第6話:廻る世界
資料室に来た俺たちは、あまりの事に唖然としていた。
世界の歴史、それも当時の人たちが手書きで事細かに詳細が書かれていた。
世界が暗黒に包まれ、人々は恐怖に陥った。
私たちも例外じゃない。
魔族も人間も、あの悪魔に踊らされていたんだ。
偽神によって。
勇者は使い物にならない屑だし、頼みの綱だったあの少年は冥府に落ちたと聞く。
事実、魔族の一角に死の森と呼ばれ始めた場所がある。
きっと、冥府の王の力を使ったんだろう。
影の六等星である彼が居れば、きっと世界は――。
これ以上先からは血が滲んでいて読めない。
ここで討たれてしまったしまったのか、もしくは。
さっき見た光景を思い出す。
あの光景はもしかすればこの世界の歴史に記されていたことなのかもしれない。
しかし、影の六等星というのは今まで聞いたことがなかった。
「なぁティール、影の六等星って聞いたことあるか?」
「ある程度は。抜刀術を使って神から授けられた神刀を振って世界の均衡を保つ全神の希望。その身は神によって天寿を全うできるよう保護されており、魔王と勇者の戦いには介入せず常に世界が偽神に包まれないよう見守っている、だったと思う」
「神刀か、俺以外にもそんなもの持っている奴がいるのか」
「……君は何をいっているんだい!?」
ティールは驚いていた。
いやだって、割と神刀なんて周りにあるし?
君のその腰に下げている剣だって聖剣だろ?
神刀と似たようなものじゃないか。
「神刀は僕のを含めて数本しか無いんだ。その数本も僕の聖剣以外は奈落谷に葬られてるから実質僕のしかないはずなんだけど……。君は持っているのかい!?」
「持ってるな。三本くらい」
「さ、ささささ三本!?!?」
その日、ギルドの資料室から叫び声が上がり職員たちにキレられたのは暫く噂になった。
――
私は何のために生きてるのかしら。
ハイルはあの時、困ったような泣き出しそうな顔をしてた。
きっとそれは私のせい。
私が彼を裏切らなければ。
ふと、彼が居た部屋を見てみる。
中には二本の刀。
彼の両親の形見。
彼の家はもぬけの殻だった。
まるで、彼がそこに存在していたことが幻だったんじゃないかと錯覚してしまうほどに。
怖い。
彼から離れることが、嫌われることが、否定されることが。
彼は私のすべて。
私は刀に触れながらつぶやく。
「おばさん、おじさん。ごめんなさい。彼を傷つけて、彼を勘違いとはいえ裏切って」
涙がこぼれる。
その雫は炎のように熱く、その多くは刀の鞘に落ちていった。
言われた仕事が終わってないので部屋を後にする。
この時の私はまだ知らない。
そこから私の贖罪が始まることを。
続
次回は5月3日までに更新を行います。
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