20話
休み時間にアクシデントはあったが無事に授業は始まった。
朝に七瀬が言っていた通り作るものは各自で自由だった。
前の机にはたくさんの食材が並べられている。この食材を使って三品作るらないといけないらしい。
俺の班は、俺と浅海、あと女子二人と男子一人だ。
男子の方はめんどくさそうな顔をしているが、女子の方はやる気に満ち溢れた顔をしている。
きっと、班のメンバーの中に浅海が居るからだと思う。浅海はクラスの中でも料理上手で有名だから、二人とも安心しているんだろう。
「莉乃、何作るの?」
一人の女子が浅海に何を作るか聞いている。
「うーん、そうね。真田君何を作ればいいと思う」
「えっ!俺か‥‥‥」
突然、話を振られて驚いたが、お礼状に女子二人の方が驚いているようだった。
「莉乃!なんでそいつに聞くの!」
片方が怒ったように浅海に訴えている。
七瀬達と一緒に居ることが増えて知ったのだが、七瀬以外の三人は料理が得意と言うのはクラスの共通認識らしい。
そんな料理上手の浅海が俺に意見を求めたことが彼女達の中で納得いっていないのだろう。その気持ちはわからなくもない。
「そんなの真田君の方が上手なんだから当然でしょ」
「「えっ!?」」
「マジで!」
女子二人は勿論のこと、興味無さそうにしていた男子の方も驚いた様子だった。
それぐらい、浅海は料理がうまいという事だろう。
「嘘でしょ」
「嘘じゃないわ。亜希と彩月も私と同意見よ」
「‥‥‥」
高島と雛野も同じだと言われると、女子達は黙ってしまった。
「へぇー真田って料理上手いんだな」
男子の方はかなりあっけらかんとしていてそこまで気にしているようには見えない。驚いてはいたが、女子と違って簡単に浅海の言葉を受け止めているらしい。
「まぁ、そうだな」
「何、きょどってんだ。あの三人から認められてるんだろう、十分胸張ってもいいとも思うぜ」
「ありがとう」
「いいってことよ」
ほとんど話したことない男子だったが案外いいやつかもしれない。名前ぐらいは覚えておこう。
「あの二人は真田君の料理を実際に食べさせてわからせればいいわ」
浅海はいまだに現実を受け止め切れていない様子の女子二人を見ながらそう言った。
「で、真田君。何を作るの?」
「そうだな。特に考えてないから何か食べたいものってあるか」
浅海には質問に質問で返して申し訳ないが、作るものに関してはなんでもいいのでみんなが食べたいものでいいと思っている。
「あっそれなら、おれパスタ食べたい」
「ん、分かった。浅海もそれでいいか?」
女子は当然の様に回復していないから、俺は直ぐに浅海へと確認の言葉を振った。
「ええ、それでいいわよ。パスタは真田君に頼むわね」
「ああ、分かった。浅海はどうするんだ」
「あたしはサラダとスープを作るわ」
俺と浅海は二人で何を作るか決めていった。
「なぁ、俺は何をすればいいんだ」
話しかけられて俺達はすっかり残りの三人の存在を忘れていたことに気づいた。
「そうね‥‥‥あなたには真田君のサポートをお願いするわ」
「おぉ、任せとけ。よろしくな真田」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
それから、浅海は女子二人と、俺はサポートになった男子基、右京 駿矢と共に食材を取りに行った。
右京に指示を出しながら俺自身も材料を取っていく。一通り集まったところで自分達の班のテーブルへと戻った。
「で、何を作るんだ?」
「言ってなかったか」
「あぁ、何も聞いてないぞ」
俺はすっかり何を作るか言っていた気になっていたが、実際は言っていなかったらしい。
「カルボナーラを作るつもりだ」
「えっ!カルボナーラを作るのか‥‥‥」
俺は頭を捻る何をそこまで右京が驚いているのかわからない。おかしなことは言っていないはずだし、カルボナーラってそんなマニアックなパスタじゃないだろう。
「その材料だけで作るのか」
「ん、まぁそうだな。だいたいこれだけだな」
