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微睡の中で私の名前を呼ぶ声が聞こえる。叫ぶように、切羽詰まった声でひたすらに私の名前を呼んでいる。
――誰、なの。
声にならない声。ぼやける視界。まだ覚醒しきってない意識の中、名前を呼ぶ人物を探す。
「……やっと起きた」
それは母親だった。
「おかあ、さん……」
「もう全然起きないから何かあったのかと思ったじゃない」
母親の声からは、安心と不安が感じられる。故にかすかに震えていた。
「そろそろ支度しないと学校、遅刻するわよ」
「もう、そんな時間なんだ」
「大丈夫? 具合でも悪いの?」
「ううん、大丈夫だよ」
時計を確認すれば、針は7時30分を指している。ここから学校まで約40分。まだ余裕はありそうだ。
「お母さんは下に戻るからね、二度寝なんてしちゃだめよ」
「はーい」
そう言って母親は部屋を出て行った。
部屋には静寂が訪れる。耳をすませば、外からは小鳥の囀りが聞こえてくる。私は活動を開始するために起き上がり、洗面台に向かった。
まだ残暑を感じる9月。
生ぬるい水が蛇口から出てくるが、私はそれでも顔を洗った。
「……お腹、空いたな」
腹の虫が鳴る。下ではきっと母親が朝食を用意しているだろう。私はタオルで顔を拭き、足早に一階のリビングに向かった。
かすかな薔薇の香りを感じながら




