第29話 一日のオチ
「……あのさ、今日、遅くない? 私、ずっと待ってたんだけど」
「ご、ごめん。本当にごめん! バエル! シーマ! でも、当分はどうしても時間一杯学校で過ごすことになりそうなんだ……」
「……まぁ、いいけど。なんか扱い雑よね私、一応精霊神なのに。む、むむむ……」
バエルを帰宅後簡易召喚した玄咲は即その不機嫌な顔に直面し、帰りが遅くなったことを平謝りした。バエルはプレイアズ王国が優勝しないと――正確にはエルロード聖国の優勝を防がないと、不幸な未来に着地する可能性が高いことを知っている。プレイアズ王国が優勝しなくてもエルロード聖国が敗退する可能性もあるが、それはやはり望み薄だろう。玄咲自身はもちろん、ラグナロク学園に共に通うチームメンバー候補の仲間たちをも強化して挑まねば優勝は難しいはずだ。だからバエルも玄咲の遅帰りにあまり強くも言わず深くも追及しない。だが、それはそれとして、お預けを食らったバエルの胸にはもやもやしたものが残る。
(うーん。でも仕方ないとはいえ当分はこういう夜帰りが連続する。つまり私の玄咲と一緒にいられる時間が減る。よくない。よくないわね……)
バエルは一人沈思黙考する。その沈黙を不機嫌と受け取って玄咲が焦る。
「就寝までもうあまりないがその間に俺にできることなら何でもするよ。何でも言ってくれ」
「……じゃあ昨日の続き。カード図鑑を読みましょ。玄咲にも強くなってもらわないと困るしね。ま、この1年はある程度諦めるわ……私たちの未来のためだもの。たかが1年くらい妥協するわよ」
「すまない。バエル。ありがとう」
「いいっていいって。じゃ、読み始めましょうか」
「ああ」
バエルと玄咲はCMAの雑談を交えながらカード図鑑を読み進めた。
「ランク7のカードって妙に充実してるわよね」
「高ランクカード程魔力伝導率や魔力耐久性の高い上等な魔物の素材とかが必要になってくるからな。現実的に量産できる高ランクカードはランク7がピークなんだ。それ以上のランクのカードはそもそも製造に耐えうる素材の確保が難しい。高ランクカードが貴重品とされる所以だな」
「流石CMAオタクね。じゃあクイズよ。ランク8のカードで最強とされるバトルカードは?」
「やっぱりアルティメットソードじゃないかな。名前はバカみたいだけど強いってゲーム中テキストにも書かれてたし。符闘会で敵国が使ってくるカードだし」
「正解よ。でも、この世界でも最強なのかしらねぇ。正直私も今の世界については分からないことの方が多いわ」
(バエルってやっぱ封印されてるんだな……)
バエルと楽しくカード図鑑を読んだ後は続けてシーマとCMAクイズの時間だ。
「クイズQMA! じゃなくて、クイズCMA! 問題! CMAで最強のキャラクターは誰でしょう! あ、学園長と精霊は除外ね!」
「敵キャラも含めての最強か?」
「うん!」
「……そうだなぁ。プレイヤーとしてはやっぱり一番お世話になるラグナロク学園生徒会長の明麗ちゃんを選びたいけど、冷静に判断すると、やっぱり総合的には勇者なんじゃないか? エルロード聖国の第一使徒とか、ジコリマス共和国の符闘会に第1回からずっと出場し続けているマナデックの修験者とか、他にも強い魔符士はたくさんいるけれど、同じAD、カードを使わせた時一番強いのは素質値の化け物の勇者だろう」
「うん、正解! 設定的にもステータス的にも最強とされてる魔符士だね。でも、ADやカードの相性によってはそんな勇者にも簡単に勝てちゃったりするからカードバトルって面白いよね!」
「ああ。だからCMAの戦闘は面白い。カードの組み合わせで無限の戦略性があるし、困ったらバエルでぶち殺せばいい。CMAは本当神ゲーで――」
シーマと穏やかで心安らぐ会話を交わしている内に自然と睡魔に襲われ、いつの間にか眠っていて――
チュン、チュン。
新しい朝がやってくる。6時に速やかに起床し、カーテンを開け放ち窓を開いて身を乗り出し、
「――うむ! いい朝だ! 今日も一日頑張ろう!」
白い太陽の輝きをその瞳に映す。




