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異世界 短編

何も知らないふりをしていたら、なんだかんだで幸せになれました《莉緒視点》

作者: 雪結び

 こんにちは、私はりお!

 神様の悪戯か、前世の記憶を持ったまま、小説そっくりの世界に転生!

 それも、ヒロインのポジションだよ!


 この小説は、だ〜〜〜〜い好きで、本編、続編、イベントの短編等、いろいろ読み漁ったの!制覇できたんじゃないかなぁ?友達にも布教しまくったよ。グッジョブ、私!


 話を戻すね〜。

 とにかく、私はこの物語と、登場人物がとっっっても好きなの!!!

 その中でも一番好きなのが、メインヒーローの王子様。金髪碧眼の優しげな人で、正しい事を好む、王子様らしい王子様。………本当はもっと愛を語りたいんだけど、省略するね。きっと餓死しちゃうから。


 だから、私は王子様とお近づきになろうと思ったの!

 いや、友人や恋人になろうだなんて考えてないよ?物理的な意味で近付きたいの!だって、この「好き」はきっと、アイドルに向ける様な「好き」だから。恐れ多いよ〜。近くで見て拝むくらいが限度かな。


 というわけで、私はひっそりと王子様を眺める様にしたよ。こう見えても、うちのメイドさん(元暗殺者さんを父さんが倒し、雇ったらしい)に教わった隠密は得意なの!

 それに、見に行くのは一日三回だけ、と決めるし。ファンたるもの、迷惑をかけてはいけないからね!


 でも、どういうわけか、それがバレてしまったみたいで………。

 だって、王子様に生徒会に推薦………と言うか、誘われちゃったから。これは、きっと監視の意味があるんだろうね。流石王族だよ!私だったらこんな危険人物、すぐに排除してしちゃうのに………泳がせて、更に尻尾をつかもうとは!参考にさせてもらうね!






 生徒会に入ってからしばらくして、前々からあった虐めが、深刻性を帯びてきたなぁ………。

 主犯はもちろん、ライバル役のロゼッタ嬢。王子様の婚約者で、とっても綺麗な美人さん。

 だけど、どういうわけか私が王子様と恋仲に見える様で…………。弁解しても、言い訳としか取られなかった。


 そして、ロゼッタ嬢に虐めの標的にされた私は、更にいろいろな貴族の方に嫌がらせを受ける様になった。

 正直、水をかけるとか、教科書を破くとか、所詮貴族のお嬢様お坊ちゃんだから。些細な事ばかりだったけど。

 でも、これはいただけないなぁ。皆、増長しすぎだよ〜?報告案件かな。

 …………まあ、王子様を見習って、半年後の卒業パーティまで泳がせようかな。





 いよいよ卒業パーティの日。

 半年も経つと、虐めには飽きてきた人が減り、鬱憤のたまった人が増え、と結果的にはプラマイゼロだね。

 まあ、今日、告発するつもりだけどね〜。親切なことに、王子様も手伝ってくれるそう。

 ちなみに、ロゼッタ嬢は卒業取り消しで、もう一年学校に通う+婚約を破棄だそうだよ。まあ、妥当じゃないかな?小説では国外追放だった気もするけど、そこまでの事をしていた様には思えないし。公爵令嬢だし。


 パーティが始まった。

 王子様が学園長先生への答辞を終えると、私が呼ばれる。いよいよ、作戦実行だね!


「ロゼッタ・アヤク嬢!

 貴女との婚約は、破棄させていただく!」


 会場中に、王子様の声が響き渡った。

 ちなみに、ちゃんと陛下達の許可はもらっているとの事。安心だね〜。


 ロゼッタ嬢は、呆然とし、それから青ざめた。

 まあ、そうなるよね〜。私は自業自得だと思うけど、私が誤解される様な行動をしてたのかもしれないし。後で確認しないと!


「………っ!!!!」


 ん?思ってたのと違う。

 っていうか、ずっと顔色悪いよ?今にも倒れそう……。

 助けに行きたい!………けど、私はまだ告発が終わってない。

 いや、そんな事はどうでもいいから、行かないと!!


