第2話:目指すのは極東へ
初回で沢山の方々に読んで頂けたことに感謝しています!
村を出てから数日が過ぎ、これからの旅の目標を明確にするべきだと感じた俺は、ベンチに座り途中の町で買ったバックの中から世界地図を取り出し悩んでいた。
今いる町「グロージュリー」は村から南東に位置する大きな町で、昔隕石が落ちてクレーターになったところに町を作ったことからクレーターの町とも呼ばれている場所だ。この町は商業が盛んで、いたるところから情報を得られることで有名である。
今いるグロージュリーを含めて俺のいる国がアージア神聖国で、世界地図の北東にある国である。神聖国なだけあって金もあれば信仰もあり、長年勇者を輩出している国なので周辺諸国からの援助もある。しかし、人ができているとは言えず、良く言えば自分を貫く人、悪く言えば自己中な人が大半である。聖都やその周辺の町村は特にそうだ。
アージア神聖国の周辺で、なおかつ冒険者ギルドのある国とすれば……やはり極東かもな。刀の手入れをするなら、俺みたいな半端者よりもプロにお願いしたいし。それに、極東はどの国よりも思いやりを大事にして裏切りを許さない国だからな。俺にとっては最高の場所といえるかもしれん。
俺はベンチから離れ、馬車街に向かった。馬車街には旅行客や冒険者、奴隷商などが行き交っている。その中から極東方面の場所を探しながら歩く。極東方面に行くのは商人が多く、俺と同じように着物を着ている人が目印になる。
少しすると、黒い生地に赤い花を飾った着物を着た人を見つけ、その人が商人で有ることが積荷で分かったので声をかけた。
「あの、極東に向かう商人ですか?」
「ん? あぁそうだよ。お前さんも極東に向かうのかい?」
「はい。お金は払うので貨物と一緒に乗せてもらえませんか?」
「金なんてもらえないよ。貨物とは言わず、一緒に乗りな!」
その人は女性だったが、商人らしく豪快な人であった。
「あたしの名はヨミコ、ヨミコ=コンドーって言うんだ。商人をしながら職人としても働いてるよ。御宅の名前は?」
「俺は、ハイル=クローデルって言います。父親が極東の出身で、スキルとかの関係で極東の剣技を修行している冒険者です」
「ハイル……? もしかして白金級冒険者に半年で登りつめたっていう『抜刀術』のハイルかい!?」
「え、えぇ。スキルの名前を借りるのならそう呼ばれてますが……?」
「そうかい、そうかい! こりゃあ光栄だよぉ! 噂の天才少年のハイルを乗せられるなんてねぇ!」
ヨミコは俺の正体知っても驚いて感動している以外には普通に振る舞っていた。俺の正体を見ても態度を変えないのは久々に見た。いや、これこそが極東の人達の良さなのかもしれない。
「じゃあ、極東までよろしくお願いします。ヨミコさん」
「了解だよ! さあ、馬車に乗っておくれよ! ハイル!」
こうして、無事に極東までの足を手に入れた俺は、少し長い陸路の旅を始めたのである。
――――
神は昔、ある少年の為に一本の刀を造った。
闇に落ちた少年はその刀を使ってあらゆるモノを蹂躙し、世界を恐怖に陥らせた。
その刀は神殺しの刀と呼ばれ、神を殺す事ができる程の武器であった。
振れば雷が落ち、突けば目にも止まらぬ速さで進み、叩けば大地を砕く程の神殺しは少年の一族にしか扱えず、その一族の長は代々守護者として、その刀を守ってきた。
神殺しの刀は何時しか封印され、その存在は神と守護者の一族の一部しか存在を認識していない。
しかし、遠い未来に守護者の末裔によって封印が解き放たれ、人の世に今一度名を轟かせるだろう。
その刀の名は「黒鋼ノ――――」。
続
どうやら更新日を書くと読み手が離れないようなので……。
次回の更新日は1/10迄には更新を行います。
ここまで読んで頂きありがとうございました!