風の唄声
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グリム王国の東に位置するエステリアは、四大貴族と呼ばれる名家が統治している。その中でもフランソス家は、一番の力を持っていた。全ての決定権がフランソス家にあるとさえ言われ、他の三家は何とか失脚させようと画策していた。だが……。
「一体どうなっている!」
エステリアの西側に位置する小高い丘。そこには美しく建ち並ぶ街並みを一望できる塔があった。最上階には園庭が広がり、その中央には四人が腰を下ろす事の出来る机と椅子が向かい合うように置かれている。普通の民が立ち入る事の出来ないこの園庭は、エステリアの重大事項を決定する為の会議場として使われていた。
神妙な面立ちで顔を合わせる三人の男達。何処か落ち着きがなく、これから始まる四家会議の前に問題を片付けようと思案を巡らせている所だった。もはや何度目になるのか分からない程の話し合いを続け、幾度となく策を巡らせては失敗してきた。
「早くせねばフランソスが来てしまうぞ」
「そうは言いましても、既に策は尽きました。これ以上は、責任を問われるよりエステリアの兵力が……」
「兵力だと? 」
「まぁまぁ、皆さん落ち着きましょう。今、私の配下の者が客人を連れて来ます。今回の問題は、その客人に任せてみては如何でしょう」
この中で一番若い青年の男が、自分よりはるかに歳を重ねた男達に、なだめるような口調で口を開いた。
「ご存知の通り義勇兵と違い冒険者の行動は予測出来ません。ここで我々が焦ったとしても、状況が変わるわけでは無いのですから少し落ち着いたらどうでしょう」
若者は、机に置かれたグラスを手に取ると、一気に飲み干した。
「小僧がよく言うわい。消えた冒険者の中には、あのパーティーも含まれておると聞く。このエステリアの中では最強と言われ――」
「最強だろうと、そうでなかろうと、消えた事に変わりはないのだろう?」
その時、園庭の入口から一人の老人が呆れながら入って来た。
「ラスベル殿。早かったですね」
老人の声を聞いた若者が、目を細めながら立ち上がると、ここまで来るように促した。