閑話:紅桜は継承される
私を訪ねてきたのは、彼の母親だった。
彼女の手には、フジワラ家にハイルが置いていっていた彼の母親の刀。
心が包まれるかのように錯覚するような赤と桃を混ぜた色、時折淡く光る金色。
それらは徐々に力を増しているようだった。
「久しぶりね、レナちゃん」
「……お久しぶりです、おばさん」
「単刀直入に聞くわ。勇者とその一行は新たに出てきた魔王の討伐に行く、勇者からはあなたはここに残るべきだと言われたのだけれど」
「勇者様が、ですか?」
「えぇ、あなたの気持ちを無視するわけにはいかないから、こうして聞きに来たけれど。どうする?」
「私は……残りたいです。もうハイルと離れたくない。できることなら一生」
「そう。勇者には伝えておくわ。あと、これを受け取って」
そういわれて差し出されたのは、手に持っていた刀だった。
私は差し出された刀を受け取ることに、ためらいを感じる。
たとえ、おばさんが渡したとしても、ハイルがなんていうかわからない。
これ以上、ハイルに嫌われたくないという恐怖が、刀を受け取ることを躊躇させていた。
「ハイルには伝えておくわ。この刀をレナちゃんに継承したって。あなたは、この刀を握るのにふさわしい子よ」
おばさんの言葉に後押しされて、差し出された刀を握った。
その時、刀を中心に赤い閃光が走った。
目がつぶれるような眩い光は少しすると徐々に静まっていく。
そして、目の前に映ったのは。
一本の細剣だった。
「細剣ね……。剣星たる由縁なのか、レナちゃんに合わせたのか」
「これは?」
「紅桜よ。正式には『紅桜ノ審判』。神刀の一つで、使用者によって形質を変化させる奇跡の武器。そして……ハイルの刀と対になる光の剣よ」
私の中で何かがうずく。
しかし、私にはこれが何なのか理解できなかった。
……のちに、私は後悔をすることになる。
続
次回の更新は来週金曜日です。
じつは、ここで分岐を作ろうかな? と思いまして、読者の皆様にお聞きしたいです。
ヒロイン分岐、ストーリー分岐、エンド分岐を考えていますので、感想やメールなどで送っていただけると嬉しいです。読者の皆様、よろしくお願いします!!




