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Zone Out  作者: オプス
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彼女と世界

野球選手になる夢

パティシエになる夢

お金もちになる夢

お姫様になる夢

家族を幸せにしたい夢

仕事を成就させたい夢

どんな小さいことだって夢になりうる。明日晴れますようにとか、ライン帰ってきますようにとか。どんな人も夢を持って、現実いまを生きてる。僕もまた、今日夢を叶えるために走っている。僕の今までの夢は大したことない。ウルトラマンになりたいとか。サッカー選手になりたいとか。高校生になる時なんて、夢を語ることなんてバカにしてた。ふつうにサラリーマンになって普通な生活を送る。まあ今考えればそれが夢だったのかもしれないけど。でも今の僕には夢がある。あの人と結婚すること。だから僕は今走っている。あの人のところへ。そう今日は僕はプロポーズをする。好きな人と結婚する夢の実現。

そう思いながら僕はタクシーから降りた。そして人混みの中通りを駆ける。約束の時間までギリギリだ。彼女は新宿駅にいる。少しギリギリになってしまったのは理由がある。僕は中小企業の商社で働く28歳サラリーマン。そんなに仕事にのめり込める人ではない。だから仕事のデキは人並み、収入も人並み。でも、彼女だけはのめり込める。今日は上司から依頼されたプレゼンの準備に時間がかかってしまったから急いでる。退社後、すぐにタクシーを呼び、駅付近におりたってとこだ。

僕は息を切らしながら走る。期待と不安が入り混じるながら彼女を見つける。

「ごめん!少し遅れた」

僕の顔を見る彼女

「走ったの?」

「ちょっと仕事でバタついたさ」

「相変わらず忙しないのね」そう言って彼女は微笑んだ。

「ごめん 予約まであまり時間ないからまた急いでいい?」

彼女は笑顔のまま頷いた。僕はまた謝った。

ディナーの後僕達は新宿のLoveオブジェの前で、散歩する。ここでプロポーズする。そう決めて1ヶ月。付き合ってから10年記念日。このタイミングしかないんだ。でも僕の心の中では不安を拭いきれない。

「失敗したらどうしよう。でも今日やるって決めたんだし。」もじもじと躊躇する僕に彼女は言った。

「ねえ、ゆみと。なんかこうやって歩いてるとさ、みんなで遊んだ時思い出すよね。あの時二人で抜け出して、こうやって夜の都会に囲まれた場所で散歩して。田舎の夜空もいいと思うけど、私はこう高い建物の隙間に見える空も嫌いじゃないな。ゆみと、あなたが教えてくれたの。ありがとう。あの時、あなたが私を変えたんだ。」

僕の胸の中は少し不思議な気持ちであふれた。彼女はどこかしら、僕の背中を押してくれているように感じた。あの時は勇気を持ってできた。なら今でもできるはず。僕は口を開いた。

「ねえ、あゆ。今日は言いたいことがあるんだ」彼女は全てを知ってるいるかのように、笑顔でこっちを振り向いた。

「僕と結婚してください」そう言って指輪を差し出した。

「なんとなくそんな気がしたんだ。いつもとどこか違うじ。」

「へ、返事は。」

僕は頭を下げ続ける。彼女はこういった。

「ありがとう。もちろんです。」そう言って指先を僕の方に伸ばした。

僕の心の中は幸せで満ち溢れた。これが夢がかなった瞬間か。こんな嬉しいことはない。絶対に忘れることはない。僕は指輪を彼女の薬指にはめる。

その時、彼女の指先の横に水滴が落ちた。僕は顔を上げると彼女は泣いていた。

「私は幸せだったよ。」その瞬間、銃声のような火薬の大きな音がして、彼女はその場に倒れた。僕は動けなかった。すぐに倒れこんだ彼女に近づき、手を取りながら名前を読んだ。

「空夢!」名前を呼んだ瞬間、確かに目の前ににいた彼女は何もいなかったかのように、誰もいなかった。僕は自然と涙が流れていた。「ターゲット発見。直ちにダイブさせる。」黒い兵隊の2人が近づいてくる。僕は振り向きこいった。

