第13話:物見の塔
「そもそも、なんで君が塔に?」
「ギルドからの指示だ。交代でモン・スピードが迫っていないかどうかの監視をやってる」
この緊迫した中で、ここまで冷静でいられるという点から、正確な情報が伝達できる奴がこの塔の上で監視をしている。
……この町が壊れていく様を見たくないと願う俺にとって、これは重大な仕事だった。
「君は、どっちか分からないね」
ティールが少し微笑みながら言った。
俺はその発言を聞いても頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
どっちか分からないとはどういうことだろうか?
「君は最初、勘違いからでも僕に、いや、勇者パーティーに対する憎悪が激しかった。彼女の親や国のせいとはいえ、君の心に深い傷を負わせてしまったことには変わりない」
……あれは堪えたな。
信頼している人に裏切られるというかつてない経験をしたんだ。
「でも、こっちに来てからは君の喜怒哀楽が豊かに見えたんだ。周りから信頼されて、新しい仲間ができていて。僕は、君がうらやましいよ」
「おれはやれることをやっているだけだ。あと、まるで俺が仏頂面だったみたいなこと言っているがもともと喜怒哀楽は豊かだ。今に始まったことじゃない」
溜息交じりに応える。
しかし、俺の表情は頬が緩んでいたに違いない。
村では同い年なんてレナしかいなかった。
こっちに来てからもこうやって気楽に話せている友人と呼べる存在はいなかった。
彼はいい意味でも悪い意味でも生活を変えてくれた。
そのことに、俺は半分だけ感謝をしとこうと思う。
彼はもうすぐこの町を離れるのだから。
「新魔王討伐、がんばれよ。ここから応援しといてやる」
「できれば君が来てくれると僕が楽できるんだけど」
「バカも休み休み言え。俺はこの町を守る、お前は国を守る。大きさは違えど背負っているものは一緒だ」
「暴論だな~」
俺たちは馬鹿笑いしながら夜を過ごす。
この塔でともに監視をしながら。
ただ、今この時があったおかげで。
俺はティールと本当の意味で友になれた気がする。
続
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