24.なんでも。
理香との勉強会を終え二週間が経過し、あっという間にテストが始まり、今日テスト三日目を迎えた。
最後に知識を詰め込んで万全の状態で迎えたい俺は、少し早めに家を出るつもりでいる。
「久しぶりに一人で登校するなぁ~」
このテスト期間の間もずっと毎日一緒に登校していたが、今日は『少し、早めに家出たいから明日は先に学校行ってるね』と送ったので流石に今日は来ていないみたいだ。
「それじゃあ、行ってきま~す」
靴を履いて俺は、玄関の扉を開ける。
そして、俺は学校へ向かって歩き出した。
すると、後ろから物凄い勢いで走る音が、聞こえた。
ん??これってまさか……と、思いながらも気になったので後ろを振り向いてみる。
「あっ、彩人きっききき奇遇だね!一緒に行こ!」
理香は嬉しそうに俺の隣に来て、言ってくる。
「偶然ってあるんだね」
俺が何も考えずに言っただけの発言なのに、理香はそれを聞いてか何故か物凄く焦っていた。
「そそそそうだね!?偶然ってすごいねぇ!」
そんな理香を不思議に思いながら俺は、歩くペースを少し速める。
会話を終えて、少し歩き始めて脳内で英単語の反復練習をしていたところ、理香が突然体をくっつけてきた。
「どうしたの?理香?」
すると、理香は少し寂しそうな表情になりながらも話を始めた。
「彩人は昨日、私を不安な気持ちにさせました」
不安………
テストの範囲で不安なところでもあるのだろうか……
でも、俺が不安にさせたって言ったよなぁ。全然分からないんだが。
「は、はぁ……不安に……」
相槌の打ち方がよく分からず、適当に反応すると理香は頷いた。
「うん、彩人は私を不安にさせました。なので!」
「なので?」
なので……の先が気になるから早く行ってほしいのだが、理香は恥ずかしそうに俯いてしまった。
一体どんなことを言うつもりなのだろうか……
「なので、彩人は今後、私とずっと一緒に登校しなきゃいけません!」
「……ん?」
えっと……いまさら何を言っているのだろうか……
ずっと昔から欠かさず毎日一緒に登校していたので、約束とかはしていなかったが、俺は今後もてっきり一緒に登校するのかと思っていたんだけど。
「……………」
自分の言った発言が恥ずかしくなったのか理香は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「今後も……?」
「うん、私が満足するまで……!」
満足するのが実際いつなのかは分からないけど。
きっと、高校卒業までだと思う。
それに、樹と付き合ったら自然にこの約束は終わるだろうし。
「うん、いいよ」
理香と登校するのに慣れてしまったし、一緒に登校するのは楽しくもあるので受け入れる。
「えっ……本当に!?いいの……!?」
断ることでもないから受け入れたのに、そんな驚かれる?
断られると思っていたとか?
「うん、いいよ、ていうかずっと前からそうだからてっきり今後もそうだと思ってたんだけど……」
「そ、そうだよね、わ、私何言ってるんだろう……!」
嬉しそうに笑う理香を見ていると、理香が上目遣いでこちらを見てきた。
「これからも、よろしくね?彩人!」
「うん、こちらこそ」
***
そのあと、単語の復習ができずに学校に着いてしまった。
そして、今は締め切り間近の漫画家のような集中力で単語の復習をしていた。
理香は理香で、数学の公式を覚えていた。
十分くらい経って、そろそろクラスメートが登校しそうな時間帯になって、理香が俺の席にやってきた。
「ねぇ、彩人!私と賭けをしない?」
突然のことに驚いてしまう。
「賭け……?」
「うん、賭けごと!」
そんなことを提案してくるということは、かなり自信があるという事なのだろう。
と思ったけど、具体的に何を賭けるつもりなんだ?
「内容は?」
大方、予想はついているけど、一応内容を聞く。
賭けごと自体は、今までも面白半分で理香とやってきたので、断るつもりはない。
「内容はねぇ!英語で勝負しよ!」
「英語だけで?」
「うん!だってそれ以外だと私が勝てないもん!英語の一発勝負!」
英語は、正直理香の方が得意だ。
でも、今回の英語はかなり復習してきたので負ける気はしない。
なので……
「いいよ、勝負しようか、それで負けた方は何をするの?」
こちらも大方予想はつく。
きっと、ジュースを賭けたりするのだろう。
「ふふっ、負けた方はねぇ……!」
不吉な笑みを浮かべた理香は、嬉しそうに内容を言ってくる。
「勝った人の言う事なんでも一つ絶対にお願いを聞く!だよ!」
まさかすぎる内容に何も言えなくなる。
ん……?あれ、なんか予想してた内容と全然違うんだけど!?
「えっと……それって誰得?」
誰も得をしないと思ったんだけど、どうやらそれは違うらしかった。
理香は、めちゃくちゃ嬉しそうに言ってきた。
「ふふっ、私得!」
そうは言いながらもきっと、そこまできつくはない内容だと思うし、競争すると成績が上がりやすいとどこかで聞いたので、勝負に挑むことにする。
「まぁ、いいよ、それで」
「本当!?やったー!じゃあ、勝負ね!」
そう言って理香は自分の席に戻っていった。
徐々にクラスメイトの数は増え始めて俺は、集中力をなくし、気になるので勝負相手を見つめる。
理香は、友達と一緒にいながらも真面目に英語の単語を勉強していた。
そんな理香を見て俺は、考える。
今回、勝負を挑んできたのは、理香の方だった。内容も全て。
つまり、理香は俺に何か従わせたいことがあるという事だ。
理香は、俺にお願いするのだろうか……
投稿しましたぁ!
こんな頻度で書くのが久しぶりなので、習慣化させたいですねぇ~
それでは、また次回!