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第12話:神々の試練 運命編

さて、ここからは神の試練が始まりますよ!

『光の十二戒律』の試練、『力』『知恵』『心』。それは俺には予想ができないものだった。そもそも、神の考えていることを神官でもないただの一般人である俺が推し量れるとも思っていない。この結論を出したところで何をやるのかすら検討もつかないので、俺はそれぞれに具体的な試練の方法を聞いた。


「あの、試練をするのはいいんだけどその試練の方法を聞きたいんだが」

「我、バハムーティアの『力』の試練は我との決闘なり。しかし、ただの決闘にあらず。貴殿の奥底に眠る闘志が何たるかを見極めることである」

「我、ゾーディアスの『知恵』の試練は過去の偉人の追体験なり。しかし、ただの追体験にあらず。正しき知恵の使い方をしないものには加護が取り消されるだろう」

「我、ラグナレティオの『心』の試練は名の通り貴殿の心を見極めるものなり。努力や実力ではなく貴殿の心を映し、清らかであるかどうかを見極めることなり」


 ……きついと思ってしまったのは仕方ないことだ。俺の心には未だ隠せない復讐心がちらほらしている。否、実は理性で抑えるのもそろそろ限界だ。そんな時にこの試練は……。


「それではハイル。頑張りなさい。私たちは被害の出ないところに避難する故。そういえばそこのサクラと申した女子とそこで伸びている少年は儂と一緒に来てもらおうかのう。ハイルよ、こやつらは信頼にあたる人間じゃ。其方の過去を話してもいいかのう?」

「過去ですか……まぁ隠しているわけじゃないのでいいですよ」


 創造神セクターがあまり思いつめることなかれと声をかけて一瞬にして消えた。そこからの俺はどうだったのだろうか。どこから吹いたわけでもないのに風が舞い、俺のマフラーをなびかせる。


「では、これより『力』の試練を開始する!!」



 ――――


「ぐはぁっ!?」


 横なぎに飛んできた尻尾をいなすことに失敗しもろに腹部に当たる。戦い始めてからどれくらいの時間がたったのだろうか? 一時間? 十二時間? 一日? 時間の感覚もないのは戦い続けた結果だろう。


「ハイル、貴殿の力はこんなものか?」

「いや、まだまだっ!!」


 俺は立ち上がり刀をもう一度握る。『蒼穹ノ太刀』も今までにないくらい消耗していてこれ以上戦い続ければ折れるかもしれない。しかし、俺は斬撃を飛ばして動きを止めつつ『言ノ御霊(ことのみたま)』で力を開放して抜刀し続ける。しかし、バハムーティアの体には傷一つ付いてない。


 ……嘘だ。俺にはもう戦う勇気も希望も策もない。やはり最強と呼ばれようとそれは万能じゃない。わかる。わかってしまう。結局は自分も最強や天才という肩書に溺れたのだ。その時バハムーティアは構えを解かずに質問をしてきた。


「……ハイルよ。貴殿は何のために戦う?」

「唐突だな。でも、考えたこともない」

「それこそ嘘だな。貴殿はいつだって考えていた」

「……何もかもお見通しってことか」

「そうだ」

「俺は……いつだって誰かの為に戦ってきた。村や家畜を守る為、家族や愛する人を守る為、仲間や傷ついた人を守る為……。でも俺は捨てた。捨ててしまった。今の俺は自分が最低限生きる為に必要なものを得るためにしか戦ってない」

「貴殿の目は節穴か? ここまで来た唯一の仲間のことすら忘れたか」


 サクラ……。そうか。そうだ、俺にはまだ守るべき人がいる。いや、場所が変わっただけで俺の守るものは変わらない!


「そうだ、俺にはサクラもギルドの人たちも街のみんなもいる! こんなところで折れちゃいけないんだ!」

「……乗り越えたな。己の闇の一片を。では、再び聞こう。貴殿は何のために戦う? 何のために命を張る?」

「俺は仲間や愛する人、そして支えてくれている人達の幸せのために戦う! それは場所や人が変わっても変わらない!!」

「合格だ! 貴殿の大切な人を守る為の闘志の『力』確かに見極めたり! 我、バハムーティアはこれよりハイルを主として体朽ちるまで共にいることを誓う!」


 その時、バハムーティアの体が光りだした。その光は俺の『蒼穹ノ太刀』に吸われていき青色の刀身には羽のような模様が浮かび上がった。それだけでなく、刀身が淡く光はじめその刀の重さが羽のように軽くなったのである。


『ここは神界、ステータスが全てにおいて現在最大値まで上げられる故、鑑定をしてみるのはどうでしょう?』

「え、この声ってバハムーティアなの?」

『はい、主の年齢に合わせた声や姿をとることができます。言葉遣いは正式な場以外では割とこのようになるので気にしないでください』


 なんていうか、バハムーティアの声は男っぽかったのに実はメスだったことに俺は驚きを隠せない。


『むっ、メスとはなんですか? 私はれっきとした()です! 早く鑑定しましょうよ!』


 いわれるがままに鑑定を行う。しかし、鑑定と叫んでも一向に見れない。バハムーティア曰く、神の領域では何事も神をつけなくてはいけないらしい。恥ずかしいことこの上ない。


「神鑑定」


 ――――


 神刀 蒼穹龍ノ風刃剣


 能力:斬撃、残刀


 神刀開放:多刀斬撃蒼穹ノ舞


 使用者:ハイル=クローデル


 製作者:運命神アルカナ、イサミ=コンドー


 ランク:SS


 前使用者:無し


 覚醒状態:超覚醒



 神の試練に打ち勝ち、僕の神獣が宿ったもの。魔力を流すことで斬撃を飛ばすことができるほか、世界記憶(アカシックレコード)に干渉してあらゆる物質を切ることができる残刀が新たに加わった。さらに、運命神の加護を持つ者には運命を選択する魔法『審判』を使えるようになる。神刀を開放することで多刀斬撃蒼穹ノ舞を発動することができる。刀を模した魔力が舞のように自律稼働し相手に向かって飛んでいく。刀の量によって個人戦から集団戦まで幅広く活用できる。また、刀から人型になることもできるので持ち運びに困らない。



 ――――


「これはぶっ壊れたな」

『そうですか? 最強、天才に恥じない一級品ですよ?』


 俺はこの時、神の感覚と人の感覚は違うものだとはっきり理解した。そして、実はバハムーティアの試練が一番苦しかったことを俺は数年後に知ることになる。


 続

次回は3/2迄には投稿をします。私事ですが卒業式の関係上遅くなってしまう可能性もありますのでご了承ください。

先日ブックマークが100件を超えました!たくさん読んで頂いてありがとうございます!

それでは、ここまでの読了ありがとうございました!       

                                 須道 亜門

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