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5.友人キャラは難しい。


「そういえばさ、理香って彼氏いるの?」


それとなく、彼氏がいるのか聞いてみる。

友人キャラとして、理香の恋を応援しようと決めてはいたが、そもそもあの告白を成功させていたら友人キャラとして立ち回ることができなくなってしまう。


そんな俺の質問に対して理香は慌てて横に首を振る。

どうしたんだろ……急にこっち見なくなったし。


「かかかか彼氏?い、いないけど……そ、それがどうしたの?」


という事は、あの告白は保留か断られたってことか……

理香の告白を断る人なんていないと思うけど。


「いや、気になっただけだから、気にしないで」


「へ、へぇ~、気になったんだ~」


彼氏がいるのかいないのか質問しただけなのに、何故理香はこんなにも嬉しそうにしているのだろうか。


「そ、そういう彩人はさ、かかかか彼女とかいるの?」


心配そうな目で、俺のことを見つめてくる理香。

そのふとした表情が可愛らしく顔が自然と赤くなってしまう。

理香の顔に見惚れたことを悟られないように、目線を逸らすと理香は急に慌てた様子で近づいてきた。


「そ、その反応、も、もしかして、かかかか彼女いるの!?」


彼女?そんなのいるはずないのに……

それに、いたとしても理香には関係ないのに。


「いないけど…」


俺の言葉を聞いて、理香は「よかった」と呟いた。


「よかった」?どういう意味なのだろうか。

まぁ、深い意味は多分ないと思うけど。


そう自己完結していると、後ろからふと、呼ばれた気がした。


「お~い!彩人!理香!」


「おぉ、樹~」


「あ、樹だ!」


後ろから、声をかけてきたのは、理香の片思い相手でもある樹だった。

こうやって、三人で登校するのは意外と初めてかも知れない。


樹が走ってこちらに来たので、俺と理香の間に来てもらおうと思い少しだけ理香との距離を空けると何故か、理香が間を空けまいと。さらに詰めてきた気がした。き、気のせいだよな?


そして案の定、作戦は成功せずに樹は俺の隣に来た。

俺の考えでは、樹が真ん中にいるはずなのに何で真ん中に俺がいるんだろう……


友人キャラとしてまだまだ実力が足りないなと考えていると、樹が俺に突然話しかけてきた。


「昨日はどうだった……?」


どうだったとは?理香には好きな人がいたりと、俺史上最悪の一日だったけど……


「まぁ、いつも通りの一日だったけど……」


俺が、本音に気付かれないように嘘を吐くと、樹は何故か理香の方を見た。

理香は理香で、恥ずかしそうに誰もいない方を向いているので、理香を見ても何も分からないだろうと思っていたら、何故か驚いていた。。


「え、あ、もしかして……」


「何が分かったんだ?」


何かを察したように言う樹に、気になったので質問する。


「まぁ、それは……ごめん。俺からは言えないや」


理香の方を見て驚いていたので、俺も理香の方を見てみるとブンッと勢いよくこちらを向いてきた。

どうやら、今の会話を聞かれていたらしい。


「ち、違うもん!き、昨日は彩人が来なかったから……」


話の内容が殆ど分からないが、とりあえず分かったのは、あの告白する予定だった待ち合わせの事を言っているみたいだ。


「そういえば、理香は何で昨日俺を教室に呼び出したんだ?」


俺が、昨日呼び出した理由を聞くと理香は顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうに言った。


「き、昨日、結局彩人は来なかったんだからどうでもいいでしょ!だから気にしないで!ふんっ!」


不貞腐れたなのか、そう言ってまた、理香は誰もいない壁の方を向いた。


「はぁ、やっぱりこの二人の相手は疲れるな……本当に………」


俺と理香の会話を聞いていたからなのか、深いため息のあとそっと呟いた。


ていうか、なんで昨日理香から告白されたのに、樹はいつも通りでいられるんだ!?

まるで、第三者みたいな感じ出してるけど、理香が本当に話したいのは樹なんだからな!?


ここは、友人キャラとして理香の手助けをしないとな……

やっぱり、俺がいない方がきっとお互い話しやすいだろう。さて、どうしたらいいのか…


あれはダメ、これはダメと考えていると、一つの作戦が思いついた。


「あ、そうだ、俺、今日は急がないと行けないんだ!申し訳ないけど、先に学校向かうな」


我ながら、素晴らしい作戦だと思う。

友人キャラとして、理香に二人きりになれる機会をあげたので、ここで理香には頑張って樹との距離をさらに縮めてほしいんだけど。


なんてことを思いながら走ってこの場を去ろうとすると、理香は俺の袖を掴んできた。


「そ、それなら私も一緒に行く!」


「……………」


えっと……何で、この子は与えられた機会を自ら捨てるのだろうか。

理香のせいで、友人キャラとしての最高の去り方ができなくなってしまった。


まぁ、『二人きりだと何を話していいのか分からないから、一緒にいて』的な意味で俺のことを止めたのだろう。


「いや、流石にそれは申し訳ないから、一人で先に行ってくるよ」


そう言って、今度こそ去ろうとするが未だに袖は掴まれたままだった。


「私も一緒に走るから、早く行こ!」


「俺は歩いて学校に向かうから、頑張ってな」


樹、ちょっと何でお前は本当に関係ないみたいな感じ出してるんだ!?


あぁ、友人キャラって難しすぎるだろ。

どうしたら、理香の恋は成就するんだ?

教えてくれ、誰か。



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