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19.旦那さまと、初めてのお出かけ

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 翌日。

 とてもよく晴れた穏やかな朝を迎えました。空がとても高く澄んで青い、気持ちの良い朝です。

 私はピアとハンナの意見のままにお仕度を整えたのですが。空色のワンピースに白いエプロンドレス。そして編み上げのショートブーツ。両サイドに二つに分けた三つ編みのお下げ髪に大きなリボンを顎で結ぶ形のつば広帽子。これはどこか外で作業をする服装ですよね?

 そもそも、旦那さまは私をどこに連れて行くのでしょう?


 玄関ホールに降りれば、そこには既に旦那さまがお待ちでした。

 なんの変哲もない白いシャツに黒のスラックスと皮のブーツ。相変わらず体格の良い方です。シュッとしていらっしゃるのに、ちゃんと筋肉もある……殿方として理想形ではないかしら。

 でも辺境(こちら)は体格の大柄な方が多いですよね。ギルベルトなんて、身長も身体の厚みも旦那さまより凄いし……旦那さまは体形もお義父さまと同じくらいでしたね。

 弟君ふたりも、旦那さまと同じ系統だなぁ……。フィーニス家の殿方は必要以上の筋肉が付かない体質なのかも。

 もっとも、王都ではこのご尊顔はともかく、もっとスマートな体形の方が好まれるのです。私は旦那さまの体形の方が好みだけどなぁ……。


「おはようございます。申し訳ありません、お待たせしました」


 私が挨拶をすると、旦那さまはゆっくり私を頭のてっぺんから足の先まで見ました。


「あぁ……愛らしいな……」


 しみじみと呟く旦那さまの言葉が面映ゆいです。

 旦那さまったら、目尻が下がってます。とっても美丈夫な方がこんな表情をすると、なんだか私が特別に愛されているかのようで、どきどきしてしまいますね。平常心、平常心。


 旦那さまは肩から斜め掛けに革袋を背負っていらっしゃいます。

 うん? ご自分で何かを運ぶのですか?


「お気をつけて。いってらっしゃいませ」


 笑顔のハンナたちに見送られて出立したのですが。

 ?? どういうことでしょう。外に馬車がありません。敷地内のお散歩でしょうか?


「しっかり捕まっていろ」


 そう言った旦那さまが! 私を! その左腕一本だけで、いとも簡単に抱き上げて!(所謂、子ども抱き? 立て抱き?)走り出しました!!!!!


 えええええええええええええ?!?!?!?!?!?!?!?!


 私を抱き上げているのに、すっごい速さなのですが!! 思わず旦那さまの首に? いいえ、頭にしがみ付いてしまうのですが!!


「ど、どこにっ行くの、ですかぁ?!」


 思わず叫び声になっての質問でしたが。


「アリスに見せたい風景がある」


 そんなお返事を頂いたのですが。


「何故、馬車じゃ、ないのですか?!」


 話をしていても速度は落ちないのです。


「馬では行けない」


 ひーーーーーー!! 馬車どころか、馬でも行けない場所なんですか? それってどーーーーこーーーーー?!?!?!


 ……あ、ありのまま、今、起こっている事をお話しますよ!

 何を言っているのか、解らないと思いますが、見たまま、ありのままを、一からお話します!

 旦那さまってばっ! 平地を走っていたかと思えば、山の方へ向かっていましてね! 途中で森の中に入りましてね! えぇ、当然の如く、速度は落ちていませんよ、同じ速度のまま! なんと! 木の上にジャンプで登りましてね! 途中からは、木の上を移動しているのですよっ! 何ですか? これは、一体、なんなんですか?!!! サルですか? サルの移動方法ですか? いいえ、足で枝を蹴って進んでいるんですよ?! 尻尾無いもん! 手、使って無いもん! 信じられます? 私は実体験したけど、信じられませんよ?! 驚異の身体能力ですよ?! しかも私という人間を一人、抱えての行動ですよ?! 凄過ぎませんかっ?


 でも! なんだか爽快なのです! こんな事、生まれて初めてなのです!

旦那さま、凄いっ凄過ぎますっ! 森の中を、えぇ、文字通り緑の森の中を飛ぶように進んでいるのです。時々枝葉が前方に立ち塞がると、旦那さまの右手がそれを払って(何やら魔法をブッ放してましたよ)、まるで何も無かったかのように問題なく進んでしまうのです。


 そうして森を抜けて。


 いつの間にか、随分高い山の上に来てしまったようです。私が下ろされたそこは、ところどころ花が群生している、美しい風景が見渡せる平原でした。

 人が手入れした花畑ではない、自然のまま自生した花。それら小さな花たちが群生して、あちらこちらで色とりどりに咲き乱れている様は、自然の美しさと共に、健気さ、逞しさも感じる風景です。


 なんて、なんて美しい風景でしょう。

 暫し、美しい風景に見惚れていた私でしたが、ふいに、旦那さまの存在を思い出しました。旦那さまは、今何を? と思って振り返ったら――。


 大きな布地を広げて紐で吊るして、タープ? 簡易テント? を張っていました。足元には折り畳み式の椅子が二点。テーブルもあり、その上には茶器。いつの間に? どこから? そう思って観察していたら、旦那さまが背負っていた革袋、これがマジックバッグでした。

 テキパキと小さな竈を作った旦那さまは、あっという間に火を熾して(もっとも、ちいさな火の精霊が視えましたが)ポットでお湯を沸かしています。

 私が茫然と見守っている間に、お茶が出来上がってしまいました。旦那さま、手際が良すぎませんか?

私と目が合うと、目線で座るように促されます。座れば、目の前には淹れたてのお茶とお皿に盛られたチョコレートとクッキーが。

 ひとつ頂けば、あら美味しい。チョコは好きですよ。思わず笑顔になりますよね? そう思っていたら、あれよあれよという間に、目の前にはバゲットにお野菜や焼いた肉を挟んだもの数種類が並べられて。あのマジックバッグから次々に出てきます。


 もしかして、これ、ピクニックですかね?



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