 私が決意していると、いつの間にか、ロゼッタ嬢の顔には、悲しみと困惑が浮かんでいた。


「ここは………何処?誰?

 ………お母さん!?」


 !?

 えっと………どういう事?ロゼッタ嬢じゃ、ないの?私みたいに、転生者の可能性もあるけど……。

 いやいや、タイミングが良すぎるよね。演技の可能性もあるし、様子を見ないと。


「ロゼッタ嬢………気でも狂ったか」


 王子様が、不快そうに言う。そういう言い方はよくないと思う!

 だけど…………それより、ロゼッタ嬢はどうしてキョロキョロしてるの?


 少しの間辺りを見回して、彼女は首を傾げ、自分を指差した。


「えっと…………もしかすると、私に言ってるの?」


「当たり前だろう」


 王子様が答えてくれたけど………。

 こんな演技、ロゼッタ嬢がするかなぁ。

 どっちかと言うと、プライドを大切にして、真っ直ぐ突っかかってくると思うんだよね〜。


「お兄さん、誰?

 金色の髪ってカツラ?どうしてそんなにキラキラした服を着てるの?」


 彼女は、訝しげに顔を歪める。


 カツラ!いよいよ怪しくなってきたかも………。

 この世界だと、男性のカツラは存在しないし、女性はウィッグだし。


「何を言っている

 元婚約者の顔さえも覚えられないのか?

 それに、ロゼッタ嬢の髪だって金色だろう。キラキラした服?自分を見てみろ」


 王子様が答えると、彼女は今気づいたかの様に、視線を下に下ろす。

 そして、目を見開き、激しく狼狽しだす。


「わっ!?何これ!?

 っていうか、お母さん、本当に何処!?

 ここ、日本だよね!?」


 日本!!

 やっぱり転生者なんだ!

 だったら、彼女はロゼッタ嬢に関係ないかもしれない。

 話がひと段落ついたら、声をかけてみようかな。


「え、えっと、確認させて

 ここは日本だよね?」


「そんな地名は聞いた事がない」


「………ここは、地球?」


「チキュウ?それも地名か?

 ここはメーゲオムト国だ」


「……………私は、黒髪黒眼の、長谷川 優奈だよね?」


「ハセガワ?それも聞いた事がないな

 しかも、ロゼッタ嬢は金髪碧眼だ」


 そこまで質問のやり取りが続くと、彼女は青ざめ、震え出した。


 …………待って、長谷川 優奈?

 私の友人にもそんな名前の子がいるんだけど………同姓同名?

 ううん、違う。

 そっか、ユーナかぁ。じゃあ、多分これは演技だよね。

 忘れてる可能性もあるけど………今言うと、台無しにしちゃう。

 だけど、確認はしなきゃ!


「…………ユーナ?」


 思わず声が弾む。

 場違いだって事はわかってるけど………二人目に会った親友!

 こんなに嬉しい事はないよ!!


 彼女は黙って首を傾げる。


「どちら様ですか?」


 そうだった。

 私も名乗らないと。


「あっ、分からないよね!

 私だよ、りおだよ!」


 私が言うと、ユーナは目を見開く。

 うん、これは演技じゃないし、予想外だったのかな。


「莉緒なの!?

 えっと………でも、何でコスプレしてるの?」


「コスプレじゃないよ〜!!

 あれ、ユーナにもお勧めしなかったっけ?

『幸せのお姫様』っていう小説」


 一応話しておくけど、やっぱり知らないふりを通したいみたい。

 うんうん、もちろん合わせておくよ!


「そっか、ルールでもあるのかもしれないね〜

 ………あ、そうだ!

 殿下、彼女はロゼッタ様ではありませんよ!

 見た目………と言いますか、体こそ同じですが、魂が違いますもん


 ですから、断罪は継続していただいても構いませんけど、罪を償うべきは、”彼女”ではなく”ロゼッタ様”です

 それか、それを増長、黙認していた周囲の皆様ですかね〜

 どうせ、立場が怖くて言えなかったのでしょう?」


 ちゃんと説明はしておかないと!!