調理台の上に並べられているのは、パスタにベーコン、卵、黒コショウ、チーズ、ニンニクに調味料にオリーブオイルだ。
別にかけている物も何もないし問題ないと思うのだが。
「生クリームとかいらないのか」
「いらないな。今回作るのは本場のカルボナーラだから」
右京はよくわからない反応をしたものの、吹っ切れたような表情をしている。初めて話したがコロコロ表情が変わるなと思った。
浅海達も作業に取り掛かっているようだし、こちらも作業に取り掛かる。
俺がベーコンを切ってくれと頼むと右京は、包丁を持ったままこちらを向いてきた。
「なぁどれぐらいで切ればいいんだ」
そういえば、切るサイズを伝えるのを忘れていた。
一人で勝手に判断して始めないとは、意外と右京は律儀な奴なのかもしれない。
「えーと、だいたい五ミリぐらいか」
「そんなに小さくていいのか。店の奴だと結構デカいイメージなんだが」
俺は右京に小さく切る理由をいつから説明した。
本来のカルボナーラは『グアンチャーレ』や『パンチェッタ』と言った豚の頬肉を塩漬けした物使うこと。
ベーコンを使う場合は、燻製臭が邪魔になってしまうこと。
右京はわかっているような、分かっていない様な顔で聞いていた。
「だいたいわかった。つまり小さく切った方がうまくなるってことだな」
「ま、まあそうだな」
あながち間違いでもないから、そこまで簡潔に片づけた右京にうろたえながらそう答えた。
右京はまな板と向かい合って真剣な顔で切り始めた。
最初のめんどくさそうな表情は見る影もない。
その間に俺はニンニクをみじん切りにした。それから、右京の残りを手伝った。
切り終わったベーコンをオリーブオイルで炒めて、脂身が白くなってきたらニンニクも一緒に炒める。
俺が炒めている間に、右京にはパスタを茹でてもらっている。
「これで茹でればいいのか」
「えーとそうだな。塩は入れたか?」
俺は隣にいる右京の方へ振り向くことなくそう言った。
「いや、入れてない」
「だったら小さじ四杯ぐらい入れくれ」
「わかった」
右京はそう言って離れて行った。塩を取りに行ったのだろう。
俺は炒め終わるとボールを出しす。
本来なら羊のミルクから作ったペコリーノチーズを使うが勿論ない。代用として今回は粉チーズを使う。
ボールに卵黄と粉チーズを入れる。パスタが茹で終わったらゆで汁も入れた。
それを混ぜたらさっき炒めたベーコンとニンニクもボールの中に入れる。
こうしてできたソースに茹であがったパスタをボールの中で湯煎しながらソースに絡めていく。
いい感じに混ざったら盛り付けて、オリーブオイルを少し回して、黒コショウを振りかければ完成だ。
「よし、これで完成だ」
最後の一皿を盛り付けて、五人分のカルボナーラが完成した。
「うまそう‥‥‥」
「食べたいのはわかったからもう少し待って。まだ女子の方じゃ完成していなようだから」
今にも駄馬だしそうな様子の右京を俺はそっと抑える。
「あ、あぁそうだったな悪い」
俺は手伝うか迷ったが、もう少しで完成ぽかったから、先に右京と二人で女子が使い終わった分も含めて洗い物をしていた。
「真田君できたわよ」
浅海に呼ばれた俺達は洗い物を中断してテーブルに向かった。
浅海達が何を作ったのかとても楽しみだ。
「おっ、冷製スープにサラダか」
冷静スープを作ったのは、今日が九月にしてはかなり暑い日だからだろう。
「そっ、結構上手にできた思うんだけどどう?」
浅海は評価し欲しいみたいな感じてそう言ってきた。
「別に俺に聞く必要なくないか」
俺がそう言うと不満げな顔をているが、俺はそんな浅海が期待するようなコメントはできない。
「なぁ、早く食べようぜ」
早く食べたくてソワソワしている右京に俺達は苦笑しながらも全員席に着いた。女子達も始まるときの、様子はどこへやらとても大人しくなっていた。
「「「「「いただきます」」」」」
五人で一緒にいただきますをして食べ始める。
どれぐらい上手に作れたかいざ実食。




