第3話:影の伝承
目の前にいる祖父の顔に青筋が見える。それもそうだろう、自分の統治している町が壊されたのだ。怒らないでいるほうが不自然である。
「ようわしの町で暴れてくれたのう? お主らこの落とし前つけるんじゃ?」
「「「「……」」」」
「いや、返事ぐらいしようよ……。じいちゃん、一応俺の仲間と幼馴染とその仲間なんだから怒らないで」
「お~孫は優しいのぅ~」
この孫バカをどうにかしてください、お願いしますなんでもしますから。
「「今何でもするっていった!?」」
なぜレナとサクラが反応するの? ナチュラルに心読むのやめようよ。それにしても相変わらず黙っているアルとティールは顔を青くしている。そもそも領主の前にいるのだ。これが本来正しい反応である。
大広間でそういったやり取りをしていると引き戸を勢いよく開けて入ってきた緑の髪に白いローブを身に着けた女の子が入ってきた。年は俺よりやや下だろうか? ドタドタと入ってきて膝をついて礼を示した。
「領主様、唐突の訪問をお許しください! 冒険者ギルド金級冒険者のテマ=ウェイトです! こちらに兄がいると聞き、失礼ながら強行突破いたしました!」
「テマ! 俺はここにいるぞ~!」
「黙れくそ兄貴!!!」
「ぶふぇら!?!?」
殴られて吹っ飛ぶアル。先ほどファミリーネームが一緒だったのでこれがアルの言っていた双子のテマちゃんか。……魔法使いって聞いてたけど格闘技も使えるなんてすごいな。今はオールラウンダーが流行か……。
結局、レナとサクラは暫く屋敷で働くことに。アルは妹のテマによって連れていかれた。残された俺とティールは互いを見合う。俺も向こうも気まずさがある。口を開いたのは勇者のティールだった。
「ハイル君、君に色々迷惑をかけて申し訳ない」
「……別にいいよ。俺もあんたには迷惑をかけたな。勘違いとはいえ、あの態度はなぁ」
「いや、ハイル君のことを考えればあの反応もうなずけるよ」
ティールは表情を暗くする。その様子からは後悔がわかった。彼もつらかったのではないかと感じる。しかし、俺の感性に疑問を感じる。なぜ俺はここまで悪意を抑えられるのだろうか?
いや、今更そんなことを考えても仕方ない。なにせ、レナもティールも裏切っていなかったのだから。
「とりあえず、暇だろ?俺の手伝いをしてくれないか?」
「!? わかった。僕に出来ることなら!」
ティールは頼ってもらえたことがうれしいのか持ち前の明るさを取り戻していた。
続
・・・・・・・・・・・・・
影の六等星は争いに加わらず、世界を見続ける。
彼の元には変質の鋼。
それに宿るは――の精霊。
――を影は得る。
影が力に飲まれるとき、世界は終わりを迎える。
影は冥府の王、善も悪も、彼の下では意味をなさず。
最後の審判が下る。
それを止めるもの、いまだ現れず。
彼の叫びは虚空に消える。
前日ですが更新を行いました。
次の更新は4/5までに行います。
ここまでの読了ありがとうございました!