 万が一にでもユーナが捕まったりしたら、私以上に怒って国ごと滅しかねない人とかいるしね。うん。


「…………はぁ、仕様が無い

 ロゼッタ嬢………リオと彼女に感謝するんだな」


 これは…………ロゼッタ嬢の方に言ったのかな。

 ユーナ、無罪確定おめでとう!!

 これからも、精一杯フォローしていくから!!


 …………それにしても、王子様。

 こんなに簡単に諦めていいの?

 私は嬉しいけど、緩すぎるかな、って思うんだけど…………。まあいっか。



******

 その後、いろいろあったけど、パーティは終了!

 それで、王子様と、ロゼッタ嬢のご両親と、()にきてもらったよ〜。

 後は、ユーナがくるだけ!


「お邪魔します」


 ノックをして、ユーナが入ってくる。

 部屋を見回して、彼を見て首を傾げてるけど………そんな事していいのかなぁ〜?

 ふふ、楽しくなりそう。


 で、その前に…………。


「ユーナ!!!

 会いたかったよぉ!!!」


 ユーナに抱きつくっ!!

 はぁああ、久しぶりだよぉ。そう言えば、ロゼッタ嬢の香り………香水かな?それが、何処かで覚えがあると思ったら、ユーナだったのかな〜。


 少しして宥められたから、大人しく席に戻る。

 私、話は聞ける子だからっ!!


 ユーナも座ると、王子様が話し始めた。


「まずは、いくつか質問をしたい

 貴女は、リオとカイの友人———ユーナ殿で間違いないか」


 その質問に、ユーナは案の定首を傾げる。


「………リオ、カイって?」


「えっ!?忘れてるの!?

 ほら、カイ君!自分で言わないと!」


 わざと驚いたフリをして、彼———カイ君を押し出す。

 藍色の髪に碧眼で、顔立ちは変わってるけど………カイ君、って言ったらこのカイ君しかいないでしょ。

 ユーナ、他に同じ名前の知り合いなんていなかったと思うよ?


「優奈、本当に忘れてる?

 悲しいなぁ、小さい頃は後ろについて離れなかったのに」


 カイ君がわざとらしくそう言うと、ユーナが思い出したみたい。

 面白いくらい困惑してるね〜。ふふふ。


「海?え、え、え???

 でも、海は引っ越して…………えええええ????」


「馬鹿だなぁ

 世界が違うんだから、引っ越してたって関係ないよ。そんな事も思いつかなかった?

 それより、僕の事を忘れてるなんて、どういう事?」


 あはは、カイ君の毒舌炸裂!

 まあ、こんなのはまだ序の口だけどね〜。

 そもそも、ユーナの前でしかやらないから、むしろレアなんだよ?


「いや、忘れてたんじゃないよ!?

 ただ、その、可能性から除外してた………というか、思いつかなかったというか………」


 ユーナは気まずそうに目を逸らす。

 ほらほら、カイ君が心底楽しそうに顔歪めてる(笑ってる)よ〜。


 ん?何々………助けて?

 ふふ、頑張ってね〜。本当、楽しい!


 ユーナが逃亡していると、王子様の咳払いが。

 あ、そうだったね。すっかり忘れてた。


「とにかく、友人で間違いないんだな?」


「あ、はい」


 お、カイ君がユーナの横に座った。

 ユーナ、別に警戒しなくても、悪い事はされない(と思う)よ。

 ま、私は見てて楽しいから、どっちでもいいんだけどね〜。





「莉緒と海と三人で話したい事があるんだけど………いいですか?」


 一連の作業が終わって、ユーナが切り出す。

 王子様も頷いてくれた。

 うんうん、私も話したい事いっぱいあるんだ〜。


 三人で机を囲む様に座り直すと、ユーナが話し始める。


「えっと………まず、伝えたいんだけど

 皆の前では知らないふりしたけど、小説の事もちゃんと覚えてるよ

 だからこそ、悪役だって気づいて、回避しようとした結果があれ」


 私もカイ君も黙って頷く。

 まあ、なんとなく分かってたしね。

 カイ君にも必要最低限の小説知識は渡したし、現場の情報も伝えたから、ちゃんと理解してるでしょ。


「それから聞きたいんだけど、海は小説には出てこないよね?

