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師匠は弟子を愛している

「__________ジークフリート、何処に行くんだい?」

「え、御手洗いですけど.......」


鬼気迫る言い方でジークフリートへと詰め寄るエル・ミア。


「私の視界から消えるなと何度も注意しただろう。冒険者となり、パーティーを組んだ時、最も危険な状況に陥る場合はなんだ?」

「それは.........パーティーメンバーと別行動をして単身でいる場合です。」


エル・ミアはうんうんと頷き、ジークフリートへと問う。


「それを知った上で君はパーティーメンバーである私から離れようとしていたのか...........嘆かわしいな。私の教えを吸収出来ていないと言う証拠だ。」

「し、師匠.......でも一々御手洗いの中までついて来なくてもいいじゃないですか!扉は一つしかありませんし、扉の前で待機していて下されば安全面は確保されたと言ってもいいです!」

「甘いな、馬鹿弟子。もしレイズ系のアングルボサの呪いに襲われたらどうするんだい。扉が閉まっていては直ぐに救援に向かう事は出来ないだろう?」


何処か勝ち誇った表情のエル・ミアに言葉が詰まるジークフリート。


「そ、それは........っ、師匠だって本当は嫌でしょ!俺なんかに自分の、その、あれをしている姿を見せるなんて!」

「私は君を信頼しているんだ。排出姿も風呂場での裸姿も恥じることなど一切ない。寧ろ君になら見て欲しいとまである。」

顎をくいっと上げ、妖艶に微笑むエル・ミアに照れたように視線を下げるジークフリート。そして上目遣いでエル・ミアを見上げるジークフリート。


「か、からかわないで下さい.........」


エル・ミアは即座に流れそうになる鼻血を拭きとり、天を見上げた。


(............可愛すぎかよ。)


絶対にジークフリートを手放してなるものかと再度心に誓う。


「__________________あの、師匠。」


ジークフリートは机に置いてあった手紙を取りに行くと、それをエル・ミアの元まで持って来る。


「クラキ国王.........からか。」


遅かれ早かれこの国の王から召集令状が来ることは分かっていた。


「『s』級冒険者と言うのも難儀なものだよ。強い呪いが出たら召集を食らう。それも何処から聞き付けたのか、私と初代バルドル辺境伯との間にある盟約が既にないことに気付いている。」


舌打ちをし、手紙の内容へと目を通す。そしてその内容に大きく溜め息を吐いた。


「......ニーズヘッグの幼体が三体か。確かに『s』級冒険者でなければ対応が出来ない案件だ。」


エル・ミアは手紙を破り捨て、それをルーン魔術で燃やす。


「我らが住まうヴァルハラ大陸には五つの大国が存在する。そしてどの大国も騎士団を保有している。副団長、団長クラスは『s』級クラスに近しい程の実力を持っている。にも関わらず騎士団を呪いの討伐に割かないのは何故だと思う?」

「___________国防の為、ですか?」

「そうだ。ヴァルハラ大陸は元々六大国だったのさ。だが、この国が大国ベルン国を取り込んだ事で五大国となった。」


かれこれ十数年前の出来事であり、それが原因で大国同士は緊張状態にあるのだ。


「君が思考したように大国間は冷戦状態にある。騎士団を安易には動かせはしない。だからといってアングルボサの呪いも放っては置けない。ならばその始末は誰がする?私達のような国に所属しない冒険者に分配されるのさ。まぁ、私たちが化物専門であることも理由の一つだろうがね。」


エル・ミアは執事の男を呼びつけ、何かを持って来るように命令をする。


「____________私は暫くの間、この地を離れることになる。」


執事の男は布に包まれた棒状の何かを持ってくると、エル・ミアへと渡した。そしてそれを開包すると二槍の槍が姿を見せる。


「綺麗な槍ですね........」


銀に輝く美しい槍。ルーン魔術も刻まれていることから何かしらの効力があることが見て取れる。


「そうだろう。『c』級に昇級した前祝いだ。君の装備と同じ銀鉄で出来ている。わざわざ大国ニザヴェリルの小人(ドワーフ)に書状を送って作らせた最高峰の槍だ。その出来上がった作品に私が時間を掛け、ルーン魔術を施したのさ。」


二つの槍を手渡され、頭を撫でられるジークフリート。


「良くぞここまで鍛練に励んだ。我が弟子を誇りに思うよ。とはいえ、まだまだ私の元で修練を積む必要はある。これからも私の元で頑張れるね、ジークフリート?」

「は、はい!師匠に真に認められるように頑張ります!」

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