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15話


 菜月と教室の前で別れて、俺と涼は自分達のクラスである三組の教室に入った。ちなみに菜月は隣の四組だ。


 教室に入ると、七瀬が友達と談笑している姿が目に入った。何を話しているかはわからないが楽しそうに笑っていた。

 俺の姿を見つけた七瀬は少しぎこちなく微笑んだ。

 俺はおはようという意味を込めて軽く手を挙げた。七瀬がそれを理解してくれたかわからないが。


「幸人、いつの間に七瀬さんと仲良くなったの?」


 俺が自分の席に着くと後ろの席に座る涼が小声でそう聞いてきた。

 小声だったのは周りに聞かれたくないことだと分かってくれたからだろう。


「まぁ、いろいろあったんだよ」

「僕はそのあたりを詳しく教えてほいんだけど」

「また今度な。今はちょっと無理だ」

「わかった。そうさせてもらうよ」


 俺の気持ちを理解してくれたようであっさりと引き下がってくれた。

 他の生徒、聞かれたくないから涼の気遣いには本当に助かる。


 話題の内容を変えた俺と涼は、今日はまだしていなかったゲームの話をしてホームルームが始めるまで時間を潰した。

 そんな俺と涼に話しかけてくる生徒は勿論いない。

 俺達は生粋のボッチなのだから当然だ。でも二人だったらボッチではないか。


 チャイムが鳴って先生が教室に入ってくると、自分の席から離れて会話していた生徒達が慌てた様子で自分の席へと戻っていく。

 そんなに慌てるならもっと時計を見て行動すればいいのにと、ドタバタする様子を眺めながら俺はそう思った。


 ホームルームが終わり一限目の授業中、俺が黒板の文字を板書しているとポケットに入れているスマホから振動を感じた。誰かが俺のスマホに連絡をしてきたんだろう。

 俺の知り合いでこんな時間に連絡をしてくる人なんて俺の両親以外に考えられない。

 両親からの連絡なら基本直ぐに返事をする必要はないからそのまま授業を受ける。


 すると、またスマホが震えた。

 流石に両親からではないと思った方がいいのか。

 幸い後ろの席だから多少スマホを触ったところでそう簡単にはばれないのだ。

 俺がスマホを取り出して画面を見ると、そこには両親ではなく七瀬からのメッセージが映し出されていた。


『今日の事忘れてないよね』


 七瀬はどうやら俺が弁当をちゃんと持ってきているのか不安らしい。


『大丈夫。ちゃんと持ってきた、安心してくれ』


 俺はそれだけ送って直ぐにスマホをポケットにしまった。

 ばれにくいと言ってもばれるときは、ばれてしまうのだ。

 ばれてしまったら、スマホはその日ずっととられるし、反省文まで書かされるそれはどうしても避けたい。


 それから七瀬からの何か送られてくることは起きなかったから少しほっとした。

 送られてきたら返さないというのは悪いから。


 四時間よいう時間はあっという間に過ぎていった。

 これから、昼休みが始まる。


 俺は勿論のこと涼と菜月と一緒に食べる予定だが、その前に七瀬に弁当を渡さなければならない。


「幸人、食堂に行こうよ」

「ごめん、涼。少し待っててくれないか」

「うん、まぁいいけど‥‥‥」


 俺は鞄から自分の分の弁当箱と、七瀬の分の弁当箱を取り出す。

 俺が二つ弁当箱を取り出した事に驚いていた涼だが、どこか納得した表情をしている。

 まさか、もう二つ目の弁当が誰のかわかったとか、普通に怖いんですけど。どうせ直ぐに知られるんだけど。


 俺は席を立って、七瀬の席へと向かう。

 七瀬の周りに人が集まる前に渡したかったが現実はそんなに甘くないらしい。

 七瀬の席にはすでに、特に仲のいい友達なのだろうよく一緒に居る三人が居た。


「んじゃ、涼。少し待っててくれ」

「がんばれ、幸人」


 涼さん明らかに俺が今から誰のもとに行くのかわかってますね。ほんとにすごすぎる。単に俺が分かりやすいだけかもしれないが。


 涼への愚痴もほどほどにして、七瀬のもとへと向かう。

 素早く渡して、素早く戻ることが目標だ。


「七瀬、少しいいか」


 俺は覚悟を決めて話しかけた。普段、話をしない俺が話しかけたことで周囲の視線は自然と俺に集まっている。

 

