13.友人キャラとして 【2】
理香の言う通りに従って、俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。
「彩人、朝ごはんは何か食べた?」
「何も食べてないけど……」
理香は俺が食べていないことを知ると、何故か笑顔になった。
「それじゃあ仕方ないから、私が作るよ!お粥とかなら作れるし!」
「いや、申し訳ないから大丈夫だよ」
お腹は空いているので、食べれはするけど、理香に作ってもらうのは申し訳ないので断ろうとしたら理香は笑顔のまま後ろを振り向いた。
「彩人は、私に甘えてればいいの!風邪引いてるんだから、早く治して、一緒に勉強しよ?」
そう言ってくれたのは、嬉しいがやはり申し訳ないので、再度断ろうとしたら、理香は既に俺の部屋から出てリビングに向かってしまっていた。
***
「はい、彩人!お粥できたよ~!」
おぼんの上にお皿を乗せて、ゆっくりと理香は俺の部屋に入ってきた。
俺はというと、体温計を脇に入れて体温を測っていた。
理香が、ゆっくりと俺のベッドの前に座るのと、同じタイミングで体温計がピピピッと音を鳴らした。
脇から取って、測定された体温を確認すると俺は固まってしまった。
え、嘘でしょ?そんなわけ……
「あ、体温測ってたの?どれどれ、どうだったの?」
そんな俺から、体温計を取って理香は俺の体温を確認する。
「38.2度!?彩人、本当に大丈夫?気持ち悪くない?」
俺の体温を知って、焦った表情を見せる理香。
俺自身、まさか本当に熱だとは思わなかったので、俺も理香と同じくかなり内心焦っている。
体温を知ると急に体がかったるくなったが、理香を安心させるためにも元気なフリをすることに決めた。
「うん、大丈夫だよ」
「そ、それならいいんだけどさ、変な見栄とか張らないで、気持ち悪くなったらいつでも言ってね?」
「分かったよ」
返事はしたが、多分俺は気持ち悪くなっても我慢するだろう。
理香に心配はさせたくない、それにもう迷惑はかけたくないのだ。
もう、理香に助けてもらってはいけないのだ。
理香の優しさにこのままずっと触れてしまうと……
きっと、誰も幸せにならないから。
その先には、不幸なことしかないから。
だから、俺は目を背けるしかないのだ。例えそれが、抑えきれない気持ちだとしても。
「あ、お粥作ったんだけど、食べれる?それとも、ゼリーとかにしておく?」
作ってもらったものを食べないわけにもいかないので、俺はお粥を食べることにした。
「せっかくだから、お粥食べさせてもらうよ」
その言葉を聞いてすぐに理香は、少量のおかゆをスプーンで掬い湯気が出ているお粥に『ふぅ~、ふぅ~』と息を当てた。
これって、もしかして……
「はい、彩人、あ~~ん!」
理香は、俺が食べやすいようにスプーンを俺に近づけてくれる。
「え、理香……?何してるの……」
そんな俺の動揺を無視して、理香は先程より少し大きめの声量で、同じ言葉をもう一度言う。
「はい、あ~~~ん!!」
え、これって、もしかして『あ~ん』してもらわないと終わらないやつ?
いや、でもそれは流石に、病人といえど甘えすぎな気がするんだけど……
「自分で食べれるから、大丈夫だよ」
俺が一人で食べるというと、不満に感じたのか理香は二回目の時よりも、大きな声量でもう一度同じ言葉を言った。
「はい、あ~~~~ん!!!」
理香は、俺が断らないようにか、徐々にお粥を入ったスプーンを近づけてくる。
「わ、分かったよ、食べるから、近づけないで」
こんなやりとりをしているので、先程に比べて湯気は少なくなってはいたが、熱々に変わりはないのでここは俺が折れることにした。
そんな俺の反応を見てか、理香は、『クスクス』と笑ってきた。
「分かればいいんだよ、分かれば!はい、彩人、あ~~~ん!!!!」
それを猫舌の俺は、恐る恐る食べる。
「美味しい……」
素直に美味しいと感じたので、俺はつい声に出してしまった。
そんな言葉を聞いてか、理香は安堵の表情を見せた。
「よかった~!もう一口食べる?」
「うん、美味しかったからもう少し食べたいかな」
二回目以降は自分で食べようと思い、スプーンを握ろうとすると、理香が離していたスプーンを俺より先に握って、お粥を掬った。
あれ、この流れってもしかして……また……
「はい、彩人、あ〜ん!!」
理香は俺に、もう一口食べさせようと、お粥の入ったスプーンを近づけてきた。
もう、何でこんなに、尽くしてくれるんだよ……
お久しぶりです。
二連続で一週間以上空けてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
お詫びとしまして、今日の23:00に、この話の続きとなる14話を投稿するので、ブックマークなどをしていない方はしていただいて、待っていただけると嬉しいです。
因みに、予約投稿はしているので、ほぼ間違いなく23:00に投稿されます。
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