34.嘘つき。
俺は今日、理香に同じ委員会に入らないかと誘われた。
その時、今朝新しいクラスになったと知った直後のような、何とも言えない変な気持ちになった。
どうすればいいのだろうか……どう答えるのが自分にとって正解なのだろうか。
少し悩んだが、理香の顔を見ていると自然と答えてしまった。
「うん、いいよ」と。
その瞬間、理香は嬉しそうに喜んでいた。
自分でも信じられないくらいスッと答えてしまった。
何故、無意識に答えてしまったのか……
そんなの……
考えただけで、ため息が出た。
あぁ、恋って何故こんなにも諦めずらいのだろうか。
好きになった時間が長いから。
はたまた、その気持ちが本物だからなのか。
そんなのどっちでもいい。
どっちでもいいから、俺に諦めさせてくれ。
俺に可愛い顔を見せないでくれ。
俺に優しくしないでくれ。
また、昔みたいに好きになっちゃうから。
自分に嘘がつけなくなるから。
これ以上好きになったら、告白したくなるから。
俺に告白なんてされたら迷惑だろ?
だから、俺をほっといてくれ……
なんて、言えたら……どれだけいいだろうか。
はぁ……俺、まだ夢でも見てんのかな……
友人キャラになれるのかな……俺。
***
中休みが終わり、六時間目の委員会決めが始まった。
委員会は内申の加点にもなるので結構立候補者が多くスムーズに話し合いが進む。
そして、委員会決めは着々と進み、文化祭実行委員決めになった。
そういえばさっき、理香は風紀委員になるって高峰さんが言ってたような……
その矛盾を不思議に思い考えていると、先生が話し始めた。
「それじゃあ、まずは男子で文化祭実行委員やる人~」
理香と約束してしまったので、俺は仕方なく手を挙げる
文化祭実行委員は、人気ゼロで毎年誰も立候補をしない委員会なので、俺が手を挙げたことに皆が驚く。
そして、誰も他に手を挙げる人がいなかったので、俺が文化祭実行委員になるのが決定となった。
「それじゃあ、雨宮くんは文化祭実行委員確定ね」
「じゃあ、次に女子で文化祭実行委員になりたい人~」
先生がそう言ったので、俺は後ろを振り向いて理香の方を見る。
結局理香はどっちの委員会に入るのだろうかと思い見ていると、理香は顔を真っ赤にしながらゆっくりと手を挙げた。
理香が立候補をしたのを見て、クラスの男子が急に騒ぎ始めた。
「えっ、佐伯さんは風紀委員じゃないの!?」
「あのときの話と違うじゃねぇ~か!」
「今からでも、文化祭実行委員に立候補できないのか?……」
しかし、もう既に文化祭実行委員の男子枠は俺と決まってしまったので、男子は皆「くそ~」や「最悪だ~」と悔しがっていた。
そして、女子は理香以外に誰も手を挙げなかったので、理香も文化祭実行委員確定となった。
「それじゃあ、文化祭実行委員は、雨宮くんと佐伯さんですね。次は美化委員会を……」
先生の口から、俺と理香が同じ委員会になったと告げたとき、理香は嬉しそうに顔をほんのりと赤くしながら小さくガッツポーズをする。
そんな理香を見て思うのだ。
俺は、今後も理香にバレずに嘘を吐けるのだろうか。
『好きな人なんていない』。
それは、理香に吐いた嘘でもあるが、それ以上に自分に吐いた嘘だ。
この気持ちの諦め方を知らない俺は、自分に嘘を吐くしかなかった。
これでもう大丈夫だと思った。
諦めきれると思った……のに…………
あぁ、どうしてだろう。
どうしてこんなに恋って、難しいのだろう。




