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ようこそこの悪辣非道な異世界へ  作者: 上原シオン
[0.スタートアップ]
2/16

ようこそこの悪辣非道な異世界へ

 嘘をついても仕方ないので白状しよう。

 俺が目を覚ましたのはゴミ捨て場だった。


「いでで……」


 ゆっくり起き上がる。

 ゴミはゴミでもガラクタの山だったので、幸いにも服が汚れたりはせずに済んだ。初手から全身生ごみまみれとか洒落んなんねーぞ。

 懐を探ると小さな巾着があって、開けると金貨が数枚輝いていた。なるほど、神様の餞別ってこれね。

 ……いやあいつ、自分が神様とか一っ言も言ってなかったような……? どちらかと言うと悪魔っぽかったというか。

 まあいい。いやよくはねえよバカ。



 さて、大通りに出て早数分。

 結論から言おう。有り金全部スラれました。


 いややっべえわ。異世界舐めてた。

 ちょっと砂っぽい地方だけど、順当に異世界してたのでまずは観光としゃれこんだのが運の尽きだった。

 ネコ耳生やした女の子、獣人族っていうのかな。もうすんげぇ手際いいのね。

 ほら、物珍しさにきょろきょろしながら歩くじゃない。そしたらその子と真正面からぶつかったのね。可愛い子だったし、体が柔らかかったし、なんか甘い匂いしたし、それでデレデレしてたらもう財布ごといなくなってた。やっべーわ。色仕掛けと手先の器用さの合わせ技。お嬢ちゃん明らかに慣れてるね。初犯じゃないよね。


 それで道の端で座ってため息ついてたら、親切そうなおっちゃんが構ってくれた。

 状況をありのままに――といっても転生云々は話が面倒くさくなるからスルーだ――説明したらおっちゃんには大笑いされた。いや笑うなよ。人の不幸はパン三斤って諺を教えられた。他人の不幸話はそれだけ飯がうまくなるって意味なんだとさ知ってるわ似たような話日本にもあったよやかましいわ。


 それでそのままおっちゃんの経営してるらしいお店(何を扱ってるかは教えてくれなかった)に連れていかれて、今は奥でお茶をいただいている。親切な人もいたもんだね。


「まあ、はるばる遠くの国から?」


 話相手をしてくれているのはおっちゃんの奥さんだ。ものすごく美人な上、胸がやたら強調された服を着ているので目のやり場に困ったことは明記しておく。


「あなたぐらいの年の子が一人旅なんて、大変ねえ。そのうえお金を盗まれちゃったなんて……」


 非常にどうでもいいがこの奥さん、パーソナルスペースがやたら近い。というかいつの間にか隣に寄り添って座るような形になっていた。いやこれマズいのでは?


「若い子って元気でいいわねえ。主人とは大違い。私、最近満たされてないの。あなたみたいな子、好きよ……」


 そう囁きながら奥さんは俺の方に身を乗り出してくる、って、いやいやいや!

 えも言われぬ『オンナ』の気配が立ちのぼり、あまりの艶めかしさでくらくらする。こんなん童貞にはキツイっす。からかわないで。やめたげて。


「いや待って待って、ストップ! ストップ! 大体おかしくないすか、なんでいきなりこんな展開に!?」

「あら、おばさんのこと嫌い……?」


 そういう問題じゃねえ!

 そんな俺の心の叫びが届いたのか届いてないのか、いやこれはガン無視されてるだけかな! 奥さんは白い太ももを俺の腰に絡ませてきた。

 しかもあろうことか、大胆にも俺の手を取って太ももに導いてくる。信じられないくらいすべすべだった。うわー、なんだこれ。


「ねえ……イイこと、しましょう……?」


 奥さんの紅い唇が生き物のように蠢く。吐息を吹きかけられ、そこで俺の良心のタガは弾け飛んだ。

 ――もうこれ、いっちゃっていいのでは? いいよね。誘ってきたの奥さんの方だもんね。

 なるようになれ、と俺は奥さんと唇を重ねた。ものすごく濃厚な甘い香りがしたかと思うと、奥さんは舌を絡めてきた。脳髄が痺れそうだ。なんだこれ。

「きゃあっ♪」

 我を忘れて奥さんを押し倒すと、嬉しそうな悲鳴があがった。もういくとこまでいっちゃおう。僕にも我慢の限界はあります――。



「てめェ何してやがる!!!」



 突然、ものすごい怒声が部屋を揺らした。

 ………………あっヤバい。

 ギギギ、と音がしそうなくらいのぎこちなさで俺は振り返った。部屋の入口には頭のてっぺんまで真っ赤にしたおっちゃんがいた。

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