くアプローチし続けた。結果はご覧の通りではあるが。


「それでも諦めない。最後には絶対にブリュンヒルデと結ばれる運命なんだもん............」


どんな汚い手を使ってでもジークを手に入れて見せる。既成事実さえも厭わない。自分に靡かないというのなら強行手段に出るまでの話だ。


(............その為には『聖女』の力が必要だ。)


彼を力で押さえつけ.............ジークという冒険者の隣に並び立つ為に。


「うんうん、並び立つだけじゃだめ。全ての外敵からジークくんを守るだけの力がないと安心出来ない。」


色目を使う盗人を殺戮するだけの力を得なければジークを独占出来ない。


「.........そっか。そうだったんだ。やっと気づいたよ。なんでブリュンヒルデが聖女に選ばれたのか。ジークくんを守る為なんだ.........それ以外に理由なんてないじゃん。」ぎゅっ


ブリュンヒルデから淡く光る聖光が溢れでる。感情の起伏、または彼を想う気持ちから聖女の基礎能力に覚醒を促したのである。


「これは.............くく、あはは!」


そして拳を握り、厭らしい笑みを悪女のように浮かべる。


「この力.......溢れる.......ブリュンヒルデにも分かる。」


この力こそが聖女の力の一端だ。


(凄い、凄いね.......聖女の力。聖光を通して『聖女』の基礎性能について扱い方を教えてくれる。)


この力があれば、もう先の狼型の呪いに遅れをとることはないだろう。


「夜明けにまた会おうね__________」


そして彼を凌駕出来るだけの力を手にする事が出来た。


「_____________________ジークくん♪」









次の日の早朝、ブリュンヒルデは悠々とした様子で身体を伸ばす。


「今日はいい天気になりそうだね。」


馬車に荷を詰め込み、旅立ちの準備は整った。


「もぉ、そんなに興奮しないでよ。これから少しの間、二人で旅をするんだから......えへへ//」


そして荷物の中には簀巻きにされたジークの姿もあった。


「むーむー!!!」


口も縛られ身動き一つとれない。 そんな様子のジークに困った様子で近付き、子を諭すように声を掛ける。


「暴れちゃ、メだよ!宿屋にあるジークくんの荷物もまとめて置いたから大丈夫。それに宿屋もチェックアウト済ませて置いたし、心置きなく旅立てるね♪」


見送りに来ているブリュンヒルデの両親は同情した眼差しでジークを見る。


「むーむー!!」

(※助けてください!!)


ブリュンヒルデの父親はジークを不純だと思ったのか解放しようと足を踏み出す。


「おとーさぁん?」


だがブリュンヒルデが阻むように父親を睨み付け、威嚇する。それに怯んだブリュンヒルデの父は両手を上げ、参ったのポーズを見せた。


「むーむー!!」

(※諦めないで助けてください!!)


このままではブリュンヒルデと共にヴァルハラ学園に連れて行かれる事になってしまう。


(それだけは勘弁願いたいっ!あの場所にはクリームヒルト嬢のみならず前婚約者であるロズブローク伯爵令嬢も通っているんだ!)


最悪な形で再開をする事になってしまう。


(せっかく兄さんが自分を死んだ事にしてくれたのに、こんな結末があってたまるか!)


助けた少女が恩を仇で返そうとしている。涙目になりつつ、ブリュンヒルデを睨み付ける。


「あは♪本当に聖女様の力さまさまだね♡」

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