「なんなんだよ。お前ら。」

一人の黒い男がこう僕にいう。

「彼女を救うことがお前の使命だ。」

そう言って彼らは僕を銃で撃った。


その瞬間、僕はまるで黒い海のような場所に溺れている感覚がした。もがく僕、でも止まらない沈み。死の世界か。でも息はできる。僕は目を閉じ、眠りにつくように意識を殺した。何十秒、何分たっただろう。なぜか溺れるような感覚はなくなっていた。僕はゆっくりと目を開けた。


 そこは高校の教室が広がっていた。隣には高校のとき仲が良かった和希がいた。なんで和希がいるのか、驚きつつさらに周りを見渡すと、みんな知ってる人たち。おそらくここは僕の高校生の時の思い出だろう。そして窓から反射された僕をみる。そこには17歳の僕が映っていた。やっぱりそうだ。走馬灯だ。僕はいま生と死の狭間にいるんだ。そう考えている間も、曽根崎先生の数学の授業は進んでいる。もしかしたら、あゆもいるかも。そう思い、僕の席の斜め後ろを見た。そこには一生懸命ノートをとるあゆがいた。僕はたったさっき、殺されたばかりのあゆをみて、悲しみと安心の両方を感じた。この彼女は僕に記憶なんだろう。

「おーい。〇〇(主人公の苗字)。どうかしたかー」曽根崎先生が僕に声をかける。夢だと思っている僕は話しかけてくるとも思ってなかったので、驚きながらも答えた。

「あ、え、なんでもないです。」

「もしかして、俺の授業じゃもの足りないってやつか」クラスのみんなが笑う。

「そ、そんなことないですよ」そうだ思い出した。僕は、数学だけはできたんだ。当時、数学だけは学内で1位と言ってもおかしくないほど、自信があった。

「だよなー。さすがに先生よりできるとか言われたら俺も困るなー。」またクラスのみんなが笑う

「まあいいや。授業ちゃんと聞けよー。」そういって黒板に再び字を書き始める。そしてまた急に手を止める。

「あ、そうか。もしかして、走馬灯でも見てると思ってるんだろうな。」

「え。」

その瞬間窓ガラスを突き破り、複数人の先ほどの兵隊のようなものが侵入してくる。

「彼女を救ってみろよ。」

そして、銃弾がクラス中を踊った。撃たれ倒れるもの、泣き叫ぶもの。そんなことも一瞬かのように、どんどん撃ち込まれる銃弾。僕は、何もできずにただ立ちすくんでいた。

「ほらー助けないとー あゆちゃん」

その名前を聞いた瞬間、僕は我に返ったかようにあゆの方を見た。でも彼女はすでに床に転がって、微動だにしていなかった。

「また守れなかったじゃん。言ったでしょ君の使命は彼女を守ること。そうしない限り、世界は救われないんだよ。」

「な、なんなんだよこれ!なんで殺すんだよ。何が救えだよ。俺は死んだんじゃなかったのかよ。」

「ごちゃごちゃうるさいなー。僕はただのガイドだよ。君の能力の覚醒と、使命の伝達。これが僕の役目。そんなノロノロしていると殺されちゃうよ。」

一人の兵士が俺に体当たりをし、俺は尻餅をつくようにその場に倒れこんだ。そして、銃を頭に突きつけられ、こう言われる。

「対象の準備完了。排除しますか。」

「おい。」

「わかりました。またダイブさせます。」

「待てよ。」

「悪く思うな。」そして銃弾が放たれ、俺はまた気絶した。

そして、また黒い海の中をもがき、溺れる。一体何が起きてるんだ。俺の能力。彼女を救え。なんなんだよいきなりSFみたいなこと言いやがって。落ち着きを取り戻し、また目を開ける。どうやら今度は人混みの真ん中にいるらしい。

「ほら迷子になるよ。」そう言って、誰かに腕を引っ張られた。

「え。」そう言って、信号を渡りきり、端の方による。

「なんでそんなぼっーとしてるの。」

「いや、だってよ。」俺は顔を上げる。そこには空夢がいた。

「デートなんだからリードしてよ。」

「え、なんで。」

「いいから行くよ。」

「ど、どこに。」

「映画見るんでしょ。」

「ええ。」

ここは池袋だ。そして、初デートは映画館だった。

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