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恐怖の夜回診

子供向けに書いたショートホラーです。よくある怪談話です。それほど怖くありません。

この作品はPixivにも掲載しております(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16421867)

 コツ、コツ、コツ……。

 静まりかえった夜の病棟に、わたしの足音だけがこだまする。


 わたし、この春にここに配属されたばかりの新人看護師のヨウコです。看護師って昔から憧れてたんだ。ちっちゃい子供たちも大好きだから小児科病棟でラッキーって感じ!

 でもこの夜の病棟回診だけはイヤなのよ。だって夜の病院って不気味すぎるもん! いまにもあそこの曲がり角から、すーっと何かが出てきそう。ああん、やだなあ。


 あれ? 今あそこでなにか動いたような。気のせいかなあ? その時、がさっと突然の物音。白いかげがわたしにおそいかかる!

「きゃーっ!」

 どっすん、しりもち。思わず大声をあげちゃった。だって怖かったんだもん。

「えへへ、ビックリした? ヨウコさん?」

 白いかげの正体はシーツをかぶったヒロユキ君だった。ヒロユキ君は血液の病気で、ずっと長く入院している。本当なら、外をかけまわったりしたいんだろうなあ。でも、それにめげないでいつも明るくふるまう、そんなヒロユキ君のことがわたしは大好きだ。

「もう、ホント、やめてよー。看護師さん、心臓止まっちゃうかと思ったよー」

「えへへ、ゴメンね!」

 そういってヒロユキ君は点滴棒を転がしながら足早にたち去っていった。子供って無邪気でいいなあ。さあ、わたしも気をとりなおして回診のつづきだ。


 とんとん、と小さくドアをノックしてからすぐそばの病室に入った。ふふ、サクヤちゃん、ぐっすり寝ているね。さっきあんな大声出しちゃったから起こしちゃったんじゃないか心配だったけど、よかった、よかった。あら大変、点滴の器械が止まってる! 危なかったなあ。この器械古いから、時々止まっちゃうんだよね。ぴっぴっと器械を再スタートして起こさないよう静かに病室をでた。そんな調子で一つ一つ病室をみてまわる。それが回診っていうお仕事です。


 あーこの雰囲気、やだなあ。絶対になんかいるよ、この病棟。そういや、前にだれかがこんなこと、いってたなあ。夜になると、この病棟、時々二つの白いものがうろついてるって。で、そういう夜にはきまって、点滴の器械が止まっていたりとか、人工呼吸器がめちゃくちゃな設定に変えられていたりとか、おかしな事故がたくさん起こるって。みんなは何かのタタリなんじゃないかって怖がっているけど、もしそんなことをするオバケがいるなら、わたし絶対に許さない。わたしがこの子たちを守ってあげるんだ!

 残りの部屋もぜんぶ回り終えて今晩の仕事もおわる。やっぱりいくつかの病室で器械の設定がおかしかったり、点滴の落ちが悪かったりしていた。けれどわたしが万事解決。今晩は働きすぎかなあ、少し頭痛がするよ。ああん、次の夜回診はいつだっけ……。


 「先生大変です! サクヤちゃんが苦しんでいます!」

「なんでこの点滴が再開されているんだ。夜間は使わないって伝えたじゃないか!」

「ユキちゃんの人工呼吸器の設定がめちゃくちゃになっています!」

「だれ? 点滴の速度を早めたの!」

「こんなこと、前にもあったよね」

「はい先生、たしかナカジマさんが当番だった夜です。なにか白いものが二つ、病棟をうろつき回っていたとかいっていましたね」

「それもこれもあの事故があってからよね」

「あの事故ってなんですか。師長さん?」

「あなたはここへきてまだ短いから知らないわよね。五年ほど前だったかしら、あなたと同じ新人看護師が夜の回診中に亡くなったのよ。入院していた子に、突然横からおどろかされてね、倒れたひょうしに頭を強くぶつけたの。打ちどころが悪くてそのままというわけ。あっという間のことだったから、自分が亡くなったことに気付いてすらないかもね」

「その時の子供さんは?」

「もともと難病だったうえ、そんな事があってショックだったのね、体調が急変してあとを追うように亡くなってしまったの。たしかヒロユキ君っていったかしら、あの子」

「ひょっとして、その亡くなった看護師が、いまもまだ回診を続けていたりなんかして」

「まあ、さすがにそんなことはないでしょうけど、いわれてみれば、たしかにそそっかしかったわねえ。性格はいい娘だったけれど」


 ……コツ、コツ、コツ。

 ううん今日も夜の回診だ。わたし、この春にここに配属されたばかりの新人看護師のヨウコです。看護師って昔から憧れてたんだ。ちっちゃい子供たちも大好きだし……。



四百字詰め原稿用紙五枚換算

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