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創作一本勝負・お題「カーテン」

作者: 「クロ」







ーーー…もう、歩く事は無理でしょうね







その言葉が、今でも耳に残っている。

昔、お医者さんに言われた事







ーーーなんで? なんで私は歩けないの? なんで、足が動かないの?







そう聞いたら、お父さん、辛そうに顔を背けたよね

お母さん、泣き崩れちゃったよね








私が悪い子だったから?

私が駄目な子だったから?







ーーーバチが、当たっちゃったのかな








歩きたい、立ちたい、外に出たい







窓を見つめるんだ。







「透明なガラス、でも、檻みたい」







ここは、檻

私は、向こうが見えても、行く事は出来ないんだ。







だから、カーテンを閉める。







希望も、夢も、願望も

そんなもの全て捨てちゃって、

見たくもない、外なんて

希望なんていらない、







ーーーほら、日の光を入れないと、気分まで滅入っちゃうよ







お母さんがそう言ってカーテンを開くけど、やめてほしい

明るいのは嫌い

窓から見える空も嫌い

空を飛んでる鳥も嫌い







自由に、あの鳥みたいに…







「眩しい、閉めて、カーテン」






悲しそうな顔をして、お母さんがカーテンを閉める。







ごめんね、でも、やなんだ。

少しでも、歩きたい、立ちたいなんて思う事が

そんな事思ったら、きっとみんな、辛くなる。

我慢してるんだ、私

だから、カーテンなんて開けないで














声が、聞こえる。







近くの公園で野球をしてるんだ。

元気そうな声、楽しいんだね







「羨ましいなぁ」







野球、知ってるよ、本で読んだんだ。

おもしろそう

でも出来ないから我慢する。














あ、サッカーをしてる声がする。

楽しそう

知ってるよ、本で読んだんだ。

でも出来ないから我慢する。














あ、今度は鬼ごっこ

みんな走ってるんだね

知ってるよ、本で読んだんだ

でも出来ないから我慢する。







我慢







我慢







我慢…







我慢…







我慢っ…







がまんっ…







…あぁ、







…遊びたい、なぁ…







気持ちが溢れてしょうがなくて、辛い

私が叫んでも、どんなに精一杯動いても、あそこへは届かない

外の世界に憧れて、でも、無理なんだって理解してて







憧れは、渇望に変わって







渇望は、孤独に変わって







孤独は、絶望に変わってく…。







「つまらない」







私は今日もベットで横になってる。







飽きてしまった。







景色に? 音に?

違うよ

こうやって、生活して、生きてる事に。







なーんにも変わらない







だから、眠るんだ。







夢の中で泳いで、食べて、走って







…もう、それくらいしか







「誰も、助けてはくれないの」







悲観なんて山ほどした







だから、おやすみ












ーーーーーーパリィン!












…?







檻が割れる音は、一瞬だった。

カーテンの向こう側で割れたガラスが飛び散る。







薄いカーテンの向こうで飛び散るガラスは、光を反射して、お星様みたいに輝いた。







「すいません!?」







大きな声と共に、家のドアを叩く音







血相を変えて私の部屋に飛び込んでくるお父さん、







暫くして、お母さんに案内されるように一人の青年が入ってくる。







ーーーすいません! 怪我はありませんか!?







涙目で謝る青年、こっぴどく怒られたんだね、







久しぶりの非日常、楽しいな







少しだけ、笑う







青年は、それを見て顔を真っ赤に染めた。どうして?







お母さんが、それを見てニヤリと笑い、私の足の事を話している。







青年は驚いたように私を見ると、また目を逸らした。







でも、そこに、散々向けられて嫌になった同情意外のものを感じて







ーーーまた、来てもいいですか!?







青年が部屋を出る間際、いきなり言われた事。







戸惑いながらも、私は頷いた。












ーーー君が、檻を壊してくれたんだよね…














「どうしたの?」


前に立つあなたが、柔らかい笑みを浮かべながら、そう聞いてくる。


「少し、思い出してたの、出会った時の事」


その言葉に、あなたは笑みをより一層深める。

私とあなたが出会った日、

カーテンの向こうに広がった星空は、本当に綺麗だった。

檻を砕いてくれたあなたは、今もこうして前に立ってくれている。


「…あの時」

「…ん?」

「あの時、ガラスを、檻を壊してくれてありがとうね」


どういたしまして、と彼は悪戯するみたいに笑う

本当はガラス割るなんて駄目だけどね、

でも、あなたには感謝してるんだ。

諦めたようで全く諦めてなかった私を、外に連れ出してくれて、沢山お話してくれて



ーーー本当に、ありがとうね



気づいたら、涙が溢れてて

あなたも、顔をしわくちゃにしながら泣いてる。


「今から、いま一度、僕は君のカーテンを壊すよ」


思いついたように、泣きながらあなたは言う


「…ベールをカーテンだなんて、失礼だよ…」


そう言って、







あなたと私は、キスをした。





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