第12話:貴族は相も変わらず寄生する
街の様子が昨夜から緊迫している。
母さんの予測、モン・スピードが起こるという言葉を耳にしてからの冒険者ギルドは対応が早かった。
城壁に沿って並べていく魔石。
それを魔力パルスでつないでいく結界師。
街中も普段の喧騒とは違い、冒険者のサポートに回ったりと忙しくしている。
俺はその様子を街の中心にある塔から見ていた。
この物見の塔には過去から逸話が残る塔で、その実、いつから立っているのかも分からないものだった。
ただ、この場所を懐かしく思う自分がいることに、俺は納得できなかった。
街から視線を外し、塔の中に置いてある、いや、鎖につながれて封印されている三つの顔を持った像を見て、より一層感じる。
その姿は、ギルドで見た幻覚にもあった六つの剣を操る何か。
神々しさと同時に出てくる禍々しさ、相反する二つが感じ取れるそれはこの世ならざるものとしか表せなかった。
「……君には色々迷惑をかけてばかりだね」
「俺は別に迷惑だと思ってはいないさ。ただ、俺が背負っているものが大きすぎるというのは辛いものだがな」
「……」
下から登ってきたティールは唇を噛む。
勇者と同等の存在としてごく一部の文献に載っている『影の六等星』であると言われてから、俺は特にそう感じていた。
「君の気持はわかるよ。大きすぎる期待、それはいつか自分の心を壊す」
「……まるで経験したかのような言い方だな。いや、実際勇者というものは人類のすべてから期待される。期待されてしまっている」
「その通りさ。僕も君も変わらないよ」
「皮肉なものだな。人によってつぶされるなど」
俺の中の人に対する憎悪が出てくる。
過去に何度も裏切られ、それでいていざ自分が危なくなると助けろなどとのたまう存在を思い出す。
これは俺の中に残る傷。
そして、これからもあるであろう事象の一つだ。
「貴族はなんて言っていた?」
「想像通りだと思う。早く対処しろって」
「……街を守るためだ。貴族様のためじゃない」
「僕も一応貴族なんだけど……」
「……例外だ。ティールは」
俺もティールも苦笑いを零す。
眼下で繰り広げられているもめ事を見ると余計にだ。
貴族が冒険者に頭を下げている。
これほど屈辱的なことはない。
だからこそ、俺は感じてしまうのだ。
この世界のゆがみに。
続
次回の更新は来週金曜日です。
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