18.お嫁さんになりたい。
俺が起きてから一時間くらいが経過して、ようやく理香は起きた。
理香は、眠たいのか目を擦り、部屋を見渡す。
「あ、あれ?何で私、彩人の部屋に?」
「何でって、勉強の誘いをしに来たんだろ?」
「あ、そうだった……じゃなくて!彩人、熱は治ったの?もう大丈夫なの?」
起き上がると理香は、俺のおでこに手を当てた。
そのことに、少し顔が赤くなったが、気づかれないように視線を外し、体調は良くなったことを伝える。
「あぁ、理香のおかげで完全に治ったよ……本当に、ありがとう」
俺の言葉を聞いてなのか、理香は恥ずかしそうな様子で、急に顔を赤くする。
「あ、うん、彩人の体調がよくなってよかったよ……」
お互い、恥ずかしくなりそっぽを向く。
窓の外を見ると、いつの間にか朝になっていた。
外の天気は、昨日の雷雨が嘘のように思えるくらい、日差しの強い晴天になっていた。
「あ、えっと……朝御飯、彩人はどうするの?」
「俺は……カップラーメンでも食べようかな」
母さんがこの家にいる気配がしなかったので、立ち上がってからスマホを取りメールを確認すると、
『雷雨で帰れないから、近くのビジネスホテルに泊まるね!』と、送られてきていた。
俺が、メールを確認していると、理香が何か言いたいことがあるのか、もじもじしながら、俯く。
「そ、それだとさ、彩人がまた熱になるかもしれないから、今日は私が朝ごはん作るよ!」
理香から、そんな提案をしてもらえるなんて思っていなかったので、少し考えたが、栄養をあまり気にせずに体調を崩して、また風邪を引きたくはないので、理香の提案を受け入れることにする。
「そうしてもらおうかな、ありがとう理香!」
「うん、任せて!彩人はソファーでテレビでも見ててよ!」
そう言いながら理香は、冷蔵庫を開けて材料の確認をする。
そんな姿を見ていると、理香が俺のお嫁さんというありえない妄想をしてしまいそうになったので、眠気覚ましの意味も込めて顔を洗いに行こうかな。
***
彩人がリビングから消えたのを確認して、私は赤く染まった顔を両手で隠す。
やっ、やばいよぉ~、顔がニヤケすぎて……
彩人に見られてなくて本当によかった。こんな顔見られたら引かれちゃうもん。
ふふっ、こうして彩人の朝食を作ってると、本当に彩人と結婚したみたいで嬉しいなぁ……
でも彩人はきっと、そんなこと考えてないんだろうけど……
「で、でも、せっかく作るんだから、彩人に喜んでもらいたいな!」
そう意気込んで私は、棚の中にあった食パンをトースターの中に入れる。
これが、昼とか夜ご飯だったらハンバーグとか、カレーとか腕によりをかけて作れるのに!
今はまだ朝だから、作るメニューが思いつかないよ、どうしよ!
取り敢えず、食パンとジャムは朝食として食べられると思うから、他のメニューは後で考えよう。
「彩人は確か、ジャムの中でイチゴジャムが一番好きだから、イチゴジャムはどこかな……」
しゃがんでイチゴジャムを探していると、リビングに通じるドアの開く音がした。
その音は、足音となって徐々に近づいてくる。
この足音が誰なのか一応確認するために、私は顔を上げる。
「理香どうしたの?何か探してるの?」
「えっと、イチゴジャムはどこかなって……」
私が尋ねると彩人は、私の隣に立ってしゃがみ、奥に手を伸ばしてイチゴジャムを探してくれた。
「あった!ありがとう!」
「ううん、作ってくれてるんだからこれくらいはしないとね」
そんな彩人の言葉に恥ずかしくなり俯いてしまう。
不意に優しくするのは反則だよ!
そんな事されると嬉しくてニヤケちゃうよ……!
でも、彩人に見られながら料理するのは恥ずかしいので、彩人にはソファーにいて欲しい。
「彩人は、テレビでも見てていいよ!」
「え、手伝わなくていいの……?」
「うん、大丈夫だから、彩人は楽しみに待っててよ!」
彩人がソファーに座ったのを確認して私は、フライパンに火を通してから、目玉焼きを作る。
少ししてから、出来た目玉焼きをお皿の上に乗せる。でもなぁ〜、これだけじゃ見栄えがなぁ……
あっ、そうだ!
「確かさっき、ミニトマトが冷蔵庫にあったから、それをお皿の上に乗せれば……!」
半熟状態の目玉焼きをお皿の上にのせてミニトマトを添えて私は、大きいテーブルの上に置く。
「彩人、朝ごはんできたよ!あと、食パンとイチゴジャムもどうぞ!」
「美味しそうだね、作ってくれてありがとう!」
「ううん、こんなの、彩人の為ならいつでも作るよ……!」
自分でも恥ずかしいことを言っているのは分かっているので、徐々に声のボリュームが小さくなり最後の方は小声で言ってしまった。
「ごめん、聞き取れなかったんだけど……」
ただでさえ、恥ずかしいことを言って赤面状態なのに、もう一回言えないよ!
「い、今のは気にしないで、それより、朝ごはん食べよ!」
私は、背中を押して強引に彩人を席に座らせて反対側に私が座る。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます」
彩人が箸を握ったので、私もそれに合わせて箸を握る。
美味しく作れてるといいんだけどなぁ……
どうかな……誰が作ってもそんな味は変わらないはずなんだけど……
私は、箸を握ったまま、彩人の顔をジッと見ていた。
彩人は、目玉焼きに醤油をかけてゆっくりと口の中に入れる。
「うん、美味しい、理香って料理上手だよね」
彩人が褒めてくれたので、一気に気が楽になった。
私は、恥ずかしかったので小声で「ありがとう……!」と言ってから、私も、目玉焼きを食べる。
こんなことが微笑ましく感じて私は思ってしまう。
もし、私と彩人が結婚したら毎日こんな感じなのかな。
やっぱり私、彩人が好きだなぁ……
彩人の好きな人が私だといいなぁ……
もし、そうなったら彩人の彼女になって、お嫁さんになれるのになぁ。
彩人の好きな人って、私だよね!?
信じていいよね?
えーーーーーーっと。
もう八月………
あれ、あれあれあれあれ…………………
緊急事態宣言の間に出した話数はたったの1話……
あれあれあれあれ…………………
えっと……その……ほんとうにすみませんでしたぁ!これからはちゃんと書いていく予定(←ここ重要)なので許してください。
最後に
目玉焼きはめんつゆ派のかた。
はたまたそうで無い方も、今後とも宜しくお願いします。