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第4話 シンクロ・マジック

「今日はフュージョン・マジックとその大元となるシンクロ・マジックの授業だ。魔法の規模がでかいから七番校庭で授業を行うぞ。仮想魔法だとどうしてもリアリティが不足するからな。なるべく魔法は生で実演していく」


 円形のフィールドに薄砂が敷き詰められた現実の校庭と大差ない外見の校庭に1年G組の生徒は集合していた。今頃、学校に幾つもある他の校庭でも同じ授業が行われていることだろう。教師の前に集った生徒の顔ぶれをなんとなく見渡していた玄咲は、今更ながらにある事実に気づいた。


(あ、ヒロト・オライキリがいない。うんこみたいな髪型と肌色をした3人の女生徒も――そうか、この学校はそういう場所だったな)


 おそらく退学になったのだろう。思い返してみれば教室の机の数が不自然に少なかった。大体入学時の3分の2くらいの数だったろうか。それに配置も変わっていた。玄咲とシャルナの机は教室最後方隅っこという配置換えの影響を受けない席でまだクラスメイトの顔ぶれもろくに覚えていなかった――加えてネームドキャラは全員残っている――ため、気づかなかった。


「やった」


「え?」


「あ、ううん。何でもない」


 当然のように玄咲の隣に立つシャルナが誤魔化すように手を広げて笑う。深く聞いて欲しくなさそうなので、玄咲は深くは聞かなかった。


 G組の生徒の顔ぶれを見渡して、さらに思う。


(順当に弱そうな見た目の生徒が消えている。魔法が存在する世界でも強さは見た目に現れるんだな。そして当然、信号機トリオは残っていると)


 赤髪、青髪、黄髪の生徒を玄咲を順にみる。G組信号機トリオ。髪色からプレイヤー、そして公式にまでそう呼ばれている。サンダージョーが復学する3学期までの間、G組の顔として主人公の前に立ちはだかる悪童3人組。当然、生き残っていた。


「しかし、大体予想通りの顔ぶれだな。何年もやってると残る奴と残らない奴が何となくわかるようになってくるんだよな――っと、早速脱線してるな。いかん」


 玄咲と似た感想を生徒たちに抱いていたらしいクロウが咳ばらいを挟んで授業を本格的に始める。


「順を追って説明していこう。まずはシンクロ・マジックからだ。

 シンクロ・マジックとは要するに複数のカード魔法を同時に発動する呪文コマンド、あるいは呪文の効果だな。保留ストックの呪文のあとに発動するカードの名前を並べ、最後に起動ジェネレートの呪文で締めることでシンクロ・マジックは発動し、ストックした呪文を一度に同時に放出する。手数と瞬発力を兼ね備えた強力なADの呪文だ。発動を中止するときは起動の代わりに放散コラプスの呪文で締める。

 デメリットは魔力消費が2倍になること。なので多用は厳禁。ここぞという状況でのみ使うべき魔符士の切り札だ。まぁ、こんなところかな。では、早速実演と行こう。用意するからちょっと待ってろ」


「ねぇねぇ」


「ん?」


 当然のように玄咲の隣に立つシャルナがこそこそ耳打ちしてくる。


「使ったこと、ある」


「ない」


「あ、そうだよね。私も。スロットの多い、ADって高いの。シングルスロットが、限界」


「ADは高価だもんな。そういえばベーシック・デバイスもシングルスロットだったっけ」


「経費削減、かな?」


「かもな」


 玄咲がシャルナと話している間にクロウがADの展開とカードのインサートを終える。生徒たちの方を向く。


「今回使うカードはダーク・ボールとダーク・バレットとダーク・スラッシュだ。それぞれの効果を目を凝らしてよく見ておけ」


 クロウが校庭に置いてある人型の的に短剣型のADを向ける。


 そして、詠唱リードした。


保留ストック、ダーク・ボール、ダーク・バレット、ダーク・スラッシュ、起動ジェネレート


 闇色の光を纏い一瞬で刀身が5倍ほどに伸長したダガーの先端から2種類の魔法弾が飛び出す。中速大サイズの魔力弾ダーク・ボールと、高速中サイズの魔力弾ダーク・バレットだ。その両方ともが鋭く尖っている。そしてこころなし速度も速い。人型の的の心臓にダークバレットが、遅れて股間にダーク・ボールが着弾する。


 サイズは違えども共にまるで刃で抉ったような鋭い貫通痕が的に刻まれた。


(お、おお……凄い! 本物のパラレル・マジックだ!)


 1人だけ拳を握って興奮する玄咲。クロウは一瞬奇異の目を玄咲に向けるも、それ以上のリアクションは起こさず、解説に移った。


「シンクロ・マジックに使用した魔法はただ同時に発動できるだけでなく、相互作用し合って変質するんだ。必ずしもプラス方向の変質に結びつくとは限らないが大抵はプラスになる。先程の例で言えば、ダーク・スラッシュは2つの遠距離魔法の影響でさらに伸長し、2種の魔力弾はダークスラッシュの影響を受けて鋭く、早く、大きくなった。その結果があの刃物を突き立てたような貫通痕だ。少々癖はあるがそれでも強力な呪文に違いない。魔符士の必修項目だ。汎用性のあまりの高さとその癖の強さから使いこなすのが難しい技術だが一流の魔符士は皆使いこなしている。絶対習熟するように

 余談だが糞ば――学園長はこのシンクロ・マジックの扱いが死ぬ程下手糞なんだよ。力でごり押しできるから技術を磨く必要がなくて――」


 長い長いクロウの余談が始まる。その間に玄咲は頭の中でゲームでのシンクロ・マジックの知識のおさらいをする。


(シンクロ・マジック。1ターンの溜めが必要になるが一度に複数の呪文を発動できる強力な呪文。この世界では溜めがカード名の羅列による詠唱時間の長さに置換――というかこの世界が本家なんだが、とにかく置換されてるわけだな。ADはあまり早口で呪文を唱えても認識してくれないから、詠唱時間の短縮は不可能。テロや犯罪等危険用途の防止のためにADは国際法で徹底的に機能制限をかけられてるんだよな。犯罪組織はこのADの制限を取っ払って絶対先制や1ターン2回行動を平然と行ってくるから手を焼かされたっけ。ああ、久しぶりにCMAやりたいなぁ……)


 クロウの雑談と同じようにひたすらに脇道に逸れていく玄咲の思考。その思考がふいに隣から聞こえてきた物音によって途切れる。


「余談……学園長……下手糞……」


(ん?)


 筆記音。そして漏れる呟き。ふと隣を見るとシャルナがメモ帳にメモを取っていた。G組でそんなことをしている生徒は他にいない。日光を反射して煌めく水滴のような瑞々しさに玄咲はときめく。メモの内容を見ようとする。


「あ――だめ……」


 ふと、玄咲の視線に気づいたシャルナが赤面してメモを手の角度で隠す。内容を見られるのは恥ずかしいらしい。玄咲は慌てて視線をクロウに戻す。丁度本題に入ったところだった。


「シンクロ・マジックは時々魔法反応を起こして、魔法同士が融合し合い強力な単一魔法へと変化する。いわゆる、フュージョンマジックだな」

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