 男子生徒からの視線はある程度覚悟はしていたが、女子生徒からも似たような視線を向けられることに関しては予想外だ。


「どうしたの、真田君」


 そんなことを気にもしてない様子で七瀬は俺の方に体を向ける。

 俺も七瀬も悪目立ちだけはしたくないから、事前にだいたいの会話の内容はすでに二人で考えている。だから、そこまで騒ぎにはならないはずだ。


「はい、これ。この前、妹がお世話になったお礼の分だ」


 俺はできるだけ不愛想にそう言って弁当箱を差し出した。俺が七瀬に何の興味を持っていないことを周りにわからせるためにあえて不愛想にしてみた。


「ありがとう」


 七瀬が俺の差し出した弁当箱を受け取る。

 さらに視線が痛くなった気がする。


「じゃあ俺はこれで‥‥‥」


 俺はこれ以上めんどくさくなる間に退散して自分の席に戻ろうとする。


「待ちなさい!」


 俺はめんどくさいなと思いながらも振り向いた。

 声の主は、七瀬の席にいる女子生徒の中で一番派手な感じの女子だ。


「俺に何か用でも?」

「あんた、何様のつもり」

「えーと‥‥‥」

 

 なにを言ってるのかよくわからない。

 俺は早くこの場から撤収したいんだが。


「心愛に料理が出来るアピールしてるつもりなの」


 ほんとに何言ってるんだ人の話聞いてました。

 このまま無視して食堂に行こうかな。


「何黙ってんの。なんか言ってみなさい!」

「亜希、私が真田君に頼んだことだから。それに、あのお弁当食べた言って行ってたよね」

「うっ、それは‥‥‥」


 流石は七瀬。友達の扱いが上手だな。


「折角、分けてあげようと思ってたのに亜希には分けてあげないよ」

「謝るからそれはやめて!」

「じゃあ、真田君に謝ってね」


 七瀬さん笑ってるのに目が笑ってない。亜希と呼ばれた女子凄い怖がってる。

 俺は絶対に七瀬が怒るようなことはしまいと今決めた。


「ごめん。あたしが悪かった」


 睨まれているような気がするのは気のせいかな。きっとそうだ、そうだと信じたい。


「えーと。別に謝る必要はないぞ。友達思いでいいなって思うし」


 そう俺は謝られる必要はない。

 俺が言葉が足りなかったのが原因なのかもしれないし。

 それに、それだけ七瀬の事を大事に思ってることが伝わった。


「‥‥‥一応礼は言っとくわ。ありがと」

「どうも。俺は今度こそ失礼ッ‥‥‥」

「ちょっと待って」


 俺が言い終わる前に今度は七瀬が俺の事を呼び止めた。

 まだ何かあるの。俺は早く食べたいんだけど。


「まだ何かあるのか」

「あのね‥‥‥一緒にお弁当食べませんか」


 その言葉に俺は固まった。

 いや、俺だけじゃなくクラス全体が今の七瀬の発言で凍り付いた。


 今の七瀬はいろんなずるい。

 俺は立っているが、七瀬は椅子に座っている。自然に上目遣いの状態だ。尋常じゃない破壊力を持った可愛さだ。

 クラスの男子はほとんどノックアウトだろうな。


 俺も可愛いとは思うがこれ以上目立ちたくない。

 断るのもダメなような気がするが受けるのもダメってどうしたらいいんだ。


 俺が悩んんでいるとスマホが震えた。

 今、取り組み中なんだがと心の中で悪態をつきながらも誰が送ってきたのか確認する。

 

『僕は菜月と二人で食べるから幸人は七瀬さん達と食べていいよ』


 送り主は勿論涼だ。

 俺が涼を探すとドアの近くでスマホ片手に笑っている姿を見つけた。その隣には菜月もいる。


 菜月が俺に親指を立てて頑張れ見たいな表情をすると俺が何かする前に二人で教室から出て行った。

 最悪だ、これで七瀬からの誘いを断る理由がなくなってしまった。


「わかった。俺でいいんなら一緒に食べるか」

「うん。ありがとう真田君!みんなもいいよね」


 七瀬の言葉で我に返って様子の亜希さんと他の二人はこくこく頷いている。

 俺は、七瀬と一緒に昼休みを過ごすことになってしまった。

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