表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

25.誰でも解ける問題。


国語と物理基礎のテストを終え、今は休み時間。

このあと、十分後くらいに本命である英語のテストが始まる。


「よ、彩人!何してんだ?」


俺が真面目に単語帳を開いて勉強をしていると、後ろから急に背中を叩かれた。

こんな大事な時間に話しかけてくる奴なんて、理香を除いてあと一人しかいない。


「単語の勉強だよ、樹はしなくていいの?」


開いているページを見せて、今回のテストに出る単語がどれだけ難しいか教える。

しかし、樹はそれを見ても一切動じずに時計を見た。


「まぁ、勉強はしたから何とかなるだろ」


一見、樹は楽観的なただのアレな奴にしか見えないが、樹の学力は偏差値とかは知らないが、すべての教科において学年トップクラスの成績を叩き出しているので、きっと本当に勉強したのだろう。


「へぇ、じゃあガンバレ、俺は勉強するから」


「あ、そういえばさ……」


どうやら樹に勉強させてくれる気はないらしく、話題を変えてきた。

仕方ないので、適当に聞き流すことにする。


「理香が急にさっき「どの単語覚えるべきかな!?」って聞いてきたんだけど、アイツってそんなに勉強するやつだったっけ?」


「あぁ、それは俺と英語の点数で罰ゲームを賭けてるから聞いたんじゃない?」


俺が、特に何も考えずに答えると、樹は興味を持ったのか更に聞いてきた。


「へぇ……因みにそれってどんな賭けなの?」


「勝った方が、お互いの言うことなんでも聞くっていうのを賭けてるんだよ」


「彩人は理香に勝ったらなんてお願いするつもりなんだ?」


そう聞かれて俺は、単語帳を閉じる。

確かに、一切考えていなかった。

まぁ、きっと俺の事だから『ジュース一本奢って』とかで終わるのだろう。


「理香に持ち掛けられてそれに乗ったまでだから、特にまだ何も決めてないよ」


実際問題、勝てるかすら分からないので特に賭けの内容について考えていなかった。


そう答えると樹は何故か理香の方をジッと見ていた。


「へぇ~、理香は頑張ってんだな」


確かに、理香は友達のところに行かずに一生懸命単語の勉強をしていた。


「理香も単語頑張ってんだから、樹も残り時間単語の勉強でもしたら?」


一人の時間が欲しくて言ったのだが、樹はそれを聞いて何故か笑った。


「あははっ、そういう意味で言ったんじゃないよ」


てっきり俺は、理香が単語の勉強をしていることについてだと思っていたのだが、どうやら樹は違うことを言っていたらしい。


「ん?それじゃあ、何について?」


不思議に思った俺は、樹に聞くが樹は「う~ん」と答えるのを渋った。

そして、少しの間沈黙が訪れた後、突然樹は、真剣な口調で言ってきた。


「なぁ、彩人、俺はお前の味方でも理香の味方でもない」


また、英語テストの話をしているのだろうか、しかしそれにしては随分と真面目な声のトーンになっていた。


「多分俺は、本当の意味で一生理香と彩人の味方にはならない、いや、なれない」


突然樹は何を言っているのだろうか……

よく、分からない。

だけど、この話がきっと単語テストの話ではない、もっと俺らにとって重要な話だという事は分かった。


「ごめんな、俺は心が狭いから、性格がねじ曲がってるから、だから目の前に誰でも解ける問題があって、その答えを求めている人がいてもそれを俺は、解かないんだよ」


「……………」


黙って俺は、樹を見つめる。

すると、予鈴が鳴りクラスメイト達は自分の席に戻り出した。

樹も同じように自分の席に戻ろうとする。


「ごめんな、彩人……」


何か俺に言ったのは分かったが、何を言ったのかは騒がしいクラスメイトの声に掻き消されてしまって分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普通に考えたら理香の方が好きなんだろうけど登校時に理香の隣じゃなく主人公の隣に行くという伏線があったからワンチャン樹ホモ説あるwww
[良い点] またまた拗れる展開キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! これで喜んでしまう自分も中々ゲスイなと思いながら読んでしまう… 樹くんの発言の意味がどういう意味かは分からないけどもしも、もしも片思い…
2020/09/19 03:31 退会済み
管理
[一言] 樹は、二人が両片思いであることを知っていて、誤解が生じていることも知っていて、敢えて、拗れるに任せているのですね。ヒロインに片想いしているためか。誤解が生じたのも、樹の陰謀では。もしそうだっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