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第11話:動き始めた時

 少年は願った。


 いつだって自分は平凡で、なにも守れない。


 だからこそ、全てを覆す力を、少年は願った。


 ただ、愛する少女の為にと刀を振るって。


 ――――


 ギルドの扉を()()()()()()入った母さん。

 その大きな音に周りが驚く。

 一部は泡を吹いて倒れていた。


「母さん、魔力が漏れてるよ……」

「あっ、また怒られる……」


 ……どうやら扉を壊したのは今日の二回だけじゃないらしい。

 あとでギルド長に怒ってもらわねば。

 唯一動けるティールとギルド長が前に出てくる。

 ティールは少し腰の抜けたアージア神聖国の近衛騎士達を伴って。


「ハイル君、君から大罪の力を感じる。これはどういうことか説明してくれないか?」

「それも含めて話をするさ、ティール。だが聞かれるとまずいこともある。この前使った会議室に行こう」

「私も行った方がいいのか?」

「あなたも来るのよギルド長。私が生きている理由と予言、そしてこれからの事を」


 ギルド長のあ、自分もつれていかれるんですね、という反応には全く興味を示さない母さん。

 母さんは家族のこと以外けっこう淡白だ。

 いかにも興味ありませんという表情がわかってしまう。


「と、とりあえず早く行こう。整理しなきゃいけないことがありすぎる」


 …………


「そんな、ことが」


 ティールは驚いている。

 それもそうだろう。

 自分たちとは違うと思っていた魔族は人族の進化、つまり新たな人類だったことを知ったからだ。

 しかし、俺たちも驚いた。

 アージア神聖国は陥落、現在は魔王の城として支配されていると聞いて、魔王の復活、いや魔王の再誕してしまったことには。


「とりあえず勇者君。七極星と共に魔王の討伐に行ってほしい。援護が必要であれば我々魔族も助太刀する」

「わかりました。けど、レナだけは彼の元に置いて行ってはだめですか?」

「……そうね、彼女にも私から話があるし置いて行ってもいいわ。でも彼女と話し合った上で答えを出して。いいわね?」

「は、はい!」


 元とは言え虹級冒険者。

 緊張するのは仕方がない。

 ただ、ギルド長はがちがちに固まっていた。


「ギルド長、あなたは勇者たちのサポートを。下手すればモン・スピードが起こりかねないわ」

「お、おう! わかった任しといてくれ!!」


 モン・スピード、迷宮や魔物の住処からあぶれた多くの魔物たちが街に襲い掛かってくること。

 それの懸念もあるのかと、俺は考える。

 モン・スピードは……人が沢山いなくなるから。


 続

最近たくさんの人に読んでもらえて感激です!

感想や質問はいつでも受け付けています。

次の更新は来週金曜日です!

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