3.幼馴染からもらうチョコ。
「はぁ、疲れたぁ」
家に帰った後、風呂に浸かり夕食を食べ終えた俺はごろんと自室で横になる。
そして、俺は無意識に理香とのトーク内容を遡っていた。
因みに、最後にやり取りした三日前はこんなやりとりをした。
『ねぇ、彩人~!バレンタインは誰かからチョコもらう予定ある?』
『ないよ』
『ふふっ!仕方ないから私がチョコを作ってあげるよ!』
『ありがとう』
この時の俺、つまりは三日前の俺なんだけど。
この時は、素っ気無い返事をしたけど内心ではめちゃくちゃ喜んでいた。
けど、今になって思う。
理香はどんな気持ちで俺にチョコを作るといったのだろうか。
きっと、文に書いてある通り可哀想だから作ってあげるという優しい気持ちで言ってくれたのだろう。
でも、今の俺は………
そんなことを考えていると、メールが一件届いた。
相手は、理香だった。
俺はメールが気になったので、遡っていたトーク内容を急いでスクロールして内容を確認する。
『なんで、今日来てくれなかったの?私ずっと待ってたんだけど……』
そうだった……
ショックがでかすぎたあまり忘れていたが、今日四時半待ち合わせなのに行ってない……
俺は、急いで謝罪する。
『ごめん』
『もういいよ……』
会話が終わり、俺は仰向けになっていると、スマホが突然鳴り出した。
「ん?誰からの電話だ?」
「あれ、理香からだ……」
告白してないけど、フラれたわけだし……
今日は、理香の声聞きたくないんだけどな…
そんなことを考えていても仕方ないので俺は、電話に出る。
「今日は行かなくて、ごめん…」
謝罪をまず口にする。
きっと、電話をしてきた理由はこの件についてだと思うから。
「え、あ、うん……それは別にいいよ…」
「ところで、どうしたの?突然電話なんてかけてきて」
「その……バレンタインについての話なんだけどさ…」
「あ、ごめんちょっと待ってて……」
バレンタイン……
俺は、その言葉を聞いた瞬間、マイクをミュートにして深呼吸する。
諦めたいわけじゃない。
でも、ここで自分の気持ちを優先すると理香が困ってしまう。
そう思って、諦めようとしているのに……
俺にバレンタインの話はしないで欲しい。
でも、理香からの話を突然切るわけにもいかない。
なので、息を吐き、緊張を和らげてからミュートを解除する。
「ごめんね、それでバレンタインがどうしたの?」
「その、、バレンタインについてなんだけどさ…」
俺が、そう聞くと理香は少し言い淀んだ。
「彩人は何チョコが食べたいのかなと思って……」
「チョコ……」
俺が何チョコを食べたいか?
質問の意図が全然読めない。それに、チョコは……
俺が、黙っていると理香は、恥ずかしそうに、慌てた感じで言ってきた。
「そそその!これは、決して彩人に本命チョコを渡したいとか思ってるわけじゃないから、えっと!そう、参考程度に聞くだけだから!か、勘違いはしないでね!」
その言い方だとまるで、本命チョコを俺に渡したいと受け取れてしまう。
まぁ、昨日までの俺だったらそう受け取っていただろう。でも、俺は勘違いしない。
本命のチョコを渡す相手も分かっている。
「うん、分かってるよ」
「そ、それならいいんだけどさ!」
ここで俺は、樹の好きそうなチョコを想像する。きっと、樹に聞くのは恥ずかしかったのだろう。
あいつは、何が好きなんだろう。今度、理香の為にもそれとなく聞いてみよう。
「少し甘めのチョコかな…」
「少し甘めっと……他には?」
復唱しながら、他にはないかと聞いてくる。
きっと、メモでも書いているのであろう。俺なんかの言葉をメモに書くなんて、本当に樹の事が好きなんだろうな。
「う~ん、他はないかな、参考になるかは分からないけど、チョコは気持ちがこもっていればなんでもいいと思うよ」
「き、気持ち……!あ、ありがとうね!あ、そうだ、前にも言ったけど、今年もチョコあげるから、楽しみにしててね!今年はね、いつもと違うところがあって……」
理香が、楽しそうに話し始める。
そんな理香の声が、急に聞こえなくなった。
そしてそんな中、俺は理香に本心を話した。
「今年から、俺のチョコは作らなくていいよ」
「……え?彩人、もう一回言って…」
「だから、今年から、俺のチョコはいらないよ」
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