第一話
金切り館
〜登場人物〜
古原雄貴。
・大学2年生。性格:大人しく、控えめ。性別:男子。主人公。
山葉翔。
・大学1年生。主人公の後輩。性格:楽観的。性別:男子。
小野昇平。
・主人公の同級。性格:激情的。性別:男子。
河村優馬。
・主人公の同級。性格:自発的。性別:男子。
立花悠綾。
・主人公の同級。性格:勘が鋭く、機転が良い。性別:女子。
山脇美香。
・主人公の後輩。性格:馴れ馴れしく、自己中。性別:女子。
「なあなあ、せっかくの冬休みなんだから皆んなでキャンプしに行かね?」
小野が呼び掛ける。
「おっ!キャンプか、いいなしてみるか!」
と河村が興味を示す。
「この寒い時期にキャンプ?嫌だなぁ。」
「もちろん行くよな!古原。」
と嫌がっている古原の肩に手を回し、河村が誘う。
「冬キャンプとか最高だろ。行こうぜ古原。」
「ハァ・・・強制か。炬燵でのんびりしようと思ってたのに・・・。」
俺が呟いた。
「さっすが!じゃあ山葉と立花も誘ってみるか。」
「そうだね、誘うだけ誘ってみよっか。」
河村が小野の提案に賛成する。
「あと、キャンプするにしてもいつ頃する予定なの?」
と俺が言う。
「ん〜、用意とかもあるからなぁ。1週間後とかはどうだ?」
「おっけ、分かった。」
俺が小野に同意する。
「おぉ〜い!センパーイ!」
1人の女子が小野に近づいてきた。
「一体なんの話を何してるですかぁ?」
「おぉ、山脇。お前も行くか?」
「えッ⁈どこに行くんですか?」
「皆んなでキャンプ行くことになったんだけど、お前もついでに来るか?」
「先輩とご一緒してもいいんですか⁈」
「お、おう。」
小野がその女子をキャンプに誘った。
「ん?どこの誰?」
と河村が小野に尋ねる。
「あ、あぁ、俺の後輩の山脇美香。」
「そうなの、俺は河村優馬。」
「よろしくお願いしますぅ〜。」
「初めまして、古原雄貴です。」
「あれっ⁈もしかして陰キャ君⁈あっ、大丈夫だよ!私気にしないから‼︎」
(じゃあ言うな。この人苦手だなぁ。)俺
「あ、ありがとうございます。」
と俺は引き攣った表情で言った。
「キャンプに同行してくるのは良いけど、山葉と立花はこの子のこと知ってんの?」
河村が小野に質問する。
「山葉とは何回か交流あるし、この子、俺と立花と同じサークルだから知ってる。」
と小野が答えた。
「それじゃあ問題ないか。」
河村が小野に言った。
「んじゃっ、各自用意して、1週間後に大学に集合な。」
ー1週間後ー
「山葉と山脇のやつ遅いな。」
と小野が呟いた。
「ごめんなさぁい!化粧に時間がかかってぇ!」
山脇が手を大きく振りながら、やって来た。
すると立花が
「ちょっと、時間くらい守りなさいよ。15分も遅刻してるのよ?」
「すいませぇ〜ん。」
と山脇は軽く受け流した。
そこに山葉も息を荒くしながら走って来た。
「ハァ・・・ハァ・・・す、すいません。電車が遅延しちゃって。」
「ちょっとアナタ‼︎何遅刻してんの⁈」
「でも・・・列車が遅延しちゃんたんで。」
「あのね、列車が遅延しても遅れないように先々を見て行動しないとダメなのよ⁈先輩たちにどれだけ迷惑かけたと思ってるのよ!」
と山脇は山葉を執拗に攻め立てた。
「アナタも遅刻して来たじゃない。」
立花が冷静なツッコミを入れる。
「私の場合は仕方ないんですぅ〜、私女の子だから化粧しないと外出れないじゃないですかぁ〜。」
立花はため息をついて、叱るのを諦めた。
「まあ、皆んなそろったんだし、さっさと行こうぜ。」
小野が言った。
すると皆んな、小野の車に乗車して、キャンプ場に向けて出発した。
「今回はちゃんとキャンプ用品持って来たのか?お前いつも忘れ物多いからな。」
河村が小野に言う。
「わぁってるさ。ちゃんと前から用意しておいたから。」
「そういえば、段々山道に入って来ましたね。」
山葉が窓を眺めながら呟いた。
しかし、ナビに急に砂嵐が入る。
「はっ?これ新車の筈だろ、ふざけんなよクソが。」
小野はイラついてハンドルをバンッと叩く。
「おいっ、落ち着けよ。モノに当たっても仕方ないだろ。」
河村が小野を宥める。
小野は舌打ちをして、再びハンドルを握り直した。
「この道沿いにそっていけばいいんじゃないのぉ?心配しなくてまだもその内着くわよ。」
山脇が提案する。
「まあ、それもそうだな。」と小野は呟き、そのまま車を走らせた。
だんだんと道は凸凹になり、周りの景色も木が生い茂るようになってきた。
「ねぇ、昇平このまま進んで大丈夫なの?」
立花が尋ねる。
すると山脇が
「大丈夫でしょっ。道が少し荒いだけよ。」
と返答した。
(さっきと道の雰囲気違うけど、間違えたら引き返したらいいし、大丈夫か。)山葉
すると小野が車を止める。
「何で急に止まったの?」
俺は恐る恐る尋ねる。
小野が
「いや、小さなトンネルがあったから止まった。」
と答える。
「あぁあ!ひょっとしたらぁ。この先にキャンプ場があるんじゃないのぉ?」
「えっ?こんなと」
「よしっ、じゃあ取り敢えず手ぶらで進んでみるか。」
小さい声で古原が独り言を言っていると、小野が喋り出した。
「えっ⁈皆んなで行かなくても、誰か1人行けば良いんじゃないですかぁ?」
と山脇が言う。
「まあ・・・それもそうか。」
と山脇の言葉に肯定し、小野が返答した。
「なら僕が行きますよ!」山葉が軽く手を上げた。
トンネルには光源が一切なく、深い闇に包まれていた。
「あんな暗いところ、1人で大丈夫?」
と立花が心配そうな表情で言った。
「平気っすよ先輩!」
山葉がバッグから懐中電灯を取り出し、車から出た。
「気をつけろよ!」
小野が大声で言った。
「はい!」
と山葉が返答し、トンネルへと進んだ。
山葉の照らした懐中電灯がか細くなり、消えていく。トンネルには苔が少し生え、辺たりの風を吸い込むようにたたずんでいた。
「もう30分経ったけど大丈夫かな。」
「まだ30分しかたってないんですよぉ。もう少ししたら戻ってきますよぉ。」
小野が「じゃあ、もう少し待ってみるか。ついでに俺が連絡してみるよ。」
小野が番号を打ち込み電話をかける。
「クソッ、圏外かよ。もう少し経って帰ってこなかったら、探しに行くか。」
携帯をポケットにしまう。
(何か嫌な予感がするなあ。)俺は心の中で呟いた。
「流石に1時間経って帰って来ないんだから、何かあったんじゃないのか。」河村が言う。
「うん。私も探しに行ったほうがいいと思う。」立花がそれに同調した。
「じゃあ探しに行くか。」
「えー私、外寒いし、車の中で待ってますぅ。」
それを「ほら、一緒に探しに行くわよ。」と
立花が強引に山脇の腕を引く。
「えー、嫌です。ゆあ先輩。」
そうしてみんな、懐中電灯を手に、トンネルの中へと歩を進めた。