第二章 第一話:修羅場の恐怖
とある大きな星が崩壊し、負の魔力が解放された。
それは地に降り注ぎ、世界に悪を、魔を、死を与えた。
同時に悪の権化、『闇の七戒律』が誕生した。
それを止めるもの、『光の十二戒律』の加護を受けし七つの星とそれを統べる極星が地に降り立ち、世界の悪と『闇の七戒律』とに対峙した。
その七つの星と極星は『導きの七極星』と呼ばれる。
それを見守るは光と闇の力を内に秘めた六等星。
世界の均衡を維持する六等星は世界の架け橋、いつの時も影にて世界を見守る。
――――
現在、ギルドの中は静かである。そもそも、ギルドの中が静かというのは異常なことである。豪快な人からかけ事をする人たち。もしくは異性の冒険者をナンパして問題になって職員にキレられるといったことが日常的にあるギルドが誰も声を発さないぐらい静かであるのだ。……その原因が目の前の二人である。
俺から見て左の奥から勇者、レナと座っている。他のパーティーの人たちは別の席でこちらの様子をうかがっている。そして、俺からみて右側で相対するように座るのは奥からアルとサクラである。
隣にいる男子組二人は女子組が放つ殺気にやられてしまったのか体をガタガタと震わせている。確かに、片方は現在勇者とパーティーを組んでおり剣を持たせれば最強と呼ばれてもおかしくない『剣星』。もう片方は『剣星』に負けない極東の弓使い(周りの冒険者が言っていた)の『心視眼』(これも周りの冒険者が言ってた)である。
その二人が放つ殺気はそれこそ、並みの冒険者じゃ失禁してしまうほどだった。間に挟まれてる俺は一体全体どうしたらいい?
「で、私に言いたいことってなんなのかしら? この泥棒猫」
「言いたいことは山のようにあるわ。私に腹が立つなら尻尾巻いて帰ればいいのよ。この負け犬」
うん、女の子を怒らせるとヤバいってことを肝に銘じておこう。きっと止めたら殺される。確実に。しかし、ここには正義感あふれる漢と被害を受けたくない男の二人がいた。正直、それは逆効果だと思うんだ、二人とも。
「サクラの姉御、怒る気持ちはわかるっすけど、目の前に兄貴居ることを忘れずに!」
「ちょ、レナちゃん!? ここ一応公共のぶへぇ!?」
「「ちょっと黙って」」
わお、シンクロ率すごいね。それと勇者の……テール? ドンマイ、こんな風になったらレナは止められないよ。
こうしている間も言い合いを続ける二人を何とかしなければと思う反面、俺はセクターさんに言われたことが気になり続けている。そんな時に心に二つの声が響いた。
(私であれば少しの概要ならわかりますよ?)
(おい、ほっといていいのかよ!? お前やっぱ鬼畜だな!)
刀と融合してるバハムーティアと蛇毒からかけられたことに対して、俺はバハムーティアには素直な感謝を、蛇毒にはこの後見世物にすることを固く誓いながら俺はその様子を見ていた。
さて、ここまでのことを振り返ってみよう。迷宮を出てからレナと勇者パーティーに会った。この場合は再会したと言ったと方がよいのか? とりあえず出会ったわけだけどそこで問題が。サクラがレナに喧嘩を売ったのだ。その構図、まさに龍と虎である。
そして、町で戦闘を始めてしまったのだ。周辺の建物はサクラの弓矢(魔力による強化あり)で穴が開き、レナの『剣星』としての力で建物が崩れるほどの力で斬りかかった。つまり、迷宮前だけ今現在局所的に天災があったのだ。
俺の説得が功を成さなかったこともあり、街はパニックに陥ったのだ。結局は俺が実力行使、といってもみねうちをして意識を刈り取っただけだが自分の知り合い、しかも片方は今は仲間なのに刃を向けたことは反省するほかない。
ギルドに二人を運んでいる間に勇者から事の顛末と謝罪を受けた。また後日正式な場所でも謝罪をしたいといっており、今回の件が終わってから返答することにした。正直、未だに腑に落ちない点がある為全てを信じることができなかったのだ。
そんなこともあり、現在ギルドの一角において殺気が立って空気が凍り付くような状態になっているのは二人が未だに苛立ちから抜けられてないからだ。
「そろそろさ、お互いがどうしたいのか言えばいいんじゃないかな? ま、周りも困ってるし」
「「……」」
二人がこちらを見ながら黙っている。あぁ、地雷踏んだな。これは俺死んだんじゃない?
「ハイルの言う通りね。私はハイルに迷惑かけたくないし。そっちの裏切り者は知らないけど」
「もうっ! ハイルったら~! ……横取り猫は邪魔だけどハイルの為だもの」
この二人の行動原理がわからない。殺気が徐々にだが無くなっていく。周りは口々に話し始める。
「ヤバい、あの『剣星』と『心視眼』を止めたやつ!」
「あれ? ハイル様じゃない!?」
「ハイルってあの『斬撃の剣神』で最強の白金級冒険者かよ!?」
ちょっと色々言い過ぎやしませんかね? それと最後のやつ、その二つ名は過去に封印したんだけど!? 何で知ってるの!? 頭を抱えながらうつ向いていると後ろから肩をつかまれた。そして気が付いた時には。
抱えあげられた。
こんな昼間から誘拐ってなんで俺なんだヨォォォォォォ!!
続
次回は3/22までには更新を行います。
題名を変える理由ここで話そうと思いますが、このままでは結局はなろう作品でしょ? って言われてしまうので題名を変えることでしっかりとした私の作品として確立しようと思いました。旧題名も残しておくので「こんな作品しるか!」ってならないでください。
それではここまでの読了ありがとうございます!




