15.友人キャラとして 【4】
階段を降りるとそこには、靴を履いて玄関のドアを開ける理香がいた。
俺は急いで階段を降りて、理香の腕を掴む。
「おい理香、何で今帰ろうとしてんだよ!」
俺は話しかけるが、理香は反応せずに俯いたままだった。
「おい、理香!」
何度も名前を呼ぶが、理香は俺の方なんて見ずに、外に出ようとする。
「どうしたんだよ、理香!」
「もう、ほっといてよ……」
聞き取れるギリギリの声で、理香は俺にそう言い、掴む腕を振りほどこうとする。
「ダメだ、この雷雨の中帰ったら危ない」
今でも、落雷の音が聞こえるくらい、外は危険な状態だ。
それは理香も分かっているはずなのに、何故か理香は外に出ようとする。
「大丈夫だよ」
「何が大丈夫だって言うんだよ!」
理香を強引に引っ張り、何とか玄関のドアを閉めることができた。
「………」
理香は、俯いたまま、黙っている。
そして、何故外に出ようとしたのか理由を聞こうとしたとき、理香は、ゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、私と彩人って、幼馴染以上にはなれないの……?」
涙を少し流しながら、理香は俺に聞いてくる。
でも俺には、その言葉の意味が分からなかった。
だから、俺は、正直に答える。
「……分からない」
俺が正直に答えると、理香は苦笑を浮かべた。
「ならさ、彩人にとって私は……ただの、幼馴染?」
ただの幼馴染……
考える必要もないくらい、その答えは、すぐに出た。
「違う。理香は、俺にとって大切で、自分の命なんてなくなってもいいから、守りたい。そんな存在なんだよ……」
俺の言葉に理香は、思わず顔を上げる。
「え……?」
「俺は、理香が多分この世で一番大切なんだよ。嫌に思うかもしれないけどさ、理香の為なら、自分の命だって惜しくないんだよ……」
「あ、彩人……」
俺の名前を呼んで、ずっと見つめてくる理香を見ていると、徐々に、自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか分かり始めた。
「ご、ごめん!えっと……今のは、忘れて……」
こんなの、受け取り方次第では告白になってしまう気がしたので、即座に忘れるように言うが、理香は苦笑いしながら、首を横に振った。
「やだ!絶対に忘れない!絶対に……忘れられないよ!」
泣きながら、何度も言ってくる。
涙を流しているけど、何故か嬉しそうで。
そんな理香を見ていると、こっちまで幸せになれている気がした。
「彩人ごめんね、風邪引いてるのに、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ……ゲホッ!」
いつも通りの理香に戻った気がして、安堵のため息を吐こうとすると急に咳が出た。
自分でも、さらに熱くなっているのが分かった。
どうやら風邪は、悪化したみたいだ。
立ち上がろうとするが、うまく立ち上がれずによろけてしまう。
「だ、大丈夫?本当にごめんね、私のせいで」
「大丈夫だから、気にしないで……」
そう言って俺は、壁を触りながら何とか二階の自室に行くことができた。
理香はというと、熱さまシートを探してくれていた。
ベッドに到着し横になった俺は、物凄い勢いで布団を被る。
あ~、何してんだよ俺!あんなの、理香からしたら迷惑に決まってんだろ!友人キャラになろうとしてるのに、何故自分の気持ちを伝えるかな俺!?
風邪を引いているので、元気はないが、心の中で俺は、何度も叫んだ。
自分の気持ちを伝えることはしないと決めていたのに、それに近いことを言ってしまった気がして、自分が情けなくなった。
「はぁ、でも、理香が大丈夫でよかったな……」
あの時に言ったことは、全部本心だ。
例えば理香が、目の前で殺されそうになっていたら、俺は自分の命なんて一切考えずに、理香を助けに行くだろう。
もし、それで二人とも死んで転生とかしたら……
その時こそ、両想いであってほしいな……
ありえないことだと分かっている。
でも、来世の時くらいは期待してもいいと思う。
それくらい俺にとって理香は、優しくて、可愛くて、誰よりも理香のことが大切で……
かけがえのない……そんな存在なのだ。
だから俺は、理香の気持ちを考えて、この気持ちを忘れるって何度も決めたのに……
何で、もっと好きになってんだよ……
そんなことを思いながら、目を瞑ると、俺はすぐに眠ってしまった。
投稿ペースをそろそろ上げたいので、明日投稿します。
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