プロローグ・ゼロ
西暦2021年日本のあるところに【華千学園中等部】という学校がありました。
その学校には、新木彩花と東雲悠斗と琴乃派忍の仲良し三人組が居ました。
三人は中学三年生。仲良く日々を過ごしていました。
ある日、三人で仲良く下校していると物語が始まりました。
「ねぇ、悠斗?どうしたのそんな思いつめた顔して。」
僕の顔を覗き込んでくる女の子、新木彩花だ。
だがしかし、僕は今そんなに思いつめた顔をしていただろうか。
してたのだろうな。そんなときは、
「ごめん。だが安心してくれ、何も考えていない。」
「そっか!だって!忍!よかったねぇ!」
「うん。」
彩花は自由奔放な女の子だ。そしてそれと真逆な性格の男、琴乃派忍。
僕は忍が男だという事をいまだに信じ切きれていない。
「忍は女だ。」
「すまん。違うんだ。俺は男なんだ。」
「そうだぞ悠斗。忍が女の子だったら私の存在意義がなくなってしまうぞ。」
「はっはは。」
確かにそうだ。忍は整った顔、完璧は知能、性格をした美少年(美少女)だ。彩花は顔は整っているが、頭は悪いし、性格は終わってる。だから忍が女の子だった場合、彩花が女の子でいる存在意義をなくしてしまう。
「まぁ、私は私だから。私は私であるし!われ思う故に我あり!」
「残念だけど彩花、われ思う故に我ありは世の中のすべてのものの存在を疑ったとしても、それを疑っている自分自身の存在だけは疑うことができない。という意味だから、今使うのは・・・・あってる?」
「わっかんね。てか、彩花そんな言葉しってんのか。」
「え?あー・・・うん!」
なんだぁ?この曖昧な返事は。あいまいみーなのか。
「ところで、明日は一年ぶりの夏祭りだね。」
「あーそうだったな。去年は例の流行り病でできなかったし。」
「うおー!!今年は去年の分を遊ぶぞぉぉ!!」
「あーはいはい。」
なんて他愛のない会話を繰り広げながら、いつもの道、いつものメンバー。
当たり前って本当に・・・幸せなんだろう。
「あれ?ねぇ、あれなんだろう。」
彩花が不思議そうな顔をしながら指をさす。その先には
見覚えのない、石造りの階段が山奥へ続いていた。
「見覚えが無いな。どうだ忍、見覚えある?」
「いや、ない。」
「なんか楽しそうじゃない?」
「は?」
「いや、行ってみたくない?」
「それは・・・いや、どうだろう・・・」
「いや、まって、嫌な予感がする。なんだろう、日常が壊れるような・・・」
人の直感は案外当たるモノだと僕は思う。
でも後悔している。
もっと僕は俺を信じておくべきだった・・・と。
「いってみよう?」
「あ・・あぁ・・」
「忍が行くなら・・・」
この時の僕は正常な判断が出来ていなかったと思う。
もう、あの世界に一歩踏み入れてしまっている。そんなふうに。
「はぁ・・・はぁ・・・どこ・・・まで・・続く・・・の・・」
「お・・い・・忍・・・つか・・はぁ・・・はぁ・・・・はぁあ」
「ねぇ、運動不足さんたち。よかったね。頂上だよ!」
「やっとかぁ!!」
「うお!!いくぞぉ!」
馬鹿みたいに単純に頂上を目指して走り出した。
頂上には真っ赤な鳥居と古ぼけた祠があった。
「なんだ・・・祠?」
「そうだね。」
「なんだろー?」
あたりには異様な雰囲気が漂っていた。
夏なのに何故か冬のように寒気がした。
「ねぇ、あの祠、」
「うん。嫌な予感する。」
「確かに。」
嫌な予感、いやな予感。本当に・・・
「ねぇ、忍、悠斗。あれ・・・」
彩花が再び指をさした。先には、
真っ黒な人のようなナニカがこちらを見つめている。
「だrむぐ!!!」
僕は語りかけようとした彩花の口を無理矢理おさえた。
ナニカがニッコリと笑った。
「ちっ。ダメだったか。」
ナニカに気づかれてしまった。きっと気づかれちゃいけないんだ。
気づかれちゃいけない。ナニカ。
帰れない。
ナニカが黒い黒い深淵よりも黒い手をこちらに、主に彩花に向かって手を伸ばしてきたのだ。
「逃げろ!彩花!」
考える暇など無く彩花の前に出てきた。彩花を庇ってしまった。
「忍!」
忍は一瞬戸惑ったがすぐにハッとし彩花の手を引っ張って走り出した。
黒い手は彩花をめがけていく。
