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第10話:予言と現実

 一難去ってまた一難。

 城壁を破壊し、俺と戦った母さんはショーギ町の冒険者ギルドに向かった。

 正直、母さんが魔族であることに驚きを隠せないが、もしもこれが事実なら。

 俺にも魔族の血が流れてることになる。


「母さん、ギルドに行く前に教えてほしい」

「……いいわよ。何が知りたい?」

「母さんは魔族だったの?」

「私は、魔族に()()()のよ」

「え――?」


 魔族になった?

 なったってことは元は人族だったことになる。

 でも、種族を変える魔法なんて聞いたことがない。

 そもそも、種族はおいそれと変えられるものじゃないんだ。


「何故魔族になったか、そこから話すべきね」


 母さんは俺の表情から察したのか、向こうから話してくれた。


「母さんは元はちゃんとした人だった。人といて生活し、人として恋をし、人として愛する息子と生活できた。でも、私は……私たちは嵌められた。アージア神聖国の国王によって」

「アージア神聖国の……?」

「そう。私と父さんの仲間を買収し私たちを殺すように仕向けた。世界にとって私たちの存在が邪魔だったから」


 母さんの瞳から国王に対する激しい憎悪を感じ取る。

 それだけ、国王は憎いのだろう。


「私たちも信じていた仲間に裏切られて、致命傷を食らったときは死を覚悟したわ。でも、そこで私たちの体に変化があったの。溢れるほどの魔力、それに耐える体、人と魔族の相違点である角。まるで、私たちの生に対する渇望に呼応するように」

「それってもしかして……」

「そう、魔族は人なら誰でもなれるの。そうね……内なる自分を解放するといった方がいいのかしら?」

「もしかして、俺もなれるのか?」


 俺の発言を聞いた母さんは静かに振り向いてこちらを見る。

 最後に会った時と変わらない姿。

 変わらない髪色。

 そのすべてに引き込まれそうになる。


「凄く酷なことを言うけど、ハイル、あなたは既に魔族として覚醒してるわ」

「すで、に?」

「そう、母さんさっき、『予言の六等星』って言ったわよね? それは、あなたのこと。予言が今成就しようとしているのよ」


 ――――――――――


『光』を操り、世界の闇を払う人の希望。


 大いなる大地に立つ彼らは平安を望む。


『闇』を操り、世界の光を喰う魔の希望。


 大いなる大地に立つそれらは混沌を望む。


 十二神は世界の均衡を保つため魔の殲滅を試みた。


 しかし、偽神と七つの悪がそれを許さない。


 偽神を屠るのは影の六等星。


『時』と『闇』を操り、神から授けられた刀を振るって亜神となる。


 その身に宿すは魔の能力と神の罪。


 星降る夜に力を得て、冥府を呼び起こす。


 六等星の名『暴冥食府』の死神なり。


 続


次回の投稿は来週金曜日になります。

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