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稲穂ゆれる空の向こうに  作者: 塵芥
鼓動
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「えー!!!!!!本当?


いや、驚くよ、多分誰でも驚くよ。

でも俺には視えないから、信じろって言われてもな・・・

今いちピンとこないな。


いやまてよ、御神木の声は俺にも聞こえたわけだから、そういうこともありえる話しかな?

ん・・

でも信じきれないよ。

信じられないよ。

園田君にとり憑いている幽霊だろう?


まさか・・・・今も?」


「うん、今もこの教室の中にいるよ。

さっきから飼育箱の中のコオロギを見て遊んでるよ」


「げっ!嘘!?

いるの・・・・?

ここに、この教室に・・・」


涼介はらしくもなく、弱腰な態度で辺りをキョロキョロとうかがって背中を丸めた。

恐怖を打ち消そうと琴音に意見を求めた。


「なあ信じられるか琴音?

幽霊があの日俺たちを助けてくれて、今ここにもいるってそんな話し。

自分の目で見たことしか信じられないよな?」


「くすっ。涼介にも怖いものがあったのね。

そりゃ、自分の目で確かめないことは信じられないよね。

うん、そうだね。

じゃあ、あたしは信じるよ」


「こ、琴音?」

「あたし視えるもん。

女の子の幽霊が視えるし、もう話しもできるよ。

それでも、あの日あの時、御神木の精霊が道を教えてくれたなんて、気がつかなかったわ。

すごいね。

ねえ茜音ちゃん」


琴音は、教室の隅で黙っていい子にしていた茜音を呼んだ。

人前では黙っているように言いつけられている茜音は、もじもじしながら浮遊していた。


「いいんだよ茜音。

今は特別に返事をしてもいいんだよ」


蒼音からお許しがもらえた途端、茜音はハニカミながら堰を切ったようにしゃべり出した。

今まで人前では、じっと気配を消して我慢していたから、よほど嬉しかったのだろう。


『いいの?いいの?

蒼音、今話ちていいの?


あのね、あたちみんなと一緒にお山登ったよ。

プリンも食べたよ。

絵本も読めるようになったよ。

毎日蒼音と学校にきて、とってもたのちいよ。

煎餅も大好きなの。

猫の小町とお友達なの。

この世界でお友達たくさん出来たよ、琴音でちょ、御神木でちょ、お庭のお花でちょ、学校のメダカでちょ、うさぎでちょ、カラスでちょ・・・

あとねあとね、涼介!


蒼音の友達は、あたちも友達なの』


「き・・・聞こえたぞ。今のは、はっきり聞こえたぞ。


すごい早口だったけど、最後の涼介って、俺を呼び捨てにしたのも聞こえたぞ。

今の声がそうなのか?女の子の幽霊がいるんだな、そこに」


涼介は、たじたじになりながら、茜音がいるであろう場所を見つめた。

はっきり声が聞こえた以上、蒼音と琴音の話しを信じないわけにはゆかなかった。


「いつからなんだ?

園田君はいつから幽霊が視えるようになったんだ?」


「僕には茜音しか視えないよ。

あ、茜音ってその幽霊の名前なんだけどね。

僕が名付け親。

僕は霊感がないから他の幽霊は見えないけど、この学校に転校してきた日から茜音が視えるようになったんだ。

桜井さんも同じ日に視えたんだよね?」


蒼音はこともなげにそう説明してくれた。


「そうあたしも同じ日に視えたの。

もっとも、あたしの場合、もともと霊感があったから、幽霊は珍しくなかったのよね。

園田君より少し早くに、茜音ちゃんのこと視えてたくらいだしね」


琴音にしても、さほど特別なことでもないように教えてくれた。


「お、おまえら・・・・

すげえな。

ていうか全然怖がってないじゃん?


しかも、琴音に霊感があったなんて初耳だぞ。

そんなこと一度も聞いたことなかったぞ」


「そう、秘密にしてたの長い間。


みんなが怖がるといけないから、ずっと誰にも相談できなかったの。

でも園田君が転校してきてくれて救われたの。

こんな体質、あたし一人じゃないんだって」

琴音は恥ずかしそうに笑った。


「・・・そうだったのか、知らなかった。

全然気がつかなかったよ。

琴音にそんな能力があったなんて。

そのことでずっと悩んでたなんて。

今まで俺の人生順調でお気楽だったから。

大抵のことは自分でなんとかやってきたから、他のやつもそうなんだろうって勝手に思ってた。


でも違ったんだな。

みんなそれぞれ何かしら抱えながら生きているんだな・・・・」


肩を落として妙にしんみりと語りだした涼介を見て、蒼音はあまりに早く全てを打ち明けるのは、先走り過ぎたかな?と感じた。


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