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第2話:実家に拉致

こんな遅くに申し訳ありません!!

「……見覚えのない部屋だ」


 連れ去られたときに何かを嗅がされた俺は、運ばれている最中に意識を失った。

 あの匂いは嗅いだことがある。

 盗賊捕縛の時に使った強力な催眠作用のあるものだ。

 それにしても、誰にも気づかれずにそれも俺の後ろから近づくなんて()()()のヤツか?

 ……いや、今いる白金級の冒険者だけでも俺が負けたのは()()()だけ。

 つまりここにはそれ以上の人がいることになる。


 しかし、妙だ。

 拉致した癖には装備は部屋に置いてあるし、俺の手足が縄や鎖で繋がれているわけではない。

 そもそも、これがほんとの誘拐であればすぐに手足を縛って装備を奪わなくては逃げられるからそんなへまはしないはず。

 つまり、これは誘拐ではない?


 寝ていたベッドで考えていると、こちらに向かってくる足音が聞こえた。

 俺は考えるのをやめ、自分の刀である『蒼穹龍ノ風刃剣(バハムーティアソード)|』を手にドアの陰に隠れる。

 間違えて敵意のない人を斬らないように細心の注意を払って新しく覚えた闇魔法を使うことにした。


 頭の中にいろいろな魔法が駆け巡る。

 この場合相手の動きを知ること、相手の動きを封じることに重きを置かなくてはならない。ならば――。


「闇に染まる影よ。我に近づくもの一切を縛れ。『影の捕縛(ホールド・シャドウ)』」


 俺の影がドアの隙間から入っていく。その陰の見ている光景が俺の目に映る。これは……忍者?!

 いやいや、忍者とかヤバすぎるだろ。捕まえられるのか? 俺はひとまずは捕縛することに専念することにした。そっと足元の影に同化してドアの前に立つまで待つ。ドアの前に立った瞬間、俺は捕縛を発動させた。しかし、忍者を捕らえることができなかった。


 なぜなら、俺の目の前にその忍者が現れたからだ。


「……影をうまく使ってるね。でも僕ほどじゃない」

「……俺よりも格上ってことかよ」

「いや、格上なんてことはないよ。ただ、場数が違うだけさ」


 その忍者は手のひらを見せて敵意がないことを示した。

 しかし、俺は警戒を解かない。

 この忍者、得体のしれない何かが纏わりついている。


「警戒を緩めないね。冒険者としては合格って所かな?」

「敵意がないなら、さっさと俺を誘拐するように依頼した人の所に連れていきな」

「誘拐とは人聞きが悪いな。まぁいいや。じゃあついてきて」


 忍者はドアから出ていき、俺もそれに続く。

 依然警戒は解かないつもりだが、周りを見てみるとその屋敷がどれだけ広いのか分かる。


 廊下に出て改めて分かったことだが、廊下の端が見えないのだ。

 右も左も、どちらも数多くの部屋はあれど、端が見えないとは。

 忍者の後を追って右へ左へ、少しまっすぐ行ってまた右へ。

 何度か曲がったその先には、大きな引き戸があった。


「この先に主が待ってる。僕はここから先に行く権利を渡されてないからここまでだよ」

「本当に何もなかったな……」

「でしょ? とりあえずはここまで。また会えたら僕もうれしいな」


 そう言うや、忍者は次の瞬間に姿をくらませたのだった。


 ・・・・

 ・・


「よくきたのぉ~! ゆっくりしていきぃなぁ~!」

「は、はぁ」


 目の前のおじさん怖い。

 入り口を開けて入るや俺に抱き着いてきたのだ。


「コホンっ、自己紹介をわすれたのぉ。わしはタカト=フジワラじゃ。ハイル、お主の祖父に当たるぞい」

「祖父、ですか?」


 そう、ここはショーギ町の領主であるフジワラ家の屋敷だったのだ。

 屋敷に、それも一応実家になる所の祖父に拉致されることなどあるのだろうか?

 いや、あり得ているからあることなのだろう。

 しかし、一つ気がかりなことがある。


「えっと、おじいちゃん? 俺と一緒にいた人たちは?」

「……」

「えっ、まさか置いていったなんて言わないよね?」

「やっ☆ちゃ☆っ☆た☆!」


 その何ともおちゃめな返事と同時に街のほうから悲鳴と爆発音が聞こえてきたのは、言うまでもない。


 続


今回は私の都合で遅くなり申し訳ありませんでした!

次回は29日までには更新をいたしますので何卒お許しください!!

ここまでの読了ありがとうございました!

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