「おい!化け物!俺を見ろ!」
黒い手がピタッと止まり、俺を見つめてくる黒いナニカ。
『貴様はなんだ。愚者だ。私は賢者だ。私は言う。』
ドスの効いた黒い声が僕の耳を刺激する。
恐怖を感じた。畏怖をした。
でも、
「俺は、僕は、東雲悠斗!新木彩花と琴乃派忍の英雄だ。」
イタイ。だけど、頑張った。
『そうか。愚か者だ。死ぬがいいと。私は言う。』
死んでしまう。・・・・とは、情けない。
「死ねるかぁ!!!」
彩花がさっきこの階段を登り出した時、アイツの眼には光が無かった。この化け物に操られてたんだろう。きっと、忍に任せたけど、今、彩花がまた戻ってきてもなにも言うまい。あぁ、もう。
「ごめん!逃げ出して!大丈夫!?悠斗!」
なんで戻ってきたんだ。
「忍ぅ!!」
華奢な可愛らしい女の子のような男の娘がまた戻ってきてしまった。
なにしてんだ。
「彩花は!?なにしてんの!?」
「彩花は寝てしまったよ。そうしたら警察の人が居たから預けてきた。」
「警察か。じゃあ安心だ。」
黒いナニカが茫然と立っている横で男二人(男の娘、男の子)。とても奇妙な光景だ。
そんな時、急に黒いナニカが呻きだした。
『あぁぁぁぁ!!愛情、友情、絆、愛愛愛愛!!下らないねぇ!私が欲しいのはぁ、負だ!恨みだ!嫉みだ!怨嗟だ!憎悪だ!自棄だ!もっと私を強くしろぉ!私は言う。』
「狂ってんのか、この化け物。」
「本当に何者なんだこいつ。本当に、なんだ。」
「わかんない。」
わかんないけど、ヤバいヤツ。ヤバイとそう、ただ、ヤバいやつだ。とそう思う。
逃げないと、いけない。戦えない。本当に。
黒い手がこっちめがけて飛んできた。
「うわ!?」
飛ぶように避けた。
「悠斗!大丈夫?」
「当然!」
ドンドン黒いナニカが迫ってくる。
ギリギリで避けて、避けて。
死に際に立ってしまってる。
でも、際に立っているだけ。
落ちない。まだ、落ちない。落ちれない。
「はぁ、逃げるんだ。はぁ、逃げ切れ。」
「逃げるのが、大事なんだ、よ。はぁ、悠斗。」
「そうだ、はぁ、なぁ、はぁ、はぁ、早く、もっと、」
「逃げないと。」
階段に何故かたどり着けない。
空間がおかしいのか。どういうことだ。本当にコイツはなんなんだ。
僕は、知っている。
俺はまだ知らない。
「ねぇ、少年。大丈夫かい?」
頭上から何者かから語りかけられた。
大丈夫、大丈夫か。これがそう見えるか?
「大丈夫じゃねぇよ。」
「そうか。じゃあ助けが欲しいって事かい?」
当然だろ。うおっと、こんなに、はぁ、
「はぁ、頼む。」
「うん。なるほど。理解した。理解してしまったよ。じゃあ、理解した事を行動に移すとするよ。」
なにも無いと思っていた、思わされていた空中から白いロングコートを着た男が飛び出した。
男はフワッと着地をした。フワッち。という事だ。
首を傾げ、眼を閉じ、手を広げ、
首を上げ、眼を見開き、手を傾け、
指を合わせ、
パチン!!
目の前が真っ白になった。
黒いナニカが消し飛んだ。
この時、僕は、人で無くなったようだ。
人ではなく、怪しげに異なった。
「僕の名前は水越争太。対怪異専門のサークル、チーム、集団、ネットワーク、ヴァルフォールのリーダー、水越争太だ。よろしく。悠斗くん、忍くん。」
「よろしくって、名前をどこで知った。」
「彩花ちゃん、さ。」
「はぁ?てめぇ、彩花を、彩花になにした!?」
気が動転してしまった。でも、これは普通の反応だ。
「いやぁ?なにもしてないよ。そこの忍くんに彩花を預けられたから。」
「あ!さっきの警察・・・ぽい・・・人?」
「そうさ、僕は警察っぽい挙動をして警察っぽく君をだました。そして仲間に彩花ちゃんを預けて【人の怪異】の気配がした異常区間に急行して、君たちを助けた。事の顛末はそんなふうだ。」
「仲間?お前、なんなんだ。そして、さっきの化け物は、」
「そうだよ!彩花はどこ!?ここは?ねぇ!」
「そう慌てなさんな。大丈夫さ、さぁついておいで。ここは不安定だ。怪異についても君たちが望むなら教えてあげるよ。どうする?」
「ちっ。行く。」
「じゃあ、僕も行く。」
これが始まり。ここから全てが始まった。