第三話
ー1時間前ー
「すげえ古い屋敷だなぁ!」
山葉が洋館を見つめ、感嘆の声を上げる。
暗くてはっきりは見えないが、端正な出立で歴史を感じる趣が色濃く出ていた。
「このまま帰っても仕方ないし、ここの屋敷の人にキャンプ場の場所でも聞くか。」
(ここに住んでる人、絶対金持ちだろうなぁ。ちょっとキャンプ場の場所とか聞いて、そこから話を広げてみるか。)
考えがまとまった様子の山葉は、勇んで玄関の前へと向かう。
「近くで見ると、ますます立派な屋敷だな。」
ドアをガタッンと勢いよく開ける。
「しっつれいしまぁーす‼︎」
声が洋館の隅々まで響くが、返事は返ってこず“シーン”と静寂が場を支配する。
山葉は
(あ、あれ?誰もいないのかな?)
と首を傾げて
「入りますよぉ??」
と一言投げかけて入った。
すると風が外から中に勢いよく吹き込み、扉がガタンッと閉まる。
山葉はびくりと体を動かし、扉の方を見返る。
扉が閉まると、さっきの様子とは裏腹に何とも言えない悍ましい雰囲気が洋館から発せられた。
扉の方に恐る恐る近づくと、扉の取手に手を添え捻る。
ガチャン。
立て付けが悪いのか扉がまったく開かない。
ガチャンガチャンガチャンガチャン。
「何で開かないんだ?・・・どういうこと?」
山葉は大きく足を振り、扉に強烈な一撃を加える。
バコォン‼︎
扉は大きくしなるが開かない。
「やっべ、閉じ込められたわ・・・」
人は本当に困難に陥った時、驚くことすら忘れてしまう。
「仕方ねぇなあ。」
と山葉は頭を掻きむしり
「他に出られるところを探すか。」
と洋館の探索を始めた。
洋館の壁には美術解剖図が飾られている。
その絵の横を通り過ぎながら、目について部屋に入っていく。
そこには見慣れない古い本がところどころが置かれ、古びた机の上に日記らしき物が置かれていた。
1951年8月22日(水):私はここ最近、毎夜毎夜、廊下を入る音に困らされている。
1951年8月27日(月):その不可思議な現象は徐々に、頻度と規模を増し、今では何者かと分からない声が洋館の中から聞こえる。