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花食症  作者: 柏井彫刻
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 7月16日

 ここは病院。

 気を失った後に、母親が通報したらしく救急車で運ばれたのだ。気を取り戻し様々な検査を受けたが、特に異常は見られずにすぐに退院することが決定した。

 今は母親が退院手続きをしている最中。まだ時間があるからこの日記を書いている、というわけだ。

 昨日の夜のことを思い出す。私は水を飲みに台所に向かい、そこで作業をしていた母親と少しの言葉を交わす。目的である水をとるために冷蔵庫に手をかければ――


 手が震える。吐き気がする。喉が、口が、鼻が、目が、頭が熱くなるのを感じる。全身に血液がものすごいスピードで流れる、そんな感覚。だけど私は震える手で考えを走らせた。


 花が。薔薇があった。赤い薔薇。薔薇。そう。薔薇を見て私は気を失った。

 何故

薔薇があった。赤くて奇麗な薔薇。母親が好きな薔薇。いい匂い。ばら。ばらがあったばらが。そうばらがあった、はなやでかったばら。ばらがばらがあったばらがばらがあったあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいばらあかいばらばらばらなんでばらが。

 なんで。なんで。なんで私は薔薇を見て気を失ったんだ。

 奇麗だった。鮮やかな赤に染まったそれは美しかった。でも怖かった。

 怖かった。

 怖かった怖かった怖かった。美しくてでも悍ましくて好きなのに嫌いで好きだったそれは怖くて怖くて。

 私は確かに感じたのだ。あの時、あの瞬間に。二か月も感じなかったことが急に現れた。今までのことが嘘かのように嘲笑うかのように私を襲撃した。薔薇を見た。母親の好きな薔薇を見た。奇麗な薔薇を見た私は確かにあの時、空腹を感じた。


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