28.お姫様に憧れた。
遊ぶ約束をしてから数日が経ち、当日を迎えた。
土曜日は、メールでわざわざ『明日だよね!楽しみだなぁ~!』と送ってきたので、本当に楽しみにしていたのだと思う。
流石に、幼馴染と言えど部屋を片付けないわけにもいかないので、急いで片付けに入る。
親は基本休日も仕事に出かけているので、リビングを一生懸命一人で綺麗に掃除をしていると、家のインターホンの鳴る音がした。
………あれっ?約束した時間より30分も早いんだけど……
まぁ、きっと宅急便なんだろうなと思い、片づけを一旦やめて出てみる。
「はい、どちら様でしょうか?」
カメラを起動させるとそこには、満面の笑みでカメラを見つめる理香がいた。
そして理香は、インターホンのカメラに急接近し「ふっふっふ!」と声を漏らした。
「やっほー、彩人!早く来すぎちゃった……!」
どうやら、早く来すぎた自覚はある様で理香のハイテンションについていけずに俺が黙っていたら、申し訳なさそうに「ごめんね!」と謝ってきた。
「まぁ、いいよ、今玄関の扉開けるからちょっと待ってね」
掃除も最低限はやったし、理香を外で待たせるわけにもいかないので、掃除は切り上げて理香を迎えに玄関に行く。
「おはよう理香、入っていいよ」
ドアを開けるとそこには、今か今かと目を輝かせながら待っている理香がいた。
「お邪魔します!」
理香は家に入るや否や、すぐさま靴を脱いで二階に上がるための階段を上る。
「あ、今日は俺の部屋じゃなくてリビングで遊ぶつもりなんだけど」
そういうと理香は、俺の部屋で遊ぶつもりでいたのか、恥ずかしそうに階段を下りた。
「あははっ……!恥ずかしいなぁ……」
リビングの扉を開けて理香の事を待っていると、理香は二階をジッと見つめていた。
「どうかしたの?」
不思議に思うことでもあったのかと思い聞いてみると、理香は何故か少し寂しそうな顔をした。
「もう、彩人の部屋には入れないのかな……最後にもう一回入りたかったなぁ……」
理香が独り言として呟いたその言葉は、俺には聞こえない距離で、何か口にしたのは口の動きを見て分かったが肝心の内容は分からず、数秒階段を見上げた理香は、またいつもの笑顔に戻りリビングに行った。
「ゲームする約束したけどさ、具体的にやりたいのとかってある?」
コントローラーを二つ持って理香に聞く。
すると、理香はゲーム機のホーム画面を見て、指をさした。
「これやりたいっ!」
理香の指した場所には、マ〇オカート8デラックスと書いてあった。
「あぁ、マ〇オカートか、懐かしいなぁ……」
「久しぶりにやりたいなぁ!」
理香は嬉しそうにマ〇オカートの画面を見ていたので、俺はコントローラーを手渡してゲームを起動する。
たしか、最後に一緒に遊んだのは小学生の頃か……
***
ゲームを起動して、キャラクターの選択画面に行くと、理香はすぐにピ〇チ姫を選んだ。
子供のころから、ずっとピ〇チ姫を理香は選んでいたので、懐かしさもありクスッと笑ってしまう。
「そういえば、理香っていつもピ〇チ姫選んでたよね、何でいつもピ〇チ姫だったの?」
きっと、一番かわいいキャラだからという理由なのだろうと勝手に予想していると、俺の予想とは全く違う答えが返ってきた。
「えっとね、憧れてたからかな……!あははっ……」
理香は、恥ずかしいことを言ったと思ったのか、笑って誤魔化す。
そんな姿を見て、俺が何も言えずに黙ってしまっていると、空気を察したのか理香がまた、わざと笑った。
「あっ、でも、今も憧れてるわけじゃないよ!?ただその頃、マ◯オと一緒に結ばれるピ○チ姫が羨ましくて憧れてただけで……って何恥ずかしいこと言ってるんだろう!彩人も早くキャラ選んでよ!」
理香にそう言われて俺は、慌ててキャラを選択する。
ステージを選んで、最初のレースが始まった。
それから、結構長い時間マ〇オカートをして、あっという間に時刻は夕方になっていた。
そろそろ、ゲームを終えるか。
「夕方になったし、ゲームやめて帰らないの……?」
夕方になったことに気付いていなかったのか、理香は時計を見てリビングから見える外を見て驚いていた。
「あっ、本当だ……じ、じゃあさ、最後に一回だけやろ?」
最後の一回ならそんなに時間もかからない、むしろ五分くらいで終わると思うので了承する。
「分かったよ、最後の一回やろうか」
「うん!ありがとう、彩人!」
そして、キャラもお互い変えないまま最後の試合が始まり、俺が一位。理香が二位になってレースは終了した。
「負けちゃった……あぁ、悔しいなぁ!」
俺にコントローラーを渡して、理香はあの時のテストのように悔しがった。
負けるべきだったか……
すっかり楽しんじゃって本来の目的を忘れてしまっていた。
「ま、また一緒にやろうよ」
悲しそうな顔をする理香を見て俺は、無意識にそんなことを口にしていた。
それを聞いてか理香は、「えっ!?」と言って笑顔になった……
と、思ったらまた悲しそうな顔になり下を向いて俯いてしまった。
「……あっ、でも、その時は、二人きりじゃないんだよね……あははっ」
その言葉の真意が俺にはよく分からないけど、幼馴染の俺と過ごす時間を大切に思ってくれていることが嬉しくて、また無意識に返答してしまう。
「二人きりがいいなら、二人きりでもいいよ」
そんなことを言うと、理香は顔を急に上げて、信じていないのか半信半疑といった様子で俺のことを見つめてきた。
「本当に!?」
理香に好きな人がいるのは分かっている。だから、二人で遊ぶのは決心が揺らぐという意味でしてはいけないことも分かっている。
だけど、理香が樹と付き合って、自然に消えるであろう俺と理香の関係を一日でも長く続けたい俺はゆっくりと頷く。
「うん、理香がやりたいならまたやるよ」
俺がもう一度言うと、理香は嬉しそうに飛び跳ねる。
そして余程嬉しかったのか、理香は飛び跳ねてから俺の方に笑顔で近づいてきた。
俺に近づいてきた理香は、上目遣いで言った。
「約束だからね?」
「うん、約束するよ」
……あと、何回理香とこうして遊べるのか分からない。
だからこそ、友人キャラとして二人の恋路を助けつつ理香とも出来る限り遊びたい。
終わりの決まった物語に期待なんてしない。
理香の彼氏に。恋人になりたい。という願いは変わらないけど、それを口には絶対にしない。
それをしても誰も幸せにならないから。
そんなことは分かっているから。
だから、俺は。
諦め切れないことは、自分がよく一番知っているけど。
いつまで続くか分からない。
いつ終わってもおかしくない。
そんな……幼馴染という関係をこれからも続けたいんだ。
このあと、一話か二話書いて、物語は二章に行きます。
それまでに僕は章管理についていろいろ調べておこうと思います。なんせ投稿を初めて二年?経って章を変えるまで小説書いたのは初めてなので(笑えない)
それでは、次回も読んでください!




