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21.それはもう、昔のこと。


理香と始めた勉強会は、意外にも集中でき『勉強会っていいな』と思い始めた頃、理香が急に肩をトントンと叩いてきた。


「彩人~、ここ分からないんだけど!」


理香は、数学の応用問題を指差して聞いてくる。


「えっと、ここは……教科書の例題見たらわかると思うよ?」


折角、集中できていたのでこのペースを崩したくないんだけど……


「そうなんだけどさぁ……ここって応用問題だからそれだけじゃ分からないんだよぉ……」


まぁ確かに、例題見ただけじゃ応用問題の場合解けないこともあるよな……


「分かったよ、どこまで解けたんだ?」


俺が教えると思っていなかったのか、理香は少し驚いた様子を見せてから、教科書に目を移す。


「あっ、うん、ここなんだけどさ、途中式はできたと思うんだけど、答えが合わなくて……」


理香の書いた途中式を書いて、すぐに教科書を手に取る。


「ここの計算は、確かこっちの公式を使うんじゃないかな?」


ページをペラペラ捲り、もう一つの公式を指差す。

すると、理香は思い出したのか「あっ!」と言って公式をジッと見る。


「そうだった……!ありがとう彩人!」


「ううん、またなんかあったら聞いてね」


そんなこんなで俺と理香の勉強会は、意外にも二時間が経過し今は、理香の提案で休憩している。

クタクタな自分はただ俯いて今にも寝そうになっていた。


「……ね、ねぇ彩人!これさ、覚えてる?」


寝そうになっている俺を揺らして、理香は一枚の古そうな紙を渡してくる。

その紙を見て俺はすぐに反応する。


「あっ、これって……」


「覚えてた~!?よかった~!覚えててくれてたんだ……」


俺が紙を見ていると、理香は俺に気付かれないようにそっと自分の胸に手を当てて、嬉しそうに微笑んだ。


「懐かしいよね、昔、彩人と結婚するって私言ってたから……あの時、無理やり書いてもらったんだよね……?」


「あぁ……そんなこともあったね」


突然すぎて話の内容が理解できなくなってしまう。

何故理香は突然こんなものを出してきたんだ?理香にとっては忘れたい話だろうに……


「あのさ!彩人……この約束ってさ………」


理香の言葉を聞いた瞬間、次に出てくる言葉が予想できた。

なので、自分から言おうかな。

そうしたら理香は気兼ねなく青春を謳歌出来ると思うし、何より理香の口から聞きたくない。

聞いてしまったら俺は、きっと、泣いてしまうから。


「えっと……そ、その約束は幼い時の約束だから、まぁ……今は関係ないんじゃないかな……」



きっと、理香の求めていた答えを言えたと思う。

ゆっくりと俺は、理香の顔を見る。すると、理香は俯いてしまっていた。


「そっ、そうだよね……幼い時の話だもんね……今は、もう、関係ないよね……」


声のトーンが低くなったので、何か失言してしまったのか心配になり理香の表情を見ようとするが、理香は俯いたまま顔を見せてくれない。


「理香……?」


「ちょっと、飲み物取ってくるね……先に勉強してていいから」


「あ、うん…」


そう言って理香は、その場から逃げるように台所へと向かった。


一人になった俺は、理香の置いていった紙を手に取り、ジッと見つめる。


懐かしいな……

結婚か……結婚どころか、理香の彼氏になることもなく、幼馴染の関係で終わりそうだな……


諦めるつもりだったのに、今でも理香のスキンシップに俺は、ドキリとさせられる。

この感情を俺は、どうしたらいいのだろうか、捨てればいいのだろうか、心の奥底に閉じ込めればいいのだろうか、それとも、忘れればいいのだろうか……


それは、もう既に昔のこと。

だから、できる事なら、忘れてしまいたい。


二週間経ったんですか……あっという間すぎませんかね!?

先々週と先週はめちゃくちゃ大変だった分、今週は多分時間に余裕ができるので投稿ペースは上がると思います!


読んでいただきありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] 割と序盤忘れちゃったんですけどヒロインからの接触はどういう風に解釈して自分に気がないと思い込もうとしてるんでしたっけ。
[一言] 切ないなあ・・・ いつか想いが報われますように。
[気になる点] 主人公は、一度くらい、自分の気持ちをきちんと彼女に告げて欲しい。 一度偶然に目撃して誤解しただけで、彼女が懸命にアピールしているのをずっと無碍にしていて。彼女の心が折れたら、ただの最低…
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