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ファーレルの風  作者: 月夜
序章
4/23

風の唄声

「わかったよ……」


ミリアの見つめる視線を受け流しながら、ルイは肩をすくめる。授業といっても歴史を聞く程度で、生活に直結するような事は教えてくれない。エステリアで暮らしていれば、そんな事もないのだろうが、子供達も働かなければならない小さな村では、授業に参加出来る子供が少なかった。


「今から三百五十年前にグリム王国が始まりましたが、その最初の国王様の名前が分かる人?」


ミリアに促され、授業を受ける部屋へ向かうと、やはりと言うべきか歴史の話が聞こえて来た。誰もが必ず教えられる初代国王の名前。今から三百五十年前の事を知っても仕方ないとルイは思う。それでも、このグリム王国にとっては歴史的瞬間だった事は間違いない。


「初代国王か……」


ルイは呟く。貧しい村の子供として生まれながら、激動の時代を生き抜いたファーレルの英雄。今は存在しない天使と魔族の争いに終止符を打ったとされている。当時の事は知らない。ルイは今を生きているのだ。


「あれは?」

「なに?」


そんな事を考えていると、外から数人の武装した男達がこちらへ向かって来ていた。


「義勇兵かしら」


ミリアは不安げに言った。


「この村に義勇兵が来るとなると……ラスベル様の所ね」

「あの爺さんに今更何の用事があるんだよ」


既に八十歳を過ぎ、左腕を失った老人。若かった頃は冒険者として名を残したが、今はこの村の師範として子供達に剣を教えているに過ぎない。


「だって、この村に義勇兵が来る理由がないじゃない」


ミリアに言われなくても、そんな事は分かっている。この村で冒険者は存在しないのだ。だからこそ、義勇兵が来る事に胸の高鳴りを感じた。

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