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朝食を作る母親、コーヒーを飲みながら新聞を読む父親
いつもと変わらない日常だ
「ほら、早く食べちゃいなさい」
私がテーブルに着けば、ちょうど出来上がったのか母親が朝食を運んできた。父親も匂いにつられてか、新聞を読むのを中断する。
「いただきまーす」
「はい、いただきます」
いつもと変わらない日常。そう、いつもと変わらないのだ。
専業主婦である母親が毎日バランスの取れた食事を用意してくれる。父親は無口だが厳しいわけではない。毎日仕事に行き、今まで家族を養ってくれている。
時間が合うときは、なるべくこうやって3人で食事をとるようにしている。
「お母さん、何かあったの?」
するとそこで、母親が笑顔で私を見つめていることに気が付いた。母親に聞いてみれば
「……幸せだな、って思っただけよ」
そう言いながら、母親は私を見つめ続ける。普段より潤いを増している気がするのは、本当に気のせいなのだろうか
「あんた、早く食べなくていいの? 遅刻するわよ」
時計の針はもうすぐ8時を指そうとしている。走っていかなければ間に合わない。
「やばっ!?」
私は急いで朝食を平らげ、そして家を後にした。
そんな私を両親は「いってらっしゃい」と見送る。
なんら変わらない一般家庭の日常だ。そう、日常。何も変わらない、平凡な日々。
「ほんと、元気になってよかったわ」
娘が座っていた椅子を、いや、正確にはそこに落ちる1枚の花弁を見つめる。
「またこうやって、みんなでご飯が食べられるようになって……」
「……そろそろ行くよ」
「じゃあ、帰りにお花買ってきてもらえる?」
あの子の今日のご飯だから
母親にとって、3人で揃って食事をするということが何より幸せなことだった。
娘が【花】を食べるようになったとしても、それは変わらない




