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「ねぇ、開けて! おねがいだから!」
娘の部屋のドアを力強くノックするが反応がない。無理やり開けようと試みるがその努力も虚しく、ただ体力が削られるだけに終わる。
いきなり娘の様子がおかしくなった。娘が放った「赤いの」という謎の言葉。一体何の意味があるのだ?
問いかけるも答えが返ってくることはない。
すると突然、娘の部屋から物音が聞こえてくる。
「何!? どうしたの?」
呼びかけるが返事はない。そのかわり、今までびくともしなかったドアがひとりでに開いていく。
「ねぇ……、大丈夫、な……の……?」
母親は言葉を失った。
ガチャリ
玄関のドアを開けると、鼻を塞ぎたくなるほどの異臭が襲ってきた
「お、おい…! なんだこの匂いは? 誰かいないのか?」
返ってくるのは静寂のみ
仕事を終え、花屋に寄ってから帰宅したものの、自分を迎えたのはどうしようもない違和感だった
「あ、あなた……」
二階からかすかに声がする
あれは確かに、妻の声だ
「どうしたんだ、おい! なんなん……だ……」
視界を覆うは一面いっぱいに咲いた様々な花
アサガオ、アジサイ、ひまわり、彼岸花に薔薇
今の季節には咲くはずのない花まである
そもそも何故、家の中にこんな大量の花が――――――――
「なんでそこで寝ているんだ……?」
花の中に、娘の姿があった。
娘の体に巻き付く蔦
いや
「違うの……」
娘の体から、蔦が生えてる……?