閑話:貴族たちの思惑
貴族たちにとって今回の事は不幸だった。
しかし、同時にこれ幸いと感じていた。
現王が自分勝手な政治を行うようになってからというもの、貴族たちには先代の恨み辛みがその子供や孫、子孫に伝え聞かされていたからだ。
貴族たちは近いうちに反乱を起こすつもりでいたが、運悪くというべきか運良くというべきか、新たな魔王が出現した。
貴族たちは逃げる中でも冷静に、かついかにして野望を叶えるかと画策しているのである。
自分たちの望みを叶えるには最優先事項として、勇者一行を自分たち側に連れてくることだった。
貴族たちはお抱えの諜報員をつかって、勇者の足取りを追っていた。
彼ら貴族の望みはただ一つ。
新たな国政、そしてみんながみんなに優しい世界。
彼らは傲慢になることなく、時には優しく時には厳しく、自身の領地を守りそして幸せを願った。
形だけの信仰を捨てて、心からの信仰を望んだ。
そのやり方は褒められるべきものではない。
しかし、彼らは誰に知られるわけでもなく、自分を犠牲にしてでも領民、ひいては国民の為にと動いていた。
彼らの考えは表舞台には出ることはないだろう。
それは、表としては緊急時でも傲慢な態度をとって金にものを言わせた挙句、自分たちが王様になろうとした、と記されてしまうからだ。
だからこそ、私がここに記そう。
彼ら貴族たちの思惑を、願いを、そして夢見た世界を。
ヨハネス=ツォン=エーデルファルト著
隠された世界の話より
次回の更新は金曜日です。
暑くなりましたね……(-_-;)
体を壊さないよう頑張ります(`・ω・´)




