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花食症  作者: 柏井彫刻
8/13

 微睡の中で私の名前を呼ぶ声が聞こえる。叫ぶように、切羽詰まった声でひたすらに私の名前を呼んでいる。

 ――誰、なの。

 声にならない声。ぼやける視界。まだ覚醒しきってない意識の中、名前を呼ぶ人物を探す。

 「……やっと起きた」

 それは母親だった。

 「おかあ、さん……」

 「もう全然起きないから何かあったのかと思ったじゃない」 

 母親の声からは、安心と不安が感じられる。故にかすかに震えていた。

 「そろそろ支度しないと学校、遅刻するわよ」

 「もう、そんな時間なんだ」

 「大丈夫? 具合でも悪いの?」

 「ううん、大丈夫だよ」

 時計を確認すれば、針は7時30分を指している。ここから学校まで約40分。まだ余裕はありそうだ。

 「お母さんは下に戻るからね、二度寝なんてしちゃだめよ」

 「はーい」

 そう言って母親は部屋を出て行った。

 部屋には静寂が訪れる。耳をすませば、外からは小鳥の囀りが聞こえてくる。私は活動を開始するために起き上がり、洗面台に向かった。

 まだ残暑を感じる9月。

 生ぬるい水が蛇口から出てくるが、私はそれでも顔を洗った。

 「……お腹、空いたな」

 腹の虫が鳴る。下ではきっと母親が朝食を用意しているだろう。私はタオルで顔を拭き、足早に一階のリビングに向かった。

 かすかな薔薇の香りを感じながら


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