風の唄声
ラスベルがギルドへと足を運んで間もなく、四大貴族の一人フランソス家が姿を現していた。やや太り気味ではあるものの、威厳に満ちたその表情は事実上エステリアを治める貴族と言われるだけある。
白髪に真っ白な髭。顔はシワに覆われているものの、眼光は鋭い。六十を過ぎたと言われてはいるが、他の貴族と明らかに違う雰囲気は、人を寄せ付けないものがあった。
「さて、貴君らに聞かねばならぬ事があるのだが……」
ゆっくりとした動作で腰を下ろしながら、一同を見渡す。その眼光は鋭く怒りに満ちているようにも見える。
「お、お言葉ですがアシェル卿……我々は何も―――」
「儂が何も知らぬと思っておるのか?」
「い、いえ……ですから……」
「もう良い。そんな事だからエステリアに危機をもたらすのだぞ」
アシェルは、そう言って一同を見渡す。その中でアルベルト・フェルナンドだけは、目元が笑っていた。
「確かにアシェル卿の言う事は正しい。僕達の浅はかな考えがエステリアに危機をもたらした。ですが、アシェル卿にも少なからず責任はあると思うのですよ」
「こ、小僧が何を――」
「よい。確かにアルベルトの言葉には覚えがある」
アルベルトの言葉を簡単に肯定するアシェルは「だからと、勝手に冒険者を獣人族の砦に派遣する事は許される事ではない」と言った。
「我ら四大貴族は、ここエステリアの地を国王陛下より承った。つまり、フランソス家のみが治めているのではない。四家が力を合わせる事で、平穏が築かれるのだよ」
アシェルは全てを知っていた。それでも、今まで何も言わなかったのは、他の三家がフランソス家より権力が小さいからだ。貴族は体裁を気にする生き物である。エステリア最大の力を持つフランソス家が四大貴族に数えられている以上、他の三家が焦るのも理解出来る。
フランソス家を陥れる……。それは、三家にとって悲願なのだ。アシェルは、それを知った上で、エステリアの政策を実施していた。それでも、四大貴族を連ねる以上は、四家共、同じ立場であると主張もしている。
「では、今の状況を説明してもらおう」
「僕が説明するよ」
エステリアの現状を話す為、アルベルトが口を開いた。