 私は知らなかった」


 あ、知らなかったかぁ。

 まあ、首傾げてたくらいだもんね〜。

 よし、説明しよう!


「完結後にアンケート企画があって、その結果、続編が出されたんだ〜

 海君は、その続編に登場するメインヒーローだよ! 」


 ドヤ顔を披露!

 幼馴染がメインヒーローだぞ〜。

 いいだろ〜、って、ユーナにとっても幼馴染か。

 ついでに私もヒロインだし、ユーナはライバルだし。


「ちなみに、舞台から登場人物まで、ぜ〜んぶ変わってるの!

 ただ、”続編”だからね。主人公だけは本編に出てきたキャラだよ〜

 さて、誰でしょう」


 クイズにしてみようかな。

 ふふ、ユーナの事だから、絶対に分からないと思うけど。


「レノ嬢とか、アカリ嬢とか?」


「ん〜ん、違うよ〜

 レノちゃんもアカリちゃんも、婚約者と上手くやってるし」


 ちなみに、二人とも私の親友!

 とってもいい子で、自慢の友達だよ!


「ユキ嬢とか?」


「ユキ先輩は『本が恋人。読書以外に興味ないの』って言ってた」


 ユキ先輩は、私の一つ上———ロゼッタ嬢とかと同い年の、クールな美人さん。

 とっても頼りになって、親切にしてくれた人なんだぁ。


「それ以外に婚約者のいない人?

 思いつかないよ?

 あ、恋愛じゃないとか?」


 そっちに行くかぁ。

 やっぱり思いつかなさそうだね。


「……………降参!」


 ユーナの言葉に、カイ君と二人、ため息をつく。

 もう、一番近くにいるのに。


「ロゼッタだよ〜

 それに、容姿端麗、成績優秀、気高くて皆の憧れのご令嬢

 プライド高いところもギャップ萌え?とか可愛いし、主人公でもおかしくないよね〜」


 私がそう言うと、ユーナは混乱しちゃった。

 ふふ、逃げられないと思うよ?


「ヒロイン就任おめでとう☆

 まあ、ストーリーがあったとしたら、もう終盤だろうけどね〜」


 だって、恋愛モノって、両思いになるまでが一区切りでしょ?

 あの小説ではそれがメインで、そこから二部もあったけど………。

 ユーナ、一部は結果的に、ほとんどクリアしちゃってるんだよね〜。


「大丈夫だよ、優奈

 優奈が何処の誰かも知らないやつに好かれる物語なんて、僕が壊してあげるから」


 あ〜、当て馬キャラ出るんだっけ。

 ここまで来ると、カイ君もすごいよね。まあ、一途と言えばそうなんだけど。


「結局、私はどうしたらいいの?」


 お、聞いちゃった。

 ユーナ、後悔しても遅いからね?


 私とカイ君は、示し合わせた様に、にっこりと笑う。


「「優奈(ユーナ)()達に任せておけばいいんだよ」」


 悪い()はカイ君が退治してくれるし、私は最高の環境を整えてあげるから。


 私ね、本当なら大事な親友(ユーナ)には、自分の意思で好きになった人とくっついて欲しんだぁ。

 今もそれは変わらないけど、前までは、「ユーナが見つけて」「ユーナが選んで」「ユーナが好きになった」相手が条件だったの。

 ただね。

 カイ君は合格しちゃったんだぁ。

 私、約束は守るんだよ?


《初めに合格したら、推薦してあげる》


 あんな事言わなきゃ良かったかなぁ。

 ………ううん、でも、カイ君なら任せられるよね。


 ん?カイ君が落とせなかったら?

 それは自業自得だよね。それまでだった、って事だしね〜。


 あ〜、楽しみだなぁ。

 多分ね、二人は上手くいくと思うよ〜。

 ユーナの鈍感は玉に瑕だけど………。


 私の予想って、結構当たるんだよ?

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