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終わりと始まり
大学を卒業したら、まあ普通に就職するよな。欲を言えば信用金庫の職員かな。
年収は40歳で800万円も貰えたら十二分だろうし、銀行と違ってノルマも厳しくなさそうな気もする。
経済学部をなら平均的な人生だろうな―――――――――――――
4月1日は今年も何事もなかったように訪れた。
時計の針が0時を示したと同時に、僕は大学生では無くなった。今日から信用金庫の職員、ではなく無職だ。
子供の頃から特に素行が悪かったわけでもない、学力も平均よりも上、寧ろ上位をキープしていた。
友人だって多少なりともいた。ただ少し、自己表現が少し苦手というだけで僕はどの会社からも声をかけてもらえなかった。
今まで大きな挫折を経験することなく生きてきた(厳密に言えば挫折する前に逃げていた)僕にとって、内定を得られなかった事は社会不適合者の烙印を押された様な気分だった。
「もう寝よう。」
頭の中を廻る不安や焦燥感を拭いながら呟き、僕は床に